世界最大のコンシューマエレクトロニクス展示会「International CES」(CES 2016)が、米国ラスベガスにて間もなく開幕する。会期は現地時間で1月6日~9日まで。開幕前々日となる本日は、恒例の公式プレイベント「CES Unveiled」が開催され、展示内容の一部をひと足早く見ることができた。

CESのプレイベントとして盛り上がるCES Unveiledの会場。出展はIoT製品が非常に多い印象

開幕前日からは基調講演もはじまる。過去はマイクロソフト枠だったことに象徴される"前夜"基調講演は、インテルとフォルクスワーゲン

近年のCESでは、一時期は主役の座を独占していたPCやAV機器関連の出展が勢いを失っているように見えるが、積極的な製品投入でUnveiled会場を沸かせていたのがLenovoだ。ThinkPadのフラグシップクラスを示す「X1」の名を冠したモバイルノートが、"複数"モデル登場していた。

これまでのX1では、一世代に薄型クラムシェルの「X1 Carbon」のみが存在するモデル展開だったが、今年は2016年版「X1 Carbon」だけでなく、着脱式2in1の「X1 Tablet」や、ディスプレイ360度回転の変形型2in1「X1 Yoga」が加わっている。スペック詳細は上記リンク先の関連記事を参照いただきたいが、X1 Carbonはさらなる薄型軽量化の追及やIntel Coreの第6世代移行、X1 Tabletはキックスタンド装備のMS Surfaceライクなボディに豊富な拡張モジュール機構、X1 Yogaは2in1でありながらX1 Carbon同等の薄型軽量の実現やWQHD有機ELディスプレイの採用など、それぞれ強い個性を持つ。

「ThinkPad X1 Carbon」の2016年モデル。さらに薄く軽くなった。指紋認証も新型で、指をタッチするだけで認識するようになっている

キックスタンドでSurfaceライクな「ThinkPad X1 Tablet」。キーボードカバーはトラックポイント付きで、カラバリ有り

X1 Tabletの特長となるのが、キーボードカバーの装着にも利用する本体下側の独自コネクタによる拡張モジュール機構。どれも一見するとバッテリパックのようだが、実はポートデュプリケータの「Productivityモジュール」、プロジェクタ機能を追加する「Projectorモジュール」、Intel RealSense対応3Dカメラを備える「3D Imagingモジュール」を装着できる

外見はX1 Carbonと見間違えるがヒンジが360度回転する「ThinkPad X1 Yoga」。タブレットモードでキーボードがフラットに収納される機構を備え、デジタイザペンも本体に収納

X1 YogaとX1 Carbonを並べてみた。左がYogaで、違うのはヒンジ部の天板開口部くらい

X1 Yogaが下でX1 Carbonが上。縦横サイズはまったく同一。薄さはややYogaが厚いが、目視で区別がつかないくらい

レノボではこれも面白かったデスクトップPCの「ideacentre 610S」。三角柱のPC本体の上部にプロジェクタをドッキングした家庭用PCだ。個人的には、ちょうどよいアクリル板とかディラットスクリーン的なものを用意して、映画マイノリティリポート風のPC画面を試してみたり、ちょっとした「初音ミク」ライブの自宅開催が手軽になるかもと気になる製品

ほかPC関連だと、LGが27型で4K UHD解像度のPCディスプレイ「27UD88」を出展していた。パネルはIPS方式、映像入力にUSB Type-Cコネクタが使え、sRGB 99%以上の色域、ハードウェアキャリブレーション対応、画面分割機能など。日本で発売するかなどは未定

ところでCES Unveiledは年々、スタートアップ企業が製品・技術を世界中にアピールする格好の場としての傾向が強くなっている。思い起こせば、過去にはドローンやウェアラブル機器のスタートアップがUnveiledへと積極的に出展し、市場をひろげるきっかけのひとつとなっていた。今年のUnveiled会場で目立っていたのは、とにかく「IoT」だ。白物家電はことごとくオンラインになり、レシピアプリと連携しミックスジュースを"スマート"にブレンドしてくれるジューサーすらあった。スマートキーは当然のように出展があるし、センサが仕込まれた"スマート"ベッドで寝るとスマートフォンが今後の最適な睡眠方法をサジェストしてくれる。

最適なブレンドのミックスジュースが飲める"スマート"なジューサー

センサでデータ取得し、おせっかいをやいてくれる"スマート"なベッド

腕につけるものや腰にまくものなど、活動量計はたくさんの出展

某攻殻な隊が使っていそうな四脚ロボットは、スマートフォンと連携してAR空間で遊べるReach Robotics社のトイロボット。自機のステータスやウェポンを設定して、スマートフォンの画面越しにロボットを見ると、AR空間が出現。スマートフォンで現実のロボットを操作すると、AR空間の仮想の敵を仮想の攻撃エフェクトで倒すことができる

ソニーのPlayStation VRやOculus Riftで注目の「VR」も盛り上がっていた。Unveiled会場ではスマートフォンを装着する手軽なタイプがメインだったが、フランスのImmersit社は、ソファーの下に空気圧稼働のパーツを設置し、VRの画面にあわせてソファーが激しくムーブする3Dならぬ4D体験をうたうVR製品を出展

そんな今年のUnveiledで、日本のスタートアップであるCerevoが公開していたのが、IoTロードバイク「ORBITREC」とプロジェクタロボット「Tipron」。ORBITRECは、自転車のフレームにセンサやGPS、通信モジュールを仕込み、走行中のログを取得・分析できる。他のORBITRECから取得したビッグデータを解析し、例えば地図上では平坦な道のはずなのに、速度低下のデータが頻発しているなどのデータをもとに、異常が存在することをアラートしてくれたりする。3Dプリンタ製造のチタニウムジョイントとカーボンチューブを組み合わせ、短納期・低価格なフレームオーダーメイド(最短1カ月、7,000ドル以下)が可能な点もORBITRECの特長だ。ほか、ORBITRECのIoT機能を既存自転車に装着できる外付けアダプタ「RIDE-1」も用意する。ともに今年の春の製品化を目指しているそうだ。

Cerevoの「ORBITREC」。フレーム内にセンサやGPS、通信モジュールを埋め込んでいる。ビッグデータ解析で道の状況を把握できるもの特長

プロジェクタロボ Tipronの方は、プロジェクタがロボット掃除機のように部屋中を自走し、しかもアニメのロボットのように変形までするという、相当に異色なもの。変形することで頭部の位置にあるプロジェクタ照射部の高さや仰角が変わり、首を左右に振ることができ、壁や天井など任意の場所に映像を投影できる。自走機能もセンサで衝突防止が働くなどこだわっている。プロジェクタが動き回ったら新しい使い方が産まれるかもという動機にて、年内製品化を目指し開発中。

プロジェクタロボ「Tipron」。頭の部分がプロジェクタ部で、自由に動き回り、変形までする。プロジェクタによる映像表示では、スマートフォンの表示画面を転送できるほか、HDMIやUSB接続で直接コンテンツを表示することも。試作機のプロジェクタ機能が720pの250lmというのがやや物足りない気がするが、製品化でどうなるか

これも日本からの出展。iliが出展していた「Wearable Translator」。どこのスタートアップだろうと思ったら、指輪型ウェアラブル端末「Ring」の人達だった。首から下げられる小さな本体にボタンがひとつだけあり、押してマイクに話すと、すぐにスピーカから翻訳済み音声が、という誰でも簡単に使えそうなユーザビリティが特長。通信でサーバ処理するでIoTモノかと思いきや、翻訳ライブラリも内蔵のスタンドアロン機器であり通信設定は一切不要。訪日外国人向けなどを考えているそうで、外国語も機会も苦手な人の海外旅行などにも最適だと思う

余談になるが、CES取材に集まったプレスに向けて、米業界団体のConsumer Technology Association(CTA)が世界中の製品トレンドや市場動向のリサーチ結果を発表しているのだが、その内容は、CE市場の既存の主要製品はどれも大きく伸びるわけではなく、直近のけん引役だったスマートフォンは単価が下がり台数も逓減、地域別の消費動向も中国が明らかに鈍化し、新興国は経済の中国依存の影響もあり厳しく、北米はドル高が懸念で、西欧は正念場、日本は消費税の再増税で先行き不透明と、2016年のはじまりから世界中で消費減速の懸念ばかりだった。

2016年の見込みはいきなり景気の悪い話から

今年のCESは、これまでに主役に続く、思わず欲しくなるような、生活がもっと豊かになるような魅力のある次の何かを、世界中が探している真っただ中での開催だ。Unveiledだけでなく、昨年からCESの本会場でもスタートアップ企業を対象とした出展スペースが一気に拡充されている。既存の大手も生き残りに必死だ。CES 2016は、これまでない体験をさせてくれる何かが登場しやすい状況にあると、楽観しながら開幕を待ちたい。マイナビニュースでは、閉幕の1月9日まで現地レポートなど随時更新していくので、ご期待いただきたい。