皆様、あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。

2014年はお休みしたPCテクノロジートレンドですが、2015年はいろいろとすごいことになりそうなので、久しぶりに復活させていただきました。ちなみに今回からロードマップの表は無しで。まじめに予測してるのですが、あまりに確度が低いので……。

ちなみに今回のテーマはひたすら「プロセス」です。CPUをはじめ各種チップに関しては、もう"プロセスがすべてを握っている"というべき状況になっています。それでは以下各論で。

元祖仕事の邪魔をするスタッフ1号のチャシー。最近は足元にのたくってること多し。かつての定位置だった机の上は、スタッフ3号のまめっちに奪われつつある。全く仕事の役にはたたない

唯一仕事の邪魔をしないスタッフ2号の茶とらん。実はこいつもそろそろ11歳のじいちゃん。とりあえず仕事の役にはたたない

とにかく仕事の邪魔をしまくるスタッフ3号のまめっち。机の上でのたくって、「かまえ」と目で要求する(時々声も出したり、実力行使したりする)。もちろん仕事の役にはたたない

Intel CPU - BroadwellとSkylake

いまだに発売がずるずる遅れているBroadwell。実際、Intel ARKで確認すれば分かる通り、現在発売されているのはTDPが4.5WのBroadwell-Yのみである。しかもそのBroadwell-Yにしても、潤沢に量が出ているわけではなく、もうアリバイ工作として出したといわれても文句が言えないほど少ない量でしかない。

実のところ、現在のBroadwellのSteppingは、すでにGに達している。しかも来年量産に入ると見られるものは次のH Steppingになるのはほぼ確実である。関係者によれば、一応このH Steppingでまともになる、と見ているようだ。

つまり現状のC Steppingで出荷されているBroadwell-Yは、ちょうどNVIDIAのGeForce GTX 480の様に「とりあえず製造したウェハの中で、まともに動くものだけを選別して出荷した」ものであり、その意味ではまだ量産段階に達しているとは言えないのが現状である。

何が問題なのかといえばIntelの14nmプロセスそのものがいまだに成熟できていないことである。もしBroadwellに問題があるのならば、AtomベースのAirmontは順調に生産できることになるが、こちらも順調に後ろにずれており、2015年の上半期中に出荷できるかどうかというレベルで怪しいことになっている。

14nmプロセスの何が問題なのか、という話は後ほどプロセスのところで説明するとして、CPUロードマップに戻ると、いまの予定では2015年の第1四半期中にBroadwell-Uの発表を行うのは確実である。ただしこれが本当に予定通り第1四半期中に出荷できるか? はH Steppingの出来次第である。

以下、H Steppingが順調、という前提で話をすると、SoCではない(つまりSCHが別途必要となる)Broadwell-Hは2015年第2四半期とされる。うまくいけば、来年のCOMPUTEXのタイミングで出荷が開始されるだろう。

これに続き、第3四半期にはデスクトップ向けのBroadwell-Kが出荷可能になると見られる。もっともこのBroadwell-Hがまともに製造できたとしても、Broadwell-Kが順調に出せるとは限らないのが怖いところ。

何度か書いてきたが、Intelは14nm世代ではSoC向けの省電力プロセスを先行して開発しており、これがP1272となる。一方でデスクトップやこれに続くサーバー向けはP1273相当のプロセスになるわけで、基本的な技術要素は共通ながらも特性は大きく異なる。製品でいえば、Broadwell-HまではP1272で製造されるが、Broadwell-KはP1273に切り替わる。これが無事に製造できるかどうかは神のみぞ知るという状況にある。

さて、この第3四半期というのは、本来ならばSkylakeの投入時期であった。最早何をもって"本来"なのかさっぱり分からなくなりつつあるのだが、Broadwell-Y/Uの後継となるSkylake SoCは、当初は第2四半期に投入予定であった。しかし、Broadwell-Uの投入の遅れも相まってこちらは第3四半期にずれ込む事になった。

SkylakeはTick-TockのTock、つまりプロセスを変えずにアーキテクチャを更新する番であり、なのでプロセスそのものが安定すればこれは大きくスケジュールを逸脱することなく投入されると見られている。ただその上のグレード、つまりBroadwell-Hの後継製品は2015年中に投入されるか、2016年にずれ込むのかちょっと微妙なところ。そしてデスクトップ向けのSkylakeは2016年に入る事はほぼ不可避と見られている。

関係筋によれば、当初は「問題がなければ」2015年のかなり早い時期にDesktop向けのESがリリースされ、これと合わせてチップセットなども含めた新しいプラットフォームに向けた製品開発がOEM各社で行われ、COMPUTEXのタイミングでお披露目、第3四半期末ごろに製品出荷ということらしかったのだが、なにしろBroadwell-Kが「第3四半期に出せたらラッキー」という状況だけに、Skylakeではさらにが遅れるのは必須と思われる。

これはメモリに関するロードマップとも符丁する。これも後で説明するが、現在のところDDR3とDDR4の交代は2016年ごろと予定されている。SkylakeはDDR4を利用するから、2015年中に出しても価格のプレミアがあって高くつくことになる。その意味でも2016年にデスクトップ版が投入されるのは妥当と言えるだろう。

ちなみにXeonあるいはCore i7 Extreme向けとなるBroadwell-E/EPの投入はさらに後になるだろう。時期的には2016年の前半ごろ、というあたりになりそうだ。

ついでに一つ余談を。以下は完全な筆者の推測であるが、次のSkylakeは恐らくフロントエンドを大幅に強化してくると思う。現在は3+1(Simple×3+Complex×1)というデコーダ構成だが、Skylakeは4+1もしくは3+2の構成になるのではないか、と予測している。これは2つの理由からなる。

1つはNehalem以降の進化のステップである。NahelemはMemory I/Fを統合することで、Prefetch能力を大幅に拡充した。次のSandyBridge/IvyBridgeではLSD(Loop Stream Decoder)を強化したμOps Decoded Cacheを搭載することで、Pentium 4以降となるTrace Cacheを実装する。続くHaswell/BroadwellではFrontEndに手を入れずにBackend、つまりOut-of-Order実行される部分を大幅に強化した。となると、次はFrontendである。Memory Controllerの統合やTrace Cacheの実装で命令Fetch能力は大幅に上がっているし、Backendも8命令同時実行が可能な重厚な構成である。いまならDecoderを強化しても十分に処理が間に合うだろう。

もう1つはIntelの14nmプロセスがそれほど動作周波数が上がりそうに無いことだ。実際Skylake-S(DesktopグレードのTDP95Wのもの)のESなるものが既にWebでいくつか散見されるが、定格2.3GHz/Turbo 2.9GHzとかいう数字が踊っている。この数字そのものは実はそれほど驚きではないのだが、問題はIPCが変わらないままだと確実に性能が落ちることになってしまうわけで、IPC改善は必須となる。HaswellからさらにIPCを上げようと思ったら、一番手っ取り早いのはDecoderの強化となる。

というわけでこれは完全に筆者の推定だが、一応自信のある見解である。