米国NetApp社は、10月12日からラスベガス市で、技術カンファレンスInsight 2015を開催した。ここでは、同イベントをレポートする。

NetApp社は、ストレージに特化した専用機を製品とする「ストレージ専業メーカー」だ。まったくの無名というわけではないが、エンタープライズ系のインフラ構築やデータセンタークラスのシステムなど比較的大規模なシステムで使われることもあり、誰でも名前を知っているわけではない。特に日本では、日本法人であるネットアップ株式会社があるが、OEMとして富士通がNetApp製品を製品を扱っていることもあり、富士通扱いで販売されており、どちらかというと「知る人ぞ知る」メーカーといえるかもしれない。なお、NetApp社は、当初「ネットワークアプライアンス」という名前で創業、本社をカルフォルニア州サニーベールに置く。

Insightは、毎年開催されており、販売パートナーや顧客などの技術者が対象だ。基調講演や展示会場、技術セッションなどからなる、米国での一般的な技術カンファレンスの構成を取る。ただし、基調講演に相当するものが、毎日、夕方行われる点(多くのイベントでは、朝、一番最初に基調講演を行うことがほとんど)が多少違う。

筆者も、このイベントに参加するまで、ニュースなどでNetApp社の存在や、ストレージ専業メーカーであることは認識していたが、具体的にどのような製品でどのようなビジネスを行っているのかは知らなかった。しかし、NetApp社は、1992年の創業だが、すでに世界150カ所に拠点を持ち、1万2,000人以上の社員を擁する企業にまで成長している。このInsightにも5,000人の参加者がいるという。現在の同社のアプライアンスは、インテル社のXeonプロセッサを利用しており、インテルもInsightのスポンサーの1つだという。

さて、今回のIsight 2015では、同時にMedia Sammitとして、プレス発表やブリーフィングも行われた。Insight初日は、製品発表から開始された。NetAppは、昨年「Data Fabric」というビジョンを発表している。これは、ローカルにあるデータ、サービスプロバイダーなどにあるデータ、クラウドにあるデータなど、さまざまな「場所」でデータ移動の自由度を高めることで、継ぎ目のないデータ管理を行うというもの。この「Data Fabric」を実現するものとして「ハイブリッドクラウド」がある。ローカル(オンプレミス)のストレージとクラウド側のストレージを組み合わせたストレージシステムで、ローカルストレージの高速性と、クラウドストレージの可用性、アクセスの容易さなどを両立させるものだ。

今年は、このData Fabricをさらに拡大するものとして、スターターキットである「ソリューションエッセンシャル」、また、Data Fabricの構築をサポートする「イネーブルメントサービス」、そしてストレージ製品とグーグルとの提携を発表した。

Data Fabricは、ハイブリッドクラウドを組み合わせ、場所やサービスに依存せずに自由にデータのアクセスや管理が行えることを目指す

NetAppが想定するData Fabricのエコシステム。他社製品やアマゾンのクラウドサービスなどを組み合わせ、Data Fabricを実現する

NetApp Insight当日に発表されたのは、ソリューションエッセンシャル(スターターキット)、Data Fabric構築支援サービス、そしてストレージ製品やGoogleとのクラウド技術パートナー提携

初日の基調講演(同イベントではGeneral Sessionと呼ぶ)には、CEOのジョージ・クリアン氏が登壇。「Data Powered Digital Future」と題した講演を行った。ストレージビジネスを行う同社らしく、未来は「データ」にあるというわけだ。当日の発表を踏まえ同社の提案する「Data Fabric」は、「実際のビジネスとして提供できる」ものだと述べた。ローカルとクラウドのストレージを統合するハイブリッド・クラウドは、「将来のアーキテクチャ」であり、NetAppはこれを実現するとした。

同氏によれば、NetAppのフラッシュストレージ製品「All Flash FAS」(FASはFabric-Attached Storageの略だとされる)は、出荷量が140%の伸びとなったという。

その後、米Cisco社のニック・アール氏が招待話者として登壇した。Cisco社は、FlexPodと呼ばれるシステムを販売しているが、その中にNetAppのストレージシステムが使われている。Cisco社は、FlexPodは、予め、特定の用途に対して検証を行ったシステム。これをCiscoは、UCS(ユニファイド・コンピューティングシステム)と呼ぶ。たとえば、マイクロソフトのExchageやSharePoint、SAPのHANAなどの分野、用途を決め、それぞれに最適化し自動設定などの機能を加え、検証したFlexPodを提供するわけだ。自由度の高いハードウェアを用意してさまざまな用途に対応するのではなく、先にアプリケーションを決め、それに応じたシステム構成を作るわけだ。

このFlexPodにおけるCiscoとNetAppの協業は今年で5年目になる(翌日、NetApp社はFlexPodの5周年についてプレスリリースを出している)。同氏は、FlexPodにおけるData Fabricの重要性について語った。最近では、さまざまなものがネットワークに接続されつつあり、これに応じてインフラも変化しつつある。このため、大量のデータが蓄積されつつあり、それを利用してさまざまな「判断」や「評価」が可能になる反面、データを一カ所に集めて分析するといった従来のやり方が不可能になるだろうと予測した。データ自体には、寿命があり、短時間で分析を行う必要があり、データをすべて転送していたのでは間に合わなくなる可能性がある。このためには、データを動かすのではなく、データの存在している場所で分析を行う必要があるとした。FlexPodとそれに組み込まれたNetApp製品により、これが可能になるという。

NetApp社CEOのジョージ・クリアン氏

ハイブリッドクラウドは、デジタル化世界のITアーキテクチャだとした

昨年からの実績としてEシリーズが50%の伸びを、オールフラッシュのFASシステムは140%の成長があった

シスコ社上級副社長でグローバルクラウド、マネージドサービス担当のニック・アール氏

まずは、NetAppを使うFlexPodの5周年についてアール氏は語る。この5年間にさまざまな機能を追加し、さまざまな協業を行ってきた

いわゆるビックデータがブームの現在はAnalytics 2.0で、将来は、分析を秒、ミリ秒単位で行うことになり、データを収集した場所で分析を行うAnalytics 3.0が必要になるという

2日目のGeneral Sessionには、富士通ドイツの副社長でグローバルプロダクトビジネスストレージ担当のバーナード・ブランドウィット氏が登壇

タイトルは「Date Fabricを一緒に作ろう」で、富士通のIoTの取り組みなどからNetAppのストレージアプライアンスについて語る

EMCのストレージ製品に対してNetAppに変更すれば3倍のパフォーマンスを保証するというキャンペーンを開始。奇しくもEMCがDellに買収されるというニュースの直後だった