「格安SIM」などの名称で認知度が高まっているMVNO(仮想移動体通信事業者)だが、2016年は総務省による、スマートフォン実質0円販売の事実上禁止措置などの影響を受けて利用者が急拡大した。勢いに乗って攻めの戦略を次々と打ち出すMVNO。2017年はその先を見据えた取り組みが問われる。
ユーザーの変化で「キャリア化」を選ぶMVNOが増加
MVNOはここ数年来、「格安SIM」などの名称で知られるようになった。大手キャリアと比べサービスはシンプルだが、その分毎月の通信料が非常に安いことから年々注目を高めてきた。MVNOにとって、2016年は大きくブレイクした1年だったといえる。
最近ではテレビCMを展開する企業も増えているとはいえ、MVNOは大手キャリアと比べ知名度が低い企業が多い。それゆえ従来はITやスマートフォンに詳しい人達が、自らサービスを探し出して契約する傾向が強かった。それゆえユーザー層も30、40代の男性が中心だったのだが、最近は傾向が大きく様変わりしてきており、より若い世代やファミリー層などの利用が増えてきている。
その最大の要因は、総務省が2016年4月に「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」を打ち出し、これまで一般的になされていた、大手キャリアのスマートフォン実質0円販売を事実上禁止したことにあると見られる。安価な料金を求める人達が、スマートフォン価格の値上がりを嫌ってMVNOへと移行したことから、これまでとは異なるユーザー層がMVNOに流入し、利用者の拡大へとつながったわけだ。
ユーザー層の変化を受け、2016年にはMVNO側の戦略も大きく変化している。具体的に言えば「キャリア化」、つまり大手キャリアに近い戦略をとるMVNOが増えたのだ。
そのことを象徴している施策が3つある。1つ目は音声通話定額サービスを提供するMVNOが急増したこと。2つ目は、通信と端末、そしてサービスをまとめて販売することで、お得な料金を実現するセット販売が増えたこと。そして3つ目は、実店舗を全国展開するMVNOが増えたことだ。
これらはいずれも、大手キャリアでは一般的な取り組みである。大手キャリアからユーザーが流れ込んできたことで、キャリアと同様の商品やサービスを求める傾向が強まっていることが、MVNOの戦略に大きく影響したといえそうだ。