「楽器が弾けないから……」、「PCを使った音楽制作を始めたいんだけど、どのソフトがいいのか分からない」などの理由から音楽制作を断念していたユーザーを対象に、高品位な録音・作曲を可能とする2イン/2アウトのUSBポータブル・オーディオ・インタフェース「FastTrack Solo」(価格:1万8,585円)のみを使った初めての音楽制作の様子を紹介していく。

前回の記事はこちら
【レポート】オリジナル楽曲を制作して、CM風動画を作ってみよう!
http://news.mynavi.jp/articles/2013/08/26/fts/index.html

音楽制作の入門に最適! 「Avid Pro Tools Express」とは?

前編では、MacとWindowsに加え、iPhone/iPadにも対応するハードウェアとしての特徴や音楽アプリからの録音・再生などを紹介した。今回は、Fast Track Soloのもうひとつの大きな魅力ともなっている付属ソフトウェア「Avid Pro Tools Express」の具体的な使用方法などを解説していこう。

「Avid Pro Tools Express」は、レコーディングエンジニア、サウンドクリエイターなどプロフェッショナルの世界において大定番となっている同社の音楽制作ソフトウェア「Pro Tools」のエントリーモデル。厳選されたバーチャルインストゥルメントおよびオーディオ/MIDI/記譜ツールなどを搭載しており、ハイクオリティーな音楽制作環境を手軽に構築できる。また、複数のエフェクトプラグインも付属されているので、本格的なミックス作業なども行える。

Pro Tools Expressは、Fast Track Soloパッケージに同梱されているわけでなく、製品のユーザーの登録後に同社のウェブサイトからダウンロード入手する仕組み。Pro Tools Expressを起動するためには、付属のiLokキー(あらかじめオーサライズ作業が必要)と、Fast Track Soloがパソコンに必ず接続されている必要があるので、そこだけは注意してほしい。

Pro Tools Express全景
トップスタジオで使用されているものと同じ業界標準のツールで音楽制作を始められる。24-bit/48 kHzの解像度で、最大16のステレオ・オーディオ・トラックを録音可能となっている

iLokキー
Pro Tools Expressの起動に必要な「iLokキー」(実売5000円相当)も付属し、お得感あり。サードパーティー製プラグインのライセンス管理にも利用できる音楽クリエイター必携のドングル

ダウンロードしたPro Tools Expressをインストールし、ソフトを起動すると、「クイックスタート画面」が現れる。Pro Tools Expressには、あらかじめ、作曲や録音の手助けとなるテンプレートが多数収録されており、好みや目的に合わせて選択することで効率的良く作業を進めることができるのが便利。今回は、15秒程度の短い映像に音楽をつけるといったシーンを想定した操作を行うので、Musicカテゴリから「POP」を選択してみた。

クイックスタート
Pro Tools Expressの起動時などに表示される「クイックスタート画面」。もちろん、自分で設定した状態をオリジナルテンプレートとして保存して活用することもできる

POPテンプレートを開くと、自動的に基本となるドラムループが入力済みのトラックが作成された状態のセッションが表示される。また、他のトラックにも、あらかじめバーチャルインストゥルメントやプラグインエフェクトが挿入されており、すぐギターやMIDIキーボードなどによる演奏の録音や編集作業に取り掛かれる状態となっている。

Pro Tools Expressでは、ビデオトラックがサポートされているので、まず音付けを行いたいビデオファイルを読み込んでおこう。読み込まれたビデオは、プロジェクトウィンドウ内に、タイムラインに従いサムネイル表示されると共に、ビデオウィンドウでの再生が行われるため、ムービー用オーディオを作成しながら、常に映像をリアルタイムで確認できる。ビデオ読み込みの際に、ビデオからオーディオも同時に取り込んでおくと、臨場感のあるサウンドトラックを作成したいときなどに役立つだろう。

ビデオの読み込み
ファイルメニューにある「インポート」から「ビデオ」を選択し、ビデオファイルをPro Tools Expressに読み込む。ビデオウィンドウの表示は50%、100%、200%、全体表示の4つから選べる

ビデオファイルの読み込みなどの準備が整ったら、Pro Tools Expressに搭載されたバーチャルインストゥルメントを使いベース/シンセパッド/パーカッションなどサウンドの核となるフレーズを入力していく。シンプルなパターンシーケンサーを搭載し幅広いエレクトロサウンドを楽しめるバーチャルドラムマシン「Boom」、多彩なサウンドを持つサンプルプレイヤー「Structure Free」、バーチャルワークステーションシンセサイザー「Xpand2」など、3つのバーチャルインストゥルメントが無料で付属し、幅広いサウンド・メイキングを楽しめる。MIDIキーボードなどによるリアルタイム入力だけでなく、楽器演奏が苦手なユーザーはピアノロール画面から1音1音マウスクリックで入力するステップ入力も可能なので、その点は安心してほしい。

3種のバーチャルインストゥルメント
3種のバーチャルインストゥルメント「Avid Virtual Instruments Express」シリーズを付属している。Pro Tools Expressと同様にWEBサイトより無料ダウンロードが可能

ピアノロールによる入力画面
GarageBandなど他の音楽制作ソフトでもお馴染みのピアノロールによる入力にも対応。マウス操作だけで音符を入力でき、音楽知識や演奏経験のない人にもオススメの入力法だ

次に、バーチャルインストゥルメントによるパートの録音が完了したら、さらにサンプルフレーズやサンプルループなどを使って、アレンジの肉付けやアクセントを加えていく。外部のサンプルファイルを、Pro Tools Expressへの読み込みは、ファイルメニューにある「インポート」機能のほか、ドラッグ&ドロップによっても行える。

使いたいサンプルファイルは、必ずしも製作中のテンポやキーに合致していないことも多々あるが、そんな時に役立つのが、タイミングやピッチの問題を簡単に修正できる「エラスティックタイム 」および「エラスティックピッチ」機能だ。今回の楽曲制作においては、途中でテンポを遅くなるよう変更(BPM120 --> 88)に変更した際にも、ピッチを変えずにテンポの変更ができ大変重宝した。また、エラスティック・ピッチは、音質を極力損なわずボーカルなどの音程修正を行いたい場合などにも有用なので、ぜひ皆さんもお試しいただきたい。

エラスティックオーディオ設定
各トラックのエラスティックオーディオの設定を有効にするだけで、オーディオファイルのタイミングやピッチを自由操作可能。特徴の異なるPolyphonic/Monophonic/Rhythmic/Varispeedなど4つのモードが用意されている

こうして制作した楽曲は最終的に、ファイルメニューにある「バウンス」から「ディスク」または「QuickTimeムービー」を選ぶことで、ローカルディスクに2ミックスファイルを保存したり、サウンドを付加したムービーとして保存が行える。バウンスされたオーディオファイルは、セッション内に自動的にインポート、iTunesライブラリへ自動的に追加できるのも便利だ。さらに、「Sound Cloud」や「Gobbler」といったウェブサービスとの連携も可能となっているので、友人や知人との楽曲の共有、バンドメンバーとのセッションなどの際にも大いに活躍してくれそうだ。

バウンス設定画面
「バウンス」の設定画面では、保存の際のファイルタイプやフォーマット、サンプルレート、ビットデプスなどを選択可能。オーディオCDを作成したい場合は、「16ビット/44.1kHZ」の設定でバウンスし、CD制作ソフトでオーディオCD化すればOKだ

さて、ここまでご覧いただいたPro Tools Expressによる楽曲制作の様子はいかがだっただろうか。「Fast Track Solo」は、Win/Mac/iOSといった幅広いプラットフォームに対応したコンパクトなオーディオインタフェースに加え、業界標準ともいえるPro Toolsやプラグインなどのオペレーションを初心者の段階から体験し身につけられる「Pro Tools Express」を収録した非常にお買い得感のある製品となっている。

また、音楽制作に必要なハードウェア&ソフトウェアがワンパッケージとなっており、初期導入のコストを抑えられるのは初心者にも優しい! これから、パソコンやiPhone/iPadを使って本格的音楽作りを楽しみたいと考えているユーザーの皆さんは、「Fast Track Solo」を使って音楽制作にぜひ気軽にチャレンジしてみてほしい。