米RAMBUSは5月20日に都内で記者説明会を行い、同社の戦略やIP PortfolioのUpdateについて説明を行った(Photo01)。

Photo01:右からJerome Nadel氏(Chief Marketing Officer)、Steven Woo博士(Vice President, Enterprise Solutions Technology)と、鈴木広一氏(ラムバス株式会社 代表取締役社長)

RAMBUSが戦略を変更した、という話は2013年6月にレポートした通りである。この中で、これまで取ってきた特許戦略を完全に見直す事を紹介した訳だが、どうもこの時の表現のコレとかコレではやや直接的でない分、訴求効果が薄かった(あるいは薄いと思った)のか、今年はより直接的な表現に切り替わった(Photo02,03)。内容的には既にレポートしたそのままであるが、非常にインパクトのある文言に切り替わった事は興味深い。当たり前の話ではあるが、業界に蔓延する「RAMBUS嫌い」は根強いものがあり、一朝一夕に払底できるものではない。それが故に、RAMBUSの戦略変更は、そう簡単にユーザーに浸透するものではない。このあたりのもどかしさが、この直接的な文言に集約されている様に思う。

Photo02:この3項目目を目にして流石に苦笑していたらNadel氏に「何々? なんか面白い話があった?」と覗き込まれてしまった

Photo03:こちらは会場で配布された日本語版のプレゼン資料。「訴訟の関係」→「協調的な契約」というのは、あまりにダイレクトすぎる気はする

このRAMBUSの戦略変更は、2014年5月14日に発表されたJEDECのJC-40Server向けMemory Systemを扱うSubgroupに再加入したという発表にも繋がってゆく(Photo04)。この目的についてはまた後で触れたいと思う。

Photo04:同社は1996年にRAMBUSを脱退しており、18年ぶりの再加盟ということになる

さて、昨年からのUpdateという観点で言えば、まずLabStationのUpdateが挙げられる(Photo05)。これはメモリ I/FやSerial Link IPの評価を行なうための検証プラットフォームである。ただこれはどっちかというと小物であり、大物は今年のMWCのタイミングで発表された、Lensless Image Sensorである(Photo06)。基本的なアイディアは、入力される画像を位相回折格子に通すというものである(Photo07)。位相回折格子はスパイラル状の構成になっており(Photo08)、これを通すと独特な光の分散の仕方になる。

Photo05:対応しているのは、同社のDDR/DDR4 PHYで、昨年説明のあったR+も当然対応している

Photo06:既存のイメージセンサの場合、光学系の大きさが全体を規定する、という非常に判りやすいがやや強調されすぎの例

Photo07:こちらはMWCの資料より。これまで光学系として必要だった様々なコンポーネントが非常に小さく廉価にまとまることになる

Photo08:当然このスパイラルの構造などで、どんな特性を持つのかが変わってくる

Movie01は同社のPatric R.Gill氏(Senior Research Scientist, Computational Sensing and Imaging)が、実際にこのスパイラル回折格子を装着したカメラモジュールにレーザーポインターの光を当てた様子を示したものだが、レーザーの光が独特の回折の仕方をして捕らえられているのがわかるかと思う。この捉えた映像を、計算処理を行って再構成を行うことで、もとの画像が復元できる、というのがこの技術のポイントである(Photo09)。

Movie01:実際にスパイラル回折格子を装着したカメラモジュールにレーザーポインターの光を当てた様子
Photo09:ジョン・レノンの顔写真の再構成例。多少劣化することはまぁ否めない

何がポイントかというと、位相回折格子の構造と、これにあわせた再構成の計算方法を変えることで、任意の特性の光学機能を自由に作り出せることになるからだ。当然ながら計算量とか計算精度を上げてもよければ高い画質が期待できるし、逆に特定の機能(例えばジェスチャー認識とか)に足りるだけの画質があればいいというのであれば、その分計算量を落とすような位相回折格子を選ぶ事が出来る。あるいは、位相回折格子そのものは変えずに計算方式だけを変えるということも出来る。

この方式のメリットは、その低コスト性である。Photo10は既存のカメラモジュールとの比較だが、恐ろしく小さく、かつ低コストに出来る。Photo11はテスト用に複数の構造をまとめて実装した位相回折格子のサンプルで、5セント硬貨と比較しても十分に薄い。

Photo10:左のひょろっとしたものが、Lensless smart Sensorの本体、中央がスマートフォン用のカメラモジュール、右が大きさ比較用の10 EURO CENT硬貨

Photo11:大きさがそこそこあるように見えるのは、複数のパターンをまとめて作りこんでいるためで、なので実際にはもっと小さくまとまる

Photo12が実際に利用した位相回折格子の構造である。ご覧の通り部品そのものが小さく収まる上に、ずっと安価に構成できる。この結果、「同じ価格」で比較した場合、Lensless Smart Sensorは既存のイメージセンサよりもずっと高品質を得られる(逆に品質が一定なら、ずっと低価格になる)としている(Photo13)。

Photo12:大きさそのものは直径200μm程度にすぎない

Photo13:Lensless Image Sensorで128×128pixelを再構成するのに必要なハードウェアと同じコストに揃えようとすると、既存のImage Sensorだと2×2pixelにしかならない、のだそうだ

勿論このLensless Image Sensorはまだこれからの技術ではあるが、ずっと低価格になるが故に、これまでよりもずっと多くのImage Sensorを気軽に使えるようになる可能性がある。Nadel氏は一例として、ジェスチャー認識をさせるのに、このカメラと他のセンサを組み合わせることで、低価格で高精度の認識が可能になるといったケースを示したが、一般論として現在のカメラはCCDもさることながらレンズなどの光学系がコストとサイズの両面でそれなりにボトルネックになっているだけに、これは一考の価値がある。

もっとも、今回は再構成に必要な計算のアルゴリズムなどは一切示されていないので、このあたりのComputation Costが推測できないとこの方式が有望かどうかの判断はしにくい。またこの方式で画質をどこまで上げられるかというと、最終的には回折格子の精度をどこまで上げられるかに帰着しそうで、そうなるとこちらのコストもすごくなりそうではあるが、これについてWoo博士は「Lensless Image Sensorは既存のレンズ方式を全部置き換える訳ではなく、高画質の方はずっとレンズ方式が残ると思う」とした上で、低価格向けの分野ではLensless Image Sensorが有望である、という見通しを示した。

ところで冒頭の話に戻るが、RAMBUSがJEDECに再加盟する理由を間接的に示したスライドがこちらである(Photo14)。一番上のNew Memoryとは何か? という話だが、流石に現在のDRAMで多値化とかは論外であるし、だからといてReRAMを含む次世代不揮発性メモリがすぐにDRAMを置き換えられるといっためどは立っていない。ただしメモリへのデマンドは非常に大きく、大容量と高速化への要求は増える一方である。この結果として、現在主記憶といえばベタにDRAMが配されている訳だが、そのうち「高速だが小容量」「低速だが大容量」といった、メモリそのものの階層化が起きてくるのは必然であろうし、その際にはFlashに代表される不揮発性メモリも記憶領域の階層化に入ってくる可能性がある。こうした結果として、記憶領域の階層構造そのものの再構成が、特にサーバー向けの分野では必要になるというのが同社の予測であり、こうした将来のメモリ構成に向けた標準化にRAMBUSも参画したいという事だそうだ。

Photo14:DDR4の次の世代、がここの話である

ただ、これはあくまでも将来の規格に対してのものであり、既存のSpecに影響を与えるような事はない、という話であった。例えばFB-DIMMに使われているAMBは、RAMBUSの持つMemory Buffer関係の特許が必要で、これへの特許料の支払が馬鹿にならない金額であった。まぁ現在はFB-DIMMを使っているソリューションはほぼ絶滅しているので、今更という話はあるのだが、それはともかくとして「ではJEDECへの再加盟を決めたことで、このAMBに関する特許料が変わって来る可能性は?」と尋ねたところ、「それはない」との事。あくまでもDDR4の次以降のみという事であった。まぁ流石にこのあたりまで全部ひっくり返すメリットは、今となっては双方ともないのだろうが。

ところで最後にちょっとしたUpdateを。前回RAMBUSが照明機器というか、LED Light Vulbに参入した話を紹介したが、今は? というとOEM向けはともかく一般向けはほぼ撤退に近い状態だとか。「予想以上に価格の下落が激しく、ペイしない」(Nadel氏)そうで、さもありなんといった感じではあった。