第7次ワインブームを迎えた2015年、ワインの消費量は40万キロリットル近くにのぼるのではないかとメルシャンはみる。空前のワインブームだった1998年の消費量は30万キロリットル弱だ。このように、国内でのワイン需要は大幅かつ急速に上がっているが、ワインメーカーにとっては“イタシカユシ”な需要の伸びかもしれない。それは、需要に合わせたワイン生産ができないからだ。
需要増に即応できないワイン産業
「仮に新しい農園を拓いたとして、ワイン用ブドウ農園でブドウが実るのは3年、ワインの原料として使えるブドウになるまで5年、商品として送り出せるワインの原料に育つまで10年、納得のいくワインの原料になるブドウになるまで30年……。場合によっては100年の歳月が必要になる」と藤野氏はいう。日本のワイン産業は140年以上の歴史があるが、欧州のシャトーは数百年の歴史を誇るものがザラだ。つまり、100年単位での競争を強いられることになる。
だが、2000年代になってからは日本のワイン造りに光明がみえる。それは、科学的な知見からワインを分析できるようになったこと。たとえば、日本独自の甲州は1300年前から栽培されているが、長いこと“アロマ”(香り)がないといわれてきた。だが、2000年代前半に柑橘系の香り成分を含んでいることが発見され、その特徴を生かしたワインが醸造されるようになった。経験と勘、ブドウ畑の質で決まっていたワイン造りに“科学”という要素が活用できるようになったのだ。
メルシャンでは、発見したワインの科学的要素を惜しげもなく公開しているという。国内のワイン醸造技術を底上げし“オールジャパン”で、日本産ワインの地位を上げるためだ。
冒頭で述べた川島さんのワインに対する情熱により、女性愛好家が増えた。ワイン展の来館者にみられるように年配のワインファンも増えている。メルシャンの調査によれば、20代のあいだでもワインを嗜好するユーザーの増加が顕著だという。日本のワイン消費量は各国に比べればまだまだ少ないが、国産ワインの熟成とともに、グンと増大する素地がある。
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