本当にiPhoneの売上はスローダウンしたのか

iPhoneの四半期ごとの売上推移は、ほぼ新製品の発売サイクルに準じている。新製品が毎年9~10月に投入され、年末商戦も絡んだ10~12月期(Appleの会計年度で第1四半期)にiPhoneの売上が最大化し、そこから徐々に減少していく。そして次の新製品が投入される10~12月期に再び売上が上昇に転じるわけだが、新製品投入が早い市場で9月中ということもあり、売上の一部が第4四半期へと積み増しされることになる。つまり、Appleの売上が最も減少するのは第3四半期のタイミングであり、第4四半期に若干上昇した後、第1四半期のタイミングで大きく跳ね上がる形だ。ただ、2016年度第1四半期ではほぼフラットの水準となり、翌第2四半期では大幅な減少となった。大きな好転材料がない限り、今後iPhoneの売上はフラットまたは微減の傾向になるというのが筆者の予想だ。

Appleへの中国の依存度を示すデータがある。例えば、下記の表はiPhone売上が最大化しやすい3つの四半期をまとめ、地域別の集計データを決算表から抽出してまとめたものだ。まず日本を除けば、中国以外のほとんどの地域で売上が±2%程度の水準にとどまっていることがわかる。特に売上の大きい「Americas (南北アメリカ)」と「Europe (欧州を含むEMEA地域)」ではその傾向が顕著だ。

直近の四半期における地域別のiPhone販売台数を集計したところ

一方で、第2四半期のデータのみを比較すると減少著しい中国だが、iPhoneの発売時期がずれ込んだことを考慮した3四半期での集計では、前年比で10.5%の増となっている。いまだ2桁成長を続けており、すでにEuropeの売上を抜いて売上で第2位の地域となっている。地域的に大きな変化要因がなければ、今後のAppleの動向はほぼ中国しだいと考えて問題ないだろう。

以前のレポートでも少し触れたが、中国は所得水準が上昇した影響でスマートフォンの平均販売価格(ASP)はここ数年で急上昇しており、比較的中層クラスの国民でもiPhoneを入手しやすい環境が整っている。さらに内陸部を中心に市場が広がっていけば、もともと世界最大の人口を抱える中国は潜在的に巨大な可能性が眠っている。問題は中国での成長がどこまで続くかという点だが、「かなり厳しい段階まできている」というのが筆者の意見だ。Apple CEOのCook氏は5月後半に中国を訪問しているが、Forbesによればこうしたトップの行動予定がメディアを通じて報じられること自体が異例のもので、この国が同社の命運を握り、かつ今後の活動に黄色信号が点灯していることの証左だと指摘している。このほか、Appleの中国のコンテンツサービスが先日突然政府によって終了させられたことが話題になっており。Cook氏の中国訪問はこうした問題を話し合うことが狙いであり、中国でのビジネスが危ういバランスの上で成り立っていることを端的に示したものだといえる。