昨今、モバイルバッテリーが住宅や公共交通機関などで発火する事故が相次いでいます。その問題を受け、航空機への持ち込み制限や使用制限も始まりました。モバイルバッテリーの安全性や品質が広く意識されるようになり、「安さで選ぶのではなく信頼できるメーカーの製品を吟味して選ぼう」という考えが徐々に広まりつつあります。

アウトドアや防災でニーズの高まるポータブル電源も例外ではありません。容量や出力が大きいだけに、万が一事故が発生した際の影響はモバイルバッテリーの比ではありません。価格の高さもあり、製品選びはモバイルバッテリーよりもシビアに吟味される傾向にあります。

そのようなポータブル電源業界で、第一に安全性を重視してきたと語るのが、ポータブル電源を専門に手がける中国Jackery(ジャクリ)。品質管理を徹底するため、製品の製造は他社に委託せず、自社工場を構えて製造しています。さらに、安全性を検証するための実験施設も自前で用意し、経年の使用で不具合が発生しないか、過酷な使用状況でも耐久性は問題ないか、などを厳しく検証していました。(取材協力:Jackery)

  • オレンジのイメージカラーで広く知られるJackery。効率よりも安全性を重視しているという取り組みを中国・深センで取材した

    オレンジのイメージカラーで広く知られるJackery。効率よりも安全性を重視しているという取り組みを中国・深センで取材した

中国・深センに拠点を構えるJackery

2012年に創業したJackeryですが、日本市場には2019年に参入。ラインナップの拡充やサポート体制の構築を早くから進めたこともあり、Jackeryによると日本では7年連続でシェアナンバーワンを獲得しているといいます。実際、オレンジのイメージカラーが浸透し、日本ではポタ電=Jackeryの印象を持つ人が少なくありません。

Jackeryの拠点は、さまざまなテック企業が拠点を構え「中国のシリコンバレー」とも呼ばれる中国深セン。街を歩けばEVや自動運転タクシーがバンバン走り、ホテル内はフードデリバリーのロボットがエレベーターを駆使して部屋までやってくるなど、まさにハイテクシティです。そんな深センに、本社と自社工場、安全テスト施設を設けています。

  • Jackery本社が入居する深センのオフィスビル。手狭になってきたため、自社ビルを建設して移転する計画もあるそう

    Jackery本社が入居する深センのオフィスビル。手狭になってきたため、自社ビルを建設して移転する計画もあるそう

自社工場を構え、人間の手により組み立て&検査を実施

工場はJackeryの自社工場で、ここですべてのポータブル電源やソーラーパネルを生産しています。わざわざ自社工場を保有するのは「品質ファースト」という理念に基づき、安全性と品質を担保するためとしています。

交代制で24時間稼働している工場内には作業員がズラリと並び、AC出力端子などが異なる各国向けのポータブル電源を組み立てていました。最終的に、人の手による動作チェックや人の目による目視検査も実施し、機械によるテストだけでは判断しにくい細かな問題も見逃さない体制を整えているといいます。

  • 自社工場では、人の手によってポータブル電源の組み立てが行われていた

    自社工場では、人の手によってポータブル電源の組み立てが行われていた

  • 組み立て中のポータブル電源。バッテリーセルなど内部構造がよく分かる

    組み立て中のポータブル電源。バッテリーセルなど内部構造がよく分かる

  • 人気のサンドゴールドカラーのフロントパネル。AC100V出力の形状からすると、日本向けモデルと思われる

    人気のサンドゴールドカラーのフロントパネル。AC100V出力の形状からすると、日本向けモデルと思われる

Jackeryの担当者は「他社は効率やスピードを重視しているが、Jackeryは品質に妥協しないことを第一に考えており、外部への製造委託はせず自社工場で製造している。製品の品質に厳しい目を持つ日本で7年連続シェアナンバーワンを獲得できた背景には、品質の高さや信頼性が評価されたからだと思っている」と語ります。

安全性を検証する実験施設を工場とは別に用意

特筆できるのが、製品の安全性を検証するための実験施設「Jackery自社実験室」を、工場とは別の場所に設置していること。ここでは、実際の利用状況を想定しつつ、ポータブル電源やソーラーパネルに多角的なテストを実施し、正常に動作するかや破損しないか、保護機能が正常に働くかなどの安全性を検証。テスト項目は、ポータブル電源で553項目、ソーラーパネルは87項目にものぼり、業界の標準よりも厳しい基準を設定しているといいます。

  • 工場とは別の場所に構える実験施設「Jackery自社実験室」

    工場とは別の場所に構える実験施設「Jackery自社実験室」

  • この広いフロア全体で、さまざまな実験が行われている

    この広いフロア全体で、さまざまな実験が行われている

広いフロアにさまざまな実験装置が並ぶなか、特に目を引いたのが長年使い込んだ状態を想定して安全性を検証するエイジング試験。高い温度や湿度、圧力の状況にポータブル電源を入れ、経年の状況を再現する試験です。

  • エイジング試験の装置。100度超という高温の状態にポータブル電源を入れ、劣化や不具合を検証する

    エイジング試験の装置。100度超という高温の状態にポータブル電源を入れ、劣化や不具合を検証する

ほかには、ホイール付きのポータブル電源をガタガタ道で転がした状況を再現する試験や、ソーラーパネルを繰り返し折りたたむ試験、ポートからコネクターを抜き差しする試験、ボタンを連続で押す試験など、さまざまな試験を一定時間ぶっ通しで実施していました。

  • ホイール付きの大型モデルの走行テスト。ルームランナーのような地面には段差も用意されており、大きな音を立てていた

    ホイール付きの大型モデルの走行テスト。ルームランナーのような地面には段差も用意されており、大きな音を立てていた

  • こちらはソーラーパネルの折りたたみテスト。伸縮が何度も繰り返されていた

    こちらはソーラーパネルの折りたたみテスト。伸縮が何度も繰り返されていた

  • こちらは水を高圧で吹き付ける防水試験装置。テストされているのは、防水構造の海外向けモデルとのこと

    こちらは水を高圧で吹き付ける防水試験装置。テストされているのは、防水構造の海外向けモデルとのこと

品質の高さでJackery製品を選んでもらえるよう取り組みを続ける

災害大国の日本では防災用のツールとしてポータブル電源の注目が年々高まっているものの、「1年に1回使うかどうか分からないものに何万円も出せない」とまだ普及途上の状況だそう。Jackeryによると、2025年時点の普及率(購入経験)は約14%にとどまるといいます。さらに、諸外国と比べて日本の住宅スペースは限られているため、「置く場所がない」「使うたびに動かすには重すぎる」というサイズにまつわる問題もハードルになっています。

Jackeryの担当者は「サプライチェーンの整備や企業努力でコストダウンを進めており、一般消費者が求めやすい手ごろな価格で製品を提供できるよう努力している。本体の小型軽量化も進めているので、品質の高さでJackery製品を選んでもらえるよう、取り組みを続けていく」と語ります。

  • 中国ではJackeryのブランドは「電小二」と漢字で表記されている

    中国ではJackeryのブランドは「電小二」と漢字で表記されている

  • 全体をブランドカラーのオレンジで塗装したモデル。実際に販売しているわけではなく、試しに作ったそう。とにかく目立つ!

    全体をブランドカラーのオレンジで塗装したモデル。実際に販売しているわけではなく、試しに作ったそう。とにかく目立つ!

  • スケルトンボディのモデルも発見。ぜひ販売してほしいが、素材が異なるため通常モデルとは耐久性や安全性に差があり、販売できる水準には至っていないという

    スケルトンボディのモデルも発見。ぜひ販売してほしいが、素材が異なるため通常モデルとは耐久性や安全性に差があり、販売できる水準には至っていないという

現在、Jackeryはモバイルバッテリー市場には参入していません。ですが、航空機への持ち込みが厳格化するなど品質を重視する流れができていることを踏まえ、「Jackeryの技術や生産体制を用いれば、モバイルバッテリーでも品質面での優位性を確保できると感じる。Jackeryの強みを活かせるチャンスでもあり、参入する価値はあると考えている」と語ります。

  • 自走して太陽を追いかけるポータブル電源も発見。試作品で、これ1台しか存在しないという

    自走して太陽を追いかけるポータブル電源も発見。試作品で、これ1台しか存在しないという

  • もっとも効率よく太陽光が当たる場所に行き、内部のバッテリーに充電する機能を持っている

    もっとも効率よく太陽光が当たる場所に行き、内部のバッテリーに充電する機能を持っている

  • 側面パネルを開くと、おなじみのポータブル電源のパネルが顔を出す

    側面パネルを開くと、おなじみのポータブル電源のパネルが顔を出す