iPhoneとAppleの今後

iPhone 6世代での伸びの反動と在庫調整の影響を受け、直近の四半期決算ではiPhoneの売上が大幅に減少し、部品メーカー各社も対応に奔走する結果となったが、シーズン的に7~9月期は次期iPhoneの大量生産がスタートする時期であり、まずは部品メーカーの業績が回復し、Apple自身も同社会計年度で2017年第1四半期(2016年10~12月期)には業績を回復させるだろう。通年で販売台数を平準化すれば、おそらく2016年度は横ばいに近い水準で終了すると思われる。

ただ、もし前述のようにAppleが今後iPhoneモデルのさらなる分割を行ってくる場合、在庫管理の厳密化からより部品の発注はシビアになるだろう。以前までであれば、iPhoneでの部品採用は大量の発注が期待できるため、業績への大きなプラス効果が期待できたが、今後はモデル分割の影響もあり部品サプライヤで従来ほどのiPhoneフィーバーは起こりにくいかもしれない。Appleはモデル数の増加や大量発注に神経を尖らせるようになっているのが、iPhone SEでの大幅な供給不足からもうかがえる。iPhone SEの発売は部品在庫の整理が大きな理由という噂もあるが、今後増加するモデルは基本の「iPhone」を軸に、残りを比較的少数生産の派生モデルで埋めていく可能性が高い。具体的には、基本となるiPhoneの台数比率を5~6割程度に、各派生モデルでそれぞれ1~2割程度の生産台数を割り当てる形だ。

以前の予想記事で「iPhoneは今後3年で最大5~6程度まで種類が増加する」「2017年に登場するのはナンバーモデル(つまりiPhone 8など)」と説明したが、これの意図するところは「多くの製品バリエーションを高頻度に市場投入する」という方針へとAppleが舵を切りつつある可能性だ。iPhone 7の基本デザインはiPhone 6世代のそれに近く、デザイン変更が加わるのは2017年のiPhone 8世代という噂も出ているが、従来の2年サイクルでの製品大幅刷新というモデルは崩れつつあるという印象だ。代わりに新機能を搭載した製品を適時市場投入し、ユーザーのニーズを早いサイクルで汲み取りつつ、買い換えを促す。場合によっては秋に新製品を投入という1年周期も崩れる可能性もある。従来までの極めて高い利益率を得るのは難しいが、こうした戦略はユーザー層を拡大するため成長余地がある。

今後のユーザーへの影響だが、Appleが従来の1年または2年おきのサイクルを崩すことで、購入タイミングを計りにくくなるデメリットがあると推察される。一方でAppleは「iPhoneを分割購入して、支払いが満了するより前に次の新モデル購入が可能になる」という永続縛りプランにあたる「iPhone Upgrade Program」をより強化してくる。米国では「AT&T Next」のように同種のプランを発表してAppleの動きに追随している携帯キャリアもあるが、製品の投入サイクルの変化とともに携帯キャリア依存の強いビジネスモデルから徐々に脱していく可能性も考えられる。いずれにせよ、短期の視点ではiPhoneの売上をAppleがどう維持し、さらに伸ばしていくかに着目したい。