サムスン電子ジャパンのAndroid搭載タブレット「GALAXY Tab S」が8月1日より発売となった。10.5および8.4インチという2種類の画面サイズを採用したタブレット端末で、薄くて軽いボディに高精細なディスプレイを搭載。8コア(オクタコア)によるハイパフォーマンスを実現したモデルだ。本稿ではGALAXY Tab Sが一般的なシーン加えて、ビジネスシーンで活用できるか、という視点でレビューしてみたい。

GALAXY Tab S。8.4インチモデル(左)と10.5インチモデルの2モデルを用意

高解像度で優れたディスプレイ

まずは基本的な仕様をチェックしていく。GALAXY Tab Sは、10.5インチ、8.4インチのいずれも2560×160pix(WQXGA)のスーパー有機EL(Super AMOLED)を搭載。写真やフルHD以上の動画、テキストを見ているのが気持ちいいぐらいの高解像度ディスプレイとなっている。

GALAXY Tab S 10.5インチモデル

GALAXY Tab S 8.4インチモデル

WQXGAクラスの解像度になると、8.4インチでは359ppiに達し、Kindleアプリなどで電子書籍を読もうとすると、シャギーもなく、どのサイズにしても読みやすい。これまでのタブレットとはひと味違うレベルと言ってもいいだろう。288ppiの10.5インチモデルでは、電子雑誌など見開きで表示しても拡大せずに違和感なく読書できる。

どちらも色鮮やかで美しい高解像度ディスプレイが特徴的

薄くて軽いので、持ち運びも容易

色再現性の高さもポイントで、一般的なディスプレイが色域のカバー率がsRGBレベルであるのに対し、GALAXY Tab SはAdobe RGB90%以上。グリーンやブルーの色域が広がっており、空の青や海の青、森の緑などをより繊細に表現することができる。加えて、「表示を最適化」機能をオンにすることで写真や動画の閲覧に適した設定に、「読書モード」をオンすることで、本を読むのに最適な色味や明るさに設定することも可能。

付属の写真。この写真が、豊かな色彩で表示できる

こちらは付属動画のキャプチャー。動画の再生品質も高い

画面モードは、動画、写真、通常の3種類が用意され、普段は自動で切り替えが行われる

「読書モード」をオンにすると、白地の背景がやや黄色みがかかってコントラストと明るさも下がるなど、読書に適したディスプレイモードになる

ブラウザを表示したところ。横表示だと文字も大きく見やすい。縦表示だと、一気に一覧性が高くなる

Googleマップの鳥観図表示をしてみると、画面が広くて気持ちいいほどの情報量

高解像度大画面を生かしたアプリで快適に使う

ここからはGALAXY Tab Sの活用法について解説する。まず、高解像度を生かした機能で便利なのが「マルチウィンドウ」だ。2つのアプリを同時に起動して、画面上に並べて操作できる機能だが、高解像度であるため、2つのアプリを並べてもそれぞれのアプリの表示領域は現実的なサイズになって、使い勝手がいい。

普段からマルチウィンドウを使いたい場合、この設定をオンにしておくと、添付ファイルが自動で別ウィンドウとして同時に表示される

例えば営業先に訪問するとき、Webサイトを開いて住所を確認しながら、Googleマップで住所を検索して探す、といった使い方が可能だ。アプリは2画面で表示されるが、その幅を自由に変えたり、左右のアプリを入れ替えたりもできる。

マルチウィンドウで表示したところ。テキストを書きながら資料を確認する、という、今までのAndroidやiOSのタブレットでは難しかった作業が簡単に行える

対応アプリであれば、画面をキャプチャしてドラッグ&ドロップしてもう一方のウィンドウに貼り付ける、といったことができる

マルチウィンドウのランチャーは画面右からスワイプして表示する

起動するアプリを追加することもできる

また、一部のアプリでは、テキストや画像の画面キャプチャを別のアプリに貼り付ける、といった操作も簡単にできるようになっている。Webサイトなどの情報を見ながら資料をまとめる、といった使い方にも便利だ。マルチウィンドウを使うのは、画面に右端から中央に向けて指をフリックさせると、マルチウィンドウ用のアプリ一覧が表示される。1つ目のアプリは通常の全画面で起動し、もう1つのアプリを選ぶと、2画面表示になる。

実際に使ってみると、特に10.5インチでは高解像度で大画面のため、2画面表示が実用的になっている。アプリが2つ、同時に起動できるだけで、タブレットの使い勝手は格段に上がる。

高解像度を生かした機能としては「リモートPC」アプリも標準で搭載している。これは専用ソフトをインストールしたWindows PCの画面をGALAXY Tab Sに表示し、操作できるというもの。一般的なリモートデスクトップアプリだが、画面サイズと高解像度によって、実用的に操作できるのがメリットだ。

10.5インチとはいえ2560×1600pixと、普通のPCディスプレイよりも高解像度だったりするので、PCの画面全体を表示しても違和感がない。タッチ操作になるので、ピンチイン、アウトでの拡大縮小表示を駆使した方が使いやすいが、タッチ精度がいいためか、全画面表示でも比較的快適にタッチ操作ができた。

こうしたリモートデスクトップアプリはほかにもいくつかあるが、やはり外出先からでも会社や自宅のPCにアクセスできるのは便利。十分な回線速度さえあれば、「外出先でGALAXY Tab Sから会社や自宅のWindowsのソフトを動かして作業する」といった操作も可能になる。

Remote PCでWindows PCにアクセス。PCのディスプレイ全体を表示しても、十分な視認性があり、タッチ操作もそれなりにできた

左側にあるのはスクロールバー。大型で指で操作しやすく、PC上のアクティブなウィンドウがスクロールできる

もう1つ面白いのが「SideSync 3.0」。サムスンのGALAXYシリーズのスマートフォンとGALAXY Tab SをWi-Fi Directで接続し、スマートフォンの画面をタブレット上に表示する、という機能だ。

SideSync 3.0を両方にインストールして、タブレット側で起動すると簡単にスマートフォンに接続できる

GALAXY S4に接続。画面をフリックで操作したり、タッチでアプリを起動したりできるし、ホームボタンなどもタッチで動作する

画像をタブレットからスマートフォンに転送するのもドラッグ&ドロップ

GALAXY Tab Sの画面上にスマートフォンが表示され、すべての操作がタブレットから行えるので、スマートフォンを手元に置かなくても、スマートフォンとタブレットの両方を操作できる。着信もGALAXY Tab Sから受信できるので、タブレットで作業していてスマートフォンの着信に気付かない、ということもない。

全画面表示すると、「巨大なスマートフォン」になる

スマートフォン、タブレット同士でデータのやりとりもできるので、作成したデータをすぐにタブレットからスマートフォンに送って、電車内ではスマートフォンで作業を継続する、といった使い方も可能。クラウドストレージを使えば同様のこともできるが、ドラッグ&ドロップでデータを転送できるので、気軽に使えるのはメリットだろう。

持ち歩くタブレット端末として重要なセキュリティに関しては、指紋センサーを搭載し、指紋によるロック解除が可能になっている。指紋センサーはホームボタンに設置されており、指をスライドさせるだけでロック解除ができる。

指紋認証は設定から

1つの指で8回スワイプして設定する

登録できる指(指紋)は3種類で、いったん登録すれば、あとはちょっとゆっくりスライドさせることを意識すれば、だいたい正確に読み取ってくれる。指紋センサーの代わりにパスワードを設定することもできるが、こちらはなるべく難しいものにしておくといいだろう。指紋認証に5回失敗すると、30秒間ロック解除ができなくなる。

指紋認証をしたところ(これは失敗)。慣れればあまり失敗しなくなる

GALAXY Tab Sは、高解像度の美しいディスプレイと、オクタコアによるハイパフォーマンスによって、快適に使えるタブレットに仕上がっている。その上で、マルチウィンドウ、リモートPCといった作業効率化の工夫が、高解像度によって実用的になっている。

Word、Excel、PowerPointといったオフィス系のデータを処理する場合、高解像度による視認性は重要だ。特に10.5インチは、こうしたオフィス系の作業に向いている。Bluetoothキーボードをつなげば、その広い画面をそのまま活用できるし、マルチウィンドウで資料を見ながらデータを編集する、といった使い方も実用的だ。外出先でPC代わりにタブレットを使う―― ようやく、それが現実的になったというのが、GALAXY Tab Sの印象だった。