政令指定都市内の鉄道駅が主な整備ポイント

次は歩行者ナビデータベースの整備についてだ。歩行者ナビデータベースについては、2つのコンテンツが存在している。1つは、カーナビ同様に歩行者の目的地までのルートを探索させるということで、歩行者用の道路ネットワークの整備だ。もう1つは、駅構内や地下街など屋内施設の地図の製作である。

まず歩行者用の道路ネットワークの整備情報だが、要は歩行者しか通れない道が結構あり、もちろんそちらも整備する必要がある。前回の記事で歩行者ナビに関する話として新宿での話をしたが、歩行者専用の道路は大きな駅周辺や公園などのほか、意外と街の至る所にちょこちょこと存在する。例を挙げると、駅ビル・地下鉄駅・地下街内通路、連絡通路、商店街(アーケード)、歩道橋、ペディストリアンデッキ(高所に通された歩行者専用のある程度距離のある通路)、横断歩道、複数の出入り口があってその中を通り抜けられるような公園、自動車では通れない狭い道、歩行者専用の橋、歩行者や自転車しか通れない狭くて高さのない高架下、といったところだ(画像51)。

画像51。歩行者専用ルートの例

いうまでもなく、これらをきちんと調査して整備することで、自動車のルートとはまったく異なる、歩行者専用のルートを案内できるようになるのである。例えば、歩行者や自転車しか通れない狭くて高さもない高架下を抜けていくのと、クルマと同じ遠回りで踏切を抜けていくルートでは、歩く距離も異なるし、もしかしたら踏切で長時間足踏みさせられるかも知れないので、目的地までの所要時間がまったく異なることになる。

もちろん、歩行者専用ルートのためだけに整備を行っているのではなく、基本的にはカーナビの整備情報の流用となるが、現在では歩行者しか通れない道の調査も行われているし、エリアによっては歩行者専用道路のみの調査も実施されている。例としてつくば市が紹介されたが(画像52)、つくばエクスプレスのつくば駅周辺などは公園が整備されている上に、ペディストリアンデッキもかなり長く延びているので、クルマのルートと歩行者のルートはかなり異なるという具合だ。

画像52。つくば市の歩行者専用道路に関する調査原稿

新宿などもご存じの通りで、地下街・地下通路もかなり張り巡らされているし、西新宿は街そのものが2層構造になっているので歩行者なら階段を利用することですぐに違う層に移れるが、クルマだとそうはいかない。よって、クルマと歩行者のナビゲーションではまったくルートが異なることも往々にしてあるというわけだ。

ちなみに地下街がOKなら、複数の出入り口がある大型ショッピングモールなども、うまく通過すると目的地までの距離を短縮できたり、雨の日は濡れずに済んだりするということでルート案内に入れてほしいと思う人もいることだろう。しかし、公共の施設ではあるが、企業が所有する私有地であり、公道のようには扱えないので、その中を抜けていくというような案内は整備されていないため、現在のところはルート案内が出ないようになっている。

ただし、将来的にはそうした大型施設内もルート案内を出そうというアイディアは考えられているという。ただ単に通り抜けてしまう場合は難しいかも知れないが、大型ショッピングモール内の特定のお店に行きたい場合などは、屋外からモール内へとシームレスに案内してもらえるようになれば、利便性は各段に上がるというわけだ。なお、地下街や大型駅の構内ももちろん私有地ではあるわけだが、最初から通路もしくは通路に類するスペースとして設計・利用されているので、ルート案内として出されているのである(ショッピングモールなどの大型商業施設はあくまでもそれ自体が店舗であって、通り抜けの通路としては設計されていない)。