「iPhone 7は3モデルで登場する」の噂を検証する
今年2016年9月に発表されるとされている新型iPhone、通称「iPhone 7」が「3種類のバリエーションで登場する」という噂がある。Mobipickerというサイトが5月16日に報じたものだが、それによれば同世代では「iPhone 7」「iPhone 7 Plus」「iPhone 7 Pro」の3種類のモデルが用意されることになるという。Mobipickerでは、「iPhone 7 Pro」は「iPhone 7 Plus」の上位版にあたるプレミアムエディションの位置付けとのことだ。iPhone 7では「iPhone 7 Plusがデュアルカメラを搭載する」という噂が以前から囁かれているが、これと3モデル展開が結びついているのかは不明だ。
ただ、3モデルへ拡大というトピックは荒唐無稽な話というわけではなく、Appleの戦略上、選択せざるを得ない道だと筆者は考える。理由は2つあり、1つめはたびたび触れている2017年(または2018年)登場モデルでの有機ELディスプレイ(OLED)採用だ。これは噂ではなく、すでにOLED供給に向けて多数のパネルメーカーが巨額投資と大量生産時期の前倒しを進めていることからもわかるように、Apple側の要請で各社が動いているほぼ確定事項だ。目下の問題としては最初のOLED搭載モデルが登場するとみられる2017~2018年の時期にはまだiPhoneの出荷台数の2億台の需要を満たす供給が不可能な点が挙げられ、もしOLEDを採用する場合には搭載モデルと非搭載モデルで2つに製品を分割しなければならない事情がある。
2つめは売上の拡大で、もし前述のように中国やインドといった市場でのこれ以上のiPhone販売拡大が望めない場合、Appleが売上を増やす手段は2つしかない。「iPhoneの製品バリエーションを増やして既存市場でのシェアをさらに高める」か、「iPhone以外の製品やサービスでさらに売上を伸ばす」のいずれかになる。前者の場合、潜在的な顧客ニーズを汲み取ることが必要だ。安価なモデルを別途用意するのも手だが、この場合は販売台数が増える一方で既存の高価格帯製品を購入していたユーザーが安価なモデルに流れることでカニバライズを起こし、利益率を下げてしまう。そこで、先進国のようにスマートフォンがすでに市場として成熟している場所では、あえて高価でプレミアムなモデルを別途用意し、利益率を上げつつ買い換えも促す。OLEDやデュアルカメラなどの機能は、こうしたプレミアム性を演出するのに悪くないだろう。
むし問題は後者の「iPhone以外の製品やサービスでさらに売上を伸ばす」だ。AppleのサービスやApple Watchなどの周辺機器ビジネスは、基本的にiPhoneの存在を前提にして成り立っている。そのため、売上の上限が見えやすい。Apple Musicなど一部コンテンツ系を除けば、Appleは手数料収入を極限まで引き下げて競争力を高める戦略を採っているなど、売上や利益面でのiPhone依存度が高いのも問題だ。Apple Musicのリニューアルでさらなるユーザー獲得を目指す動きもみられるが、ハードウェア製品とサービスともに次の成長ドライバーを見付けるにはまだまだ時間がかかる印象が強い。少なくとも、今後2~3年程度はiPhoneだけで切り抜ける必要があると考える。