2008年10月、超高層ビルが立ち並ぶ新宿副都心に、突如として現れた白い網状の個性的なデザインの建物が「モード学園コクーンタワー」。その名のとおり、学校法人モード学園が運営するファッション/IT/医療3分野の専門学校のキャンパスとして建設されました。学校としては日本一の高さを誇る巨大校舎のカタチについて、学校法人モード学園 広報担当の方にお話をうかがいました。

モード学園コクーンタワー

――モード学園コクーンタワーの概要について教えてください。

ファッション・デザイン分野の「東京モード学園」、IT・デジタルコンテンツ分野の「HAL東京」、医療・福祉分野の「首都医校」、3つの専門学校の総合校舎です。約1万人の学生が利用する3校の立体キャンパスととらえて、今までにない50階建ての超高層学校建築を実現しました。高さは203.65メートル、学校の校舎としては日本一です。そのほか、書店やカフェ、コンビニエンスストア、駐車場が入っています。

――網がかかったような白い外観が目を引きますが、モチーフは?

「環境が人を育てる」という教育理念のもと、"創造する学生を包み込み、触発させる"空間から、"学生がプロとして羽ばたいていく"ことをイメージして「繭=コクーン(COCOON)」をモチーフにしています。

「この建物はなんて個性的なんだ」、「ここではひと味違ったことが学べそう」など、モード学園コクーンタワーを見て興味を持った人に入学してほしいという思いから、他には類を見ないデザインになっています。

――感性を刺激する空間として、独創的なデザインになっているわけですね。モード学園コクーンタワーの設計者について教えてください。

丹下都市建築設計が設計監理を手がけ、清水建設が施工を担当し、2008年10月に完成しました。

――同設計事務所の近年の主要作品でもありますね。独創的な発想と高い技術力が要求されそうな、外壁の"繭"の部分はどのような構造になっているのでしょうか? また素材は?

斜め格子状の白いアルミパネルと、ガラス面に貼られた白いライン状の特殊フィルムが組み合わさって、繭のような幾何学模様を生み出しています。また、教室内部から見た時には圧迫感のないよう、特殊フィルムで形成された白いラインはドットで描かれています。

さらに、外壁は球状となっているため、窓のカタチがひとつ一つ異なります。校舎を全面ガラスで覆うことで開放感にあふれた教室になっています。

アルミパネルとフィルムの組み合わせにより、複雑な白いパターンが生み出されている

――複雑な構造体に包まれているにもかかわらず、内側から見たときにあまり気にならないというのが意外でした。校舎内にも、外観のモチーフやコンセプトを踏襲した部分はありますか?

「エントランスホール(案内カウンター)」も「繭」をモチーフにしたデザインで、未来感あふれる"創造空間の顔"となっています。

エントランスホール

――タワーの横にある、球体の建造物は何ですか?

繭玉をイメージした低層部にはふたつのホールが入っています。講義だけでなく、ファッションショーや試写会、企業の製品発表会などが行える多目的ホールです。先日は、ポール・スミス氏を招いた特別講義や、ティム・バートン監督や木村カエラさんらを迎えて新作映画の公開を記念したファッションショーを開催しました。

――そびえ立つ巨大ビルと、その足元にある小さな繭玉の対比が印象的です。そのほかにも、建物の造形的な特徴がありましたら教えてください。

高層建築では途絶えがちな上下階とのコミュニケーションを図るために、3層吹き抜け空間を3階ごとに3方向に配置し、校庭のように他校や他学科の学生とも交流できる「学生サロン」を設けています。これは、学校は教室だけが学びの場ではなく、廊下や校庭などで交わされるコミュニケーションもまた学びのひとつであると考えているからです。

コクーンホールA内部

学生サロンも開放感いっぱい

――観光目的のビルではありませんが、夜間の照明、ライトアップなどはされていますか?

社会人やWスクールとして学ぶ学生も多いので、夜間コース(夜間部)を設けています。そのため、夜になると教室や共有スペースには灯りがともり、昼とは違ったコクーンタワーの表情を見せます。

夜の表情

――最後に、モード学園コクーンタワーを毎日見ている広報さんが一番好きな"表情"を教えてください。

建物が全面ガラスで覆われているため、周辺の建造物や景色などが反射して映り込み、眺める角度によって外観の"表情"が変化します。モード学園コクーンタワーと同じく丹下都市建築設計が手がけ、特徴的なデザインの東京都庁舎が映り込む角度もあるので、ぜひ見つけてみてください!

――ありがとうございました。

無機質ないわゆる"オフィスビル"群の中に建つ、クライアントの思いと建築家の自由でタフな発想が結晶したモード学園コクーンタワー。「繭」というコンセプトを知っていても知らなくても、その強靭な思いが伝わるデザインとなっていますね。

余談ですが、名古屋の総合校舎「モード学園スパイラルタワーズ」(設計管理:日建設計)も、その個性的なデザインで有名です。2つのビルが螺旋(SPIRAL)を描くように空に向かって伸びていくカタチは、「次代を担うエネルギーあふれる学生が、互いに切磋琢磨し絡み合いながら上昇して、社会へ羽ばたいていく」様子をイメージしているそうです。名古屋に行かれた際には足を運んでみてはいかがでしょうか。

■モード学園コクーンタワーの"もうひとつの表情"とは?


日々、学生たちが夢を実現するために真剣な眼差しで学んでいる「教室」も魅力的だと思っています。オフィスビルとは違い、100以上ある実習室の"表情"も毎日変わります。先述した「環境が人を育てる」という教育理念のもと、プロの現場で使用している最新の設備・機器を導入する実習室では、ひとり一人がプロを目指し学ぶ姿から熱気が伝わり、学生たちの頑張りに私たち教職員も刺激されています。