Apple Pen

iPhoneを登場させた2007年1月、Steve Jobs氏は当時のスマートフォンにつきものだった物理的なキーボードやスタイラスペンに対して批判し、マルチタッチディスプレイを備えたiPhoneを披露した。2010年に登場させたiPadも、スタイラスの採用はしなかった。

それから8年たっているが、Appleの出願特許には、多数のペンデバイスに関するアイディアが記されていた。ペン先をダイナミックに認識したり、空中に書くことで文字が認識できるもの、あるいはペンの中心から展開される画面上のメニューなどだ。こうした様々なアイディアによって、既存のペンデバイスとは異なる新たな「ペン」が作り出されるかもしれない。

このペンは12.9インチとして登場すると噂されるiPad Proに向けて作られているとの見方もある。ペンケースに1本余裕を持たせておくと良さそうだ。

使い方に選択肢が増えることと、ユニバーサル化、あるいは共通項を育むこと

今回紹介してきた新しいインターフェイスのアイディアの他にも、Apple、あるいは他のメーカーが新たな操作方法を考えているはずだ。操作方法のカスタマイズや、好みのものを選べるようになることも、今後楽しみだ。

iPhoneのインターフェイスは、ここ8年間、大きく変わることなく画面をタッチする「マルチタッチ」が使われてきた。はじめは2本指でのピンチイン・ピンチアウトに慣れていなかったユーザーも、今では地図やウェブページを自由に操ることができるようになったのではないだろうか。

かたくなに変えなかったことが習熟と共通認識を生み出すことができた。加えて、アクセシビリティの領域にも力を入れており、音声で操作できるようにもなってきた。こうした操作方法の多様化は、アクセシビリティだけでなく一般の人でも利用できるユニバーサルデザインとして、機能を提供していくこともできる。

好みの使い方を実現すること、新し使い方を提案すること、ユニバーサルな習熟を生み出すこと。大きな変化を減らしながら、こうした可能性を一つずつ実現していくAppleに対して、ユーザーもリアクションを返していけると良いのではないだろうか。

松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura