ベンチマークで確認するガーバーの違い:オーバークロック編
さて、B0ガーバーとB1ガーバーの違いを説明したとことで、実際に使うとどの程度の性能差があるのか、をまずは確認してみたいと思う。1つ目はオーバークロック性能である。このB1ガーバーを利用したのは冒頭にも書いたがSkylakeの評価の際である。この時はマザーボードにMSIのZ170A Gaming M7を利用して評価を行ったのだが、このZ170A Gaming M7はBIOS Setupで割とワンタッチでDRAMの速度を変更できる(Photo08)。
もちろん変更したら動かない、ということも普通にあるわけだが、その場合はBIOS Setupに入る前にこの画面が出る(Photo09)ので、ここからBIOS Setupに移行して修正を行うことができる。
またPhoto08の自動設定は、周波数向上に合わせて自動的にCLなどの値を変更してくれるが、マニュアルで変更させることもできる(Photo10)。これを使って、B0ガーバーとB1ガーバーで、それぞれどこまで動作周波数を引き上げられるかをテストしてみた。
そんな訳でテスト環境はこちらの表1に示す通りなのだが、メモリのみB0ガーバーとB1ガーバーの2種類ということになる。ちなみに外部GPU(GeForce GTX 780)を利用して行った。
それでは、それぞれのDIMMがどこまで動作周波数が上がるかである。ちなみに周波数を上げた状態で「正常に動作する」か否かの判断としては
- CineBench R15でOne CPU/All CPUのテストが完走
- RMMTで4ThreadのRead/Writeをそれぞれ3分間実行
の2つが正常に実行できることを確認する事とした。
さて、結果から言えば
- Revision B0:DDR4-2533まで利用可能
- Revision B1:DDR4-3100まで利用可能
となった。搭載されているメモリチップはPhoto06,07からも確認できるが"H5AN4G8NMFR-TFC"はDDR4-2133までの動作をサポートするDDR4チップで(こちら http://news.mynavi.jp/news/2015/08/14/455/ はチップそのものが異なる)、なのでDDR4-2533まで動作するだけでも偉いとも言えるのだが、同じチップを使いながらもB1ガーバーに切り替えるだけでDDR4-3100まで到達するというのは相当に大きなインパクトがある。
ちなみにPhoto11~Photo20が、それぞれの動作周波数におけるLatencyの設定値となる。具体的なLatencyの値はキャプションを見ていただきたいが、B0ガーバーの場合は2533MHzまで、B0ガーバーの場合は2666MHzまではPhoto08で指定しただけである。自動的にLatencyが勝手に積み増されているのはBIOS側の操作による。
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Photo11:これがノーマルの2133MHz。CL15-15-15-36-278 |
Photo12:2266MHz。CL16-16-16-38-295-2T |
Photo13:2400MHz。CL17-17-17-40-312-2T |
Photo14:2533MHz。CL18-18-18-42-330-2T |
Photo15:2666MHz。CL18-18-18-44-347-2T |
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Photo16:2700MHz。CL19-19-19-45-351-2T |
Photo17:2900MHz。CL16-16-16-37-279-3T |
Photo18:3000MHz。CL16-16-16-38-279-3T |
Photo19:3066MHz。CL16-16-16-38-279-3T |
Photo20:3100MHz。CL16-16-16-38-279-3T |
さて、B1ガーバーの場合は2800MHzが動作しなかったので、ここからPhoto10の設定画面での作業になったのだが、試しにDDR4-2133(つまり標準状態)のLatencyに全部1を追加したら、結局そのまま3100MHzまで完走してしまった。なのでtCLやtRCDはむしろ減っているのだが、Command Rateを2から3に積み増したのが功を奏した模様だ。ただこの方策はB0ガーバーには通用せず、結局2533MHzがリミットになってしまった。
これでどの程度性能が上がるか、も確認してみた。まずグラフ1がCineBench R15の結果である。実線がAll CPU、破線がOne CPUの結果だが、All CPU(4 CPU/8Thread)の場合でもわずかに改善したという程度でしかない。
実際グラフで見ると(ある意味当然ではあるが)B0ガーバーとB1ガーバーの線が重なっているし、よく見れば右肩上がりながら、その差はごくわずかでしかない。もっともこれは、CineBench R15の性能がそれほどメモリ帯域に影響されない、という意味でもある。さすがにSkylakeに搭載された8MBものL3キャッシュは伊達ではない。
では純粋にメモリ帯域としてはどうか? というのがグラフ2である。4 Threadの結果を持ってきたのは、以前の結果でほぼ4 Threadの場合が帯域のピークになるからである。
実線がRead、破線がWriteの結果である。2700MHzあたりでReadが停滞、2900MHzあたりでWriteがむしろ下がっているのはやはりCommand Rateを3Tに増やした影響が大きいと思われるが、それでもReadはその後もう一度帯域上昇に転じ、最終的にはDDR4-3100で42.2GB/secもの帯域をたたき出している。
DDR4-2133と比べると3割もの帯域向上である。Writeはもう少し敏感で、DDR4-3100相当だと15%弱の向上にとどまっている。こちらはDDR4-2700あたりでとどめておけば22%ほどの帯域向上になるから、どちらを取るのかは使い方次第という感じだが、単に動作周波数を引き上げるだけでなくきちんと帯域が向上することも確認できた。
これがB0ガーバーの場合、頑張ってもDDR4-2533止まりであり、帯域向上はReadで約13%、Writeで15%というあたり。この数字も決して悪いものではないとは思うが、ガーバーを変えるだけでさらに10%以上の帯域改善が実現できる、というのは悪い話ではないと思う。