スマートフォンメーカー大手の台湾HTCから人材流出が続いていると話題になっている。さらにFacebookとコラボした「HTC First」が壊滅的な状況にあると噂されており、これが従業員の士気を大幅に下げているという。最終的には同社CEOのPeter Chou氏の進退問題にまで言及されつつあり、今年から来年にかけて、同社にとって試練の時期となりそうだ。

同件はThe Vergeが報じている。同誌では、一部で噂の出ていたHTC CPO (Chief Product Office)の小寺康司氏が先週になり同社を離れていたことを報告している。またThe Vergeによれば、著名どころとしてグローバルコミュニケーション担当VPのJason Gordon氏、グローバルリテール担当マーケティングマネージャのRebecca Rowland氏、デジタルマーケティングディレクターのJohn Starkweather氏、製品戦略担当マネージャのEric Lin氏がそれぞれ同社を最近になり離れたという。なお、Starkweather氏はAT&T、Lin氏とRowland氏はMicrosoftへと移ったことが報告されている。タイミングは偶然の可能性があるものの、マーケティングに関わる主要人員が一気にいなくなったこともあり、同社は米ワシントン州シアトルに拠点を置く米国オフィスの機能の一部を台湾本社へと戻し、昨年2012年末に携帯キャリアのFarEasToneからHTCに移籍してきたCMOのBen Ho氏の管轄に据える方針を立てているという。

また人材問題と合わせ、HTCの悩みの種となっているのが先月Facebookと共同発表を行った「HTC First」だという。Facebookは発表同日にAndroidスマートフォンにFacebook機能を利用するための専用メニューを出現させる「Facebook Home」アプリの提供を表明しているが、当初の計画では同アプリの提供が少し遅くなる代わりに、アプリを最初からインストールしたFirstの一般提供が開始され、HTCに一種の独占提供状態を作り出す計画だった。ところが実際にはFacebook HomeアプリはFirst発売と同週にGoogle Play Storeでのダウンロードが提供されてしまい、Firstは発売わずか2週間程度で2年契約つき99ドルの販売価格から一気に99セントまで値下がりし、叩き売り状態となってしまった。Facebook Homeアプリ自体はまだまだ対応機種も限られており制限事項が多いものの、この壊滅的な状況を受けてHTCの関係者は一様にショックを受けたようだ。

現在、HTCは「HTC One」を主軸に2013年の商戦を乗り切ろうと力を入れているが、HTC Oneもまたリリース直後にはカメラ部材の調達問題から供給が需要に追いつかず、販売タイミングを逃すという失策を犯している。HTC創業者兼CEOのChou氏は文字通りHTC Oneに会社の命運を託しており、これについて自身の進退問題にも言及していたという。最大の商戦期となる今秋以降の動向をどう乗り切るのか、Chou氏とHTCの今後も含めて大きく注目を集めることになる。