国産ワイン造りの結晶「甲州」「マスカット・ベーリーA」

入館してまず目に入ってくるのが日本で生産されているブドウの写真の数々。だが、「甲州」と「マスカット・ベーリーA」の2種類のブドウだけが写真ではなく、模型という3次元の姿で展示されていた。この差別化された展示には理由がある。前者が2010年に、後者が2013年にOIV(国際ブドウ・ワイン機構)にワイン用ブドウ品種として登録されたからだ。

展示されていた「甲州」(左)、「マスカット・べーリーA」(右)の模型

日本のワイン造りは1873年に国策産業として奨励されたのが始まりだが、ブドウ生産に向かない多雨地域であること、酸味や渋味が当時の日本人に受け入れられなかったこと、そして1941年に勃発した太平洋戦争など、数多くの艱難辛苦に見舞われ紆余曲折してきた。どのようにしてブドウを育て、いかにして先の大戦を乗り切ったのか、詳しくはワイン展の展示に譲るが、日本産ブドウのOIVへの品種登録は、100年以上ものあいだ、試行錯誤と努力を積み重ねた結果といえるだろう。

ワイン展の様子に戻ろう。現存する最古の日本産ワインや世界最古級シャンパーニュ、貴重なワインデカンタの展示、ワインの香りの体験コーナーなど、興味深い内容が披露されている。2月21日までと同イベントの会期は残り少ないので、興味のある方は早めに訪れるとよいだろう。

現存する最古の日本産ワイン

世界最古級のシャンパーニュ。沈没船から引き上げたもので、日本初公開だ

貴重なデカンタの数々

圧搾を体験できる展示物。ワインの香りなどの体験コーナーなどもある

ワイン展で販売されているオリジナルの「田崎真也セレクトワイン」

なお、会場内は女性の入館者が目立った。「女性客はもちろん、ご年配の方も多く入館されています。通常、博物館はお子さまづれのお客様が多いですが、さすがにテーマがお酒なので、大人の方がほとんどです」と奥田氏は話す。さらに「ワインにご興味をもってくださる方が多いためか、オリジナルワインの売り上げが好調です(笑)」とも付け加えた。

では、国産ワインが国際的にどのような位置にあるのか……日本屈指のワインメーカーの意見を聞いてみた。