米Intelは1月6日(米国時間)、CES 2014会場にてプレスカンファレンスを開催し、現在のGUIやタッチUI以上に直感的で自然な、PCにおける次世代のユーザーインタフェース(UI)を実現するという「Intel RealSense」技術を発表した。深度センサを備える「RealSense 3Dカメラ」のモジュールを内蔵し、同技術を利用可能なPCが、今年2014年の後半にも市場に登場する見込みだ。

プレスカンファレンスのスピーカーは、米Intel上級副社長 兼 パーセプチャル・コンピューティング事業本部長 ムーリー・エデン氏

「Intel RealSense 3Dカメラ」のモジュール。手前側のモジュールの左から2個目までがカメラレンズで、その右にあるのが深度センサ。ノートPCのWebカメラ部分に入る程度のサイズ

"サイエンス・フィクション(SF)から現実へ"と銘打たれたこのプレスカンファレンスで発表されたRealSense技術によるUIの姿は、まさにSF映画マイノリティ・リポートの捜査風景や、アイアンマンのスターク社長のガレージが現実になることを期待させるものだ。これまでも同社は、こういったより人間的に自然なUIを目指し様々な技術デモを披露していたが、今回のプレスカンファレンスの発表でいよいよ、これら一連の技術に「Intel RealSense」という名前が付き、製品化へと踏み出すこととなった。

サイエンス・フィクションの世界が現実になるというテーマで、「Intel RealSense」技術を発表

スピーカーとして登壇した米Intel上級副社長 兼 パーセプチャル・コンピューティング事業本部長のムーリー・エデン(Mooly Eden)氏は、このRealSense技術につらなる製品群の最初のひとつとして、「RealSense 3Dカメラ」を公開した。2つのレンズを備える両眼のカメラレンズのほかに、レーザーの深度センサを組み合わせ実装するなどしたモジュールで、タブレットやUltrabookなどもモバイル機器にも内蔵可能な小型で薄いモジュール基板を実現している。

RealSense 3Dカメラでできることは、簡単に言ってしまえばMicrosoftの「Kinect」のような機能だが、同社が「2Dカメラと3D深度センサの統合モジュールとして世界最小」とうたうほどの小型サイズで、かつIntel自身が供給することで、PCメーカーへの導入が進み、これまで以上に普及する可能性が高まる。実際に、カンファレンス会場ではRealSense 3Dカメラを内蔵する試作機と思われるPCを公開し、さらにAcer、ASUS、Dell、富士通、HP、Lenovo、NECがRealSense 3Dカメラを搭載する2in1やUltrabook、タブレット、AIOなどを2014年の後半から製品化するという計画も発表となった。

ASUSのモバイルノートに実装された「RealSense 3Dカメラ」

こちらはDellのモバイルノートでの実装例。どちらも既存のWebカメラの位置に内蔵

エデン氏は、このハードウェアによって、これまではキーボードやマウスに頼ってきた人間の感覚にとってはやや不自然なコンピュータとのコミュニケーションが、「人間の感覚を理解し、自然な、まったく新しいものに生まれ変わる」と説明する。具体的には、現在の深度センサを備えるRealSense 3Dカメラのモジュールの内蔵で可能となったいくつかのデモンストレーションを披露した。

ハンドジェスチャーを用いたPCの操作は真っ先に思いつくところだろう。デモでは、Windowsのタッチ操作に相当する部分を、空中で手を動かすだけで再現したり、ゲームプレイにおいて、シューティングゲームの戦闘機を手の動きでコントロールしたりといった使い方などを披露した。高いプロセッシング能力を持ったHaswell CPU等Intelプラットフォームの進化があったゆえに、RealSense 3Dカメラの取り込む多大な情報を、リアルタイムに近い処理する必要があるこういったインタフェースが実現していることも付け加えられている。

ゲームプレイでの利用例。Kinectライクに、アクションゲームでキャラクタをゴールに導いたり、シューティングゲームで戦闘機をコントロールしたりしている

こちらは音楽を演奏。すべてハンドジェスチャで音源を編集したり、マイクも使って音源を追加したりしながら、音源をあらわすオブジェクトを画面上に設置し、それに触れたりしながら演奏している

また深度センサを利用して、現実の物体をカメラに映しながらリアルタイムで3Dモデリングし、画面上の拡張現実の世界にインタラクティブに反映するといったデモもあった。ほかMicrosoft Skypeを使い、ビデオチャット中に随時、人物の背景を除去したり編集したりするデモも、従来はいわゆる緑色背景シートなどを使った、情報を2Dに落とし込んだクロマキー処理が必要なものだが、深度センサで人物や背景などの対象を3D認識できるため、何の準備もなく実行できるようになるというものだ。

すべり台のような現実の物体をリアルタイムでPC画面内の拡張現実の世界に反映。そのすべり台にキャラクターをハンドジャスチャで誘導して登らせている

Microsoft Skypeのビデオチャットで、人物と背景を深度センサで認識してリアルタイムに編集するというもの。従来は背景に緑色のクロマキーシートなどを使って処理していたことだ

プレスカンファレンスにはゲストとして3D SYSTEMS社のCEOも登場。一般ユーザー向けの普及帯の3Dプリンタ/3Dスキャンでの両社の協力を発表した。「RealSense 3Dカメラ」で現実の物体をスキャンしモデルデータを作成し、3Dプリンタで出力できる低価格ソリューションを2014年中に提供するという。手持ちのプラモなどの"バックアップ"が容易な世の中が来るかも