AMD GPU - 20nmで投入される次世代GPU
2014年9月に発表したTongaコアのRADEON R9 285以降新製品が無いAMDであるが、現在Pirates Islandsシリーズの開発が進行中である。
Pirates Islandsの詳細は公式には一切明らかになっていないが、アーキテクチャそのものも新しいもの(GCN 2.0?)になるようだ。このPirates Islandsの最初の製品がFijiで、2015年第1四半期の末には市場投入されると見られる。これに続いて(もしくはほぼ同時期に)Treasure Islandも登場するらしい。
さてこのFijiやTreasure Islandであるが、メモリとしてはNVIDIAに先駆けてGDDR5と決別する模様だ。ここで利用されるのは次世代の広帯域メモリHBM(High Bandwidth Memory)で、AMDはSK Hynixと共同でずいぶん前から開発を行っていた。開発を行っていたと言っても独自規格ではなくれっきとしたJEDECの標準規格であり、AMDとSK Hynixが先行して開発を手がけていたというべきか。
HBMの場合、GPUのダイとはSilicon Interposerで接続する形態をとっており、ちょうどTSMCのCoWoSの様な接続形態となる(Photo06)。SK Hynixは2014年の第2四半期にはHBMのサンプル出荷を開始しており、2015年第1四半期から量産を開始する予定であるとアナウンス済みである。
実は2014年12月の時点で、同社の第一世代のHBMであるH5VR8GESM4R-20Cはデータブックに記載済みで、Availableが"Now"となっている。HBMのバス幅は1024bitになっており、信号速度は1Gbpsなので、トータル1Tbps=128GB/secの帯域を確保できる。
そのため、HBMをいくつ搭載するかは帯域ではなくもっぱらメモリ容量で決まる形になる。HBMモジュール(という言い方も変だが、メモリダイ+コントローラのパッケージ)の容量は1GBなので、例えば4GBが必要ならこんな形になる(Photo07)。エンスージャスト向けにはもう少し容量がほしいだろうが、メインストリームのハイエンドならば4GBあれば当面十分であり、おそらくFijiでは4GB、Treasure Islandでは2GBといったところになると思われる。
Pirates Islands世代ではまた、GlobalFoundriesの20nmプロセスを利用することになる。これは以前から既定の路線であり、それほど不思議ではない。判断できないのはこの20nmがアナウンス済みの20LPMなのか、それとも独自プロセスになるのかという点だ。
例えばKaveri世代でAMDはGlobalFoundriesの28SHPプロセスを利用しているが、これは一度GlobalFoundriesのロードマップから消えたプロセスであり、現在も公式には同社の"Leading Edge Technology"には含まれていない。要するにAMD専用のプロセスである。
実のところ昨今のGPUは熱密度という観点ではMobile向けのLow Power/High PerformanceではなくCPU向けのHigh Power/High Speedプロセスが必要であり、しかもシェーダ数を増やすために高密度が必要という特徴だから、Low Power Mobile向けの20LPMで間に合うのかどうかちょっと疑問である。そしてこれまでもAMDはGlobalFoundriesで専用プロセスを開発・利用してきた経緯を考えると、20nm世代に関しても20SHPに近い独自プロセスが用意される可能性が高いと筆者は見ている。
このあたりまでは割りと硬いスケジュールなのだが、問題はその先である。GlobalFoundriesは20LPM→14XMの路線を完全に放棄し、代わりにSamsungと同じ14LPE/14LPPを提供するという話は先に述べた通りだ。なので、現在はこれに向けて"第2世代Pirates Islands"の実装を進めている最中である。
ここでの問題は何か? といえば、その14LPE/14LPPの製造能力である。Samsungは14nm世代をS1/S2/S3の3つのFabで製造するが、これはAppleのA9がPrimary Applicationである。そして、GlobalFoundriesのFab 8もまた、AppleのA9が最初のApplicationになることは間違いない。
「AppleのA9だけで工場を4つも使うのか?」と思われそうだが、伝統的にSamsungの先端Fabは歩留まりが異様に低いまま、力技で生産を行うのが常であり、それもあってA8ではTSMCの20nmに移行した。ところが続くFinFETの世代では、TSMCの16FF/16FF+が多数の顧客を抱えている事もあってAppleの望む出荷量はTSMCでは望めない。そんなわけでAppleは再びSamsungに戻ることになったわけだ。
実際のところ、AppleはもとよりSamsung自身も14LPEの歩留まりが高いとは信じていない。だからこそいきなり3つも工場を立ち上げて出荷数量をカバーしようとしているわけで、GlobalFoundriesのFab8もこの動きに組み込まれる形となる。
従って、実はA9の生産が一段落するまで、第2世代のPirates Islandsの生産が本格化しない可能性が結構な確率で存在する。現実問題としては2015年のほとんどはFiji/Treasure Islandベースで製品ラインナップを拡充する方向で、第2世代のPirates Islandは早くて2015年第4四半期、現実問題としては2016年に入ってからになるのではないかと思われる。