NVIDIA GPU - 第2世代Maxwellの先は?

2014年9月に第2世代MaxwellベースのGeForce GTX 980/970を発表して一息ついたNVIDIA。2015年1月後半にはGeForce GTX 960のリリースも予定しており、とりあえずこれでメインストリーム向け製品についてはMaxwellへの更新が完了する。

NVIDIAにとって予想外だったのは、TSMCの20nmプロセスのピーキーさであった。TSMCの20nmは、28nmプロセスと比較して1.9倍のロジック密度か、もしくは25%の省電力化が可能という触れ込みであったのだが、問題はこの2つが両立しないことだ。

1.9倍のロジックを詰め込むと消費電力は大幅に増えてしまい、ロジック規模を増やさずに省電力を狙おうとすると動作周波数がかなり低く抑えられる。もともと25%という比較はどうも28nmのLPと比較した数字らしく、つまり28nm LPと同程度の動作周波数(ということは1GHz未満)の範囲ならば何とか、というレベルだ。

なので、回路規模を増やしたり、28nmのHPL(High Performance Low Power)とかHPM(High Performance Mobile)に近いターゲットで動かそうとするとCore Vccを上げざるを得ず、このケースでは下手をすると28nmよりも消費電力が増えるケースすらあったようだ。結局NVIDIAはいったん20nmでGM204/GM206/GM200を開発していたものの全部放棄し、あらためて28nmでGM204を作り直す事になってしまった。

幸いというべきか、MaxwellはKeplerからある程度最適化を進めた結果として、同じ回路規模なら若干効率化が上がる設計になっていたし、28nmプロセスそのものにNVIDIAも習熟し、かつTSMCの28nmプロセスのウェハコストも下がりつつあったから、ダイサイズそのものは結構増えたにもかかわらず、妥当なコストで製造が可能になった。ちょっとラフではあるが、GK100世代とGK204を比較した場合

コア ダイサイズ(平方mm) 最大シェーダ数 ダイサイズ/シェーダ(平方mm)
GK104 294 1536 0.191
GK110 561 2880 0.195
GM204 398 2048 0.160

ということになり、GM204の効率の良さがお分かりいただけるかと思う。

さてそのNVIDIAの2015年の計画であるが、先に述べたとおりGM204ベースでGeForce GTX 960を間もなくリリースする。問題はその次である。NVIDIAは以前からMaxwellの次にPascalアーキテクチャを投入することを明らかにしている

安藤先生の解説にもある通り、もともとは"Volta"だったものにNVLinkが追加されたのがPascalという感じであるが、問題は「Pascalのリリースは2016年を予定している」ことで、このままだと2015年の弾が無いことになる。

実はこれが難しいところで、NVIDIAは20nmのMaxwellをキャンセルして28nmで再設計を行ったが、20nmの設計をそのまま捨てたわけではなく、それをそのまま16FF(FinFET)に向けて再設計を掛けている。そもそもTSMCの20nmと16nmは互換性があり、配線層に関しては同一(トランジスタは完全に異なる)ということで、比較的容易に移行できることをアピールしていた。

これに従う形で16FFを利用する形で現在まさに設計を行っていると思われるのだが、そもそも配線層の構造が同じといっても、トランジスタの特性がかなり違うから、「とりあえず動けば良い」レベルならともかく最適化を行おうとすると配線層の設計のやり直しは不可避である。

強いていえば「スクラッチから設計をやるよりは楽」程度に考えておいたほうが良く、となると相応に時間は掛かる。さらに悪いことにTSMCの16FFは、多くのデザインがTape outしており、すでに試作に入っている製品すらある。

台湾HiSiliconのD01は16コアのCortex-A15を16FFで製造、これと28nmで製造したI/O部をTSMCのCoWoSというSilicon Interposer経由で接続するという猛烈な構成であるが、2014年の9月にはすでに動作するSiliconが存在していた。

これ以外にも多くのMobile系SoCベンダー(Qualcommが筆頭だが、ほかにも多くのベンダーが既にTapeoutしている)やNetwork Processor、SSDコントローラ、etc……がこの16FFを利用することを表明しており、同社の16FFラインは現状でかなり埋まっている。

加えていえば、16FFを若干改良した16FF+でも、多くの製品がTapeoutをすましており、かつての28nmと同じくらい生産が逼迫している。そんなわけで、立ち上がりで出遅れた分、16FFを利用したMaxwellの投入は後送りになる。

いまのところ2015年第3四半期には製品を出したいというのがNVIDIAの予定(というか希望)だが、実際に出るかどうかはTSMCの16FFのライン次第となっており、運が悪ければ第4四半期、もっと運が悪ければ2016年初頭までずれ込むことになりかねない。

もっともPascalも同じく16FF(か、タイミング的には16FF+)を使うと目されており、なので16FFや16FF+が遅れた場合はPascalも同じく後送りになると思われるので、16nm MaxwellとPascalが鉢合わせになるという心配はあまり無さそうではあるが。