前書きが長くなったが、ということでこのResonant Clock Meshの効果は如何に? ということで実際にデータを見てみたいと思う。
前回の記事では、実効消費電力および、実効消費電力差を取得してご紹介したが、今回はこの中でSandraのDhrystoneとWhetstoneの実効消費電力のみに着目して計測を行った。
測定条件であるが、Turbo Coreは無効化した上で、
(A) コア数は8コアに固定したまま、動作周波数を変えて実効消費電力差の変化を見る。
(B) 動作周波数は固定(FX-8150は3.6GHz、FX-8350は4GHz)したまま、コア数を可変して実効消費電力差の変化を見る。
の2つを実施してみた。
さて、まず(A)である。グラフ86がFX-8150の、グラフ87がFX-8350のそれぞれのSandraの実施中の実効消費電力差である。ちなみに絶対的な実効消費電力であるが、待機時の実効消費電力はFX-8150が動作周波数に無関係に96W、FX-8350は同じく94Wで一定だったので、この数字を足せば全体としての実効消費電力になる。
さて、この2つのグラフから、それぞれDhrystoneとWhetstoneを実施中の平均実効消費電力差を取って、動作周波数との関係をプロットしたのがグラフ88(Dhrystone)とグラフ89(Whetstone)である。
意外、というかグラフの傾きそのもので言えば、FX-8350の方がDhrystone/Whetstone共に大きい。破線で示した近似値で言えば、
Dhrystone | Whetstone | |||
---|---|---|---|---|
傾き | Y軸切片 | 傾き | Y軸切片 | |
(W/GHz) | (W) | (W/GHz) | (W) | |
FX-8150 | 20.689 | 22.281 | 18.067 | 22.533 |
FX-8350 | 21.365 | 17.671 | 19.733 | 15.667 |
といった値になっており、動作周波数が上がると消費電力が増える具合にはさして違いがない。ただY軸切片が5~7Wほど下がっており、これが全体として消費電力が下がって見える理由、ということになる。
もう一つ、今度は最高動作周波数に固定した状態でのコア数による変動も見てみよう。グラフ90がFX-8150の、グラフ91がFX-8350のそれぞれの結果である。ちなみにこちらも電力差であって、待機時の実効消費電力の絶対値はやはりFX-8150が96W、FX-8350が94W(コア数に無関係)であった。
ちなみにグラフを見ていただくと判るとおり、コア数可変といいながら実際にはModule単位での可変になっているのだが、これはマザーボードのBIOSがModule単位での可変にしか対応していないためである(Photo09)。
というわけで、やはりDhrystoneとWhetstoneについて、それぞれ平均値を取った上でコア数別にプロットしたのがグラフ92(Dhrystone)とグラフ93(Whetstone)である。やはりというか、傾きそのもので言うとFX-8350の方が高いという結果がここでも再現されたことになる。ただこちらについて書いておけば、FX-8350とFX-8150では動作周波数が異なる環境での比較なので、同一周波数ならばFX-8150の方が高い実効消費電力差になるのだが、それはともかくとしてグラフの傾きはやはりFX-8350の方が高いという結果になった。
近似値のデータは、
Dhrystone | Whetstone | |||
---|---|---|---|---|
傾き | Y軸切片 | 傾き | Y軸切片 | |
(W/2core) | (W) | (W/2core) | (W) | |
FX-8150 | 20.29 | 21.20 | 17.51 | 21.85 |
FX-8350 | 23.31 | 10.95 | 21.34 | 10.50 |
といったあたりである。前編の最後で、考察として「FX-8350の、絶対的な消費電力そのものはFX-8150と大きく変わらない。ただ動作周波数と性能が上がっているにもかかわらず消費電力は変わらないということは、性能/消費電力比は改善していることが推察される。」と説明したが、これは厳密にはあまり正しくなく、「性能/消費電力比は大きくは変わらない。ただしResonant Clock Meshの効果のためか、ベースとなる消費電力が下がっており、これが効果的に作用してより高い周波数まで引き上げやすくなっている」というのが正解なようだ。
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