次世代の照明技術や照明デザインの展示会「ライティングジャパン」が、1月16日より東京ビッグサイトで開催されている。期間は1月18日まで。

国内で行われる照明関連の大規模な展示会は、このライティングジャパンのほかに、日本照明器具工業会と日本経済新聞社が主催するライティングフェア(2013年は3月5日~8日に開催)がある。ライティングジャパンは、技術や製造機器などの展示の比率が高く、一方のライティングフェアのほうは、ライティングジャパンに比べると照明機器自体の展示の比率が高い。

ライティングジャパンの会場は「次世代照明技術展」「LED/有機EL照明展」「東京デザイン照明展」の3ブロックに分けられている。「次世代照明技術展」「LED/有機EL照明展」に関しては、従来より行われていたが、「東京デザイン照明展」は、今回が初。各社のデザイン性の高い照明器具が展示されている。また、既に製品化されているモデル、試作モデルの展示を行う東京デザイン照明展に加えて、デザイン照明のプロトタイプのみを出品する「PROTO LIGHTNING」も特別開催されている。

次世代照明の本命は有機EL?

次世代照明の本命と目される有機EL照明

普及期を迎えたLED照明に対して、照明の次世代デバイスとして注目されているのが、有機ELだ。今回のライティングジャパンでも多くのブースで、有機ELパネルや有機EL照明照明の展示が行われていた。

有機ELは、LEDを光源とする照明と比べて、面発光、高演色性、薄型でフレキシブルといったメリットを持っている。

面発光とは、平たくいえばパネル全体が発光するということ。LED照明の場合、カバーを外すタイプ、あるいは透明のカバーが採用されているタイプの照明器具の場合、LEDチップの部分だけが発光し、それ以外の部分は光っていないことが確認できる。これにより起こるのが多重影だ。LED照明で照らされた環境では、複数のLEDチップからの光により物体の影がいくつも重なって現われる。デスクスタンドなどでは、視認性が低下することになる。もちろん、セードなどにより光を拡散させて減少させることは可能だが、面発光を行う有機ELでは、そもそもこういった工夫を行う必要がない。そしてその分、照明器具のデザイン上での自由度が高くなるのだ。

演色性の高さに関しては、有機ELではRa90以上のものが多く存在している。一方のLED照明でも、高輝度と演色性の両立が進みつつあり、施設向けの高演色タイプなどでは、Ra92といったものも登場しつつある。

薄さとフレキシブル性も、有機ELの大きな特徴だ。結局のところ、これを活かせる照明デザインが、有機EL照明の普及のカギの1つとなるのだろう。

一方、現時点での有機EL照明には、LED照明と比べたときに、デメリットも存在する。寿命とコスト、効率だ。

パナソニック出光OLEDのブースに展示されているタスクライトとデスクライト

有機ELパネル

パナソニック出光OLED照明のブースでは、同社が発売しているタスクライトやデスクライト、有機ELパネルなどを展示している。有機ELパネルは、有機ELを使った照明器具の開発などに使われるもので、サンプル価格で75,000円(3枚)。電源は同社からのレンタルとなる。また、この有機ELパネルを使用した照明器具のサンプルも展示されている。同社が描く、有機EL照明パネルのロードマップは下の表の通りだ。

2011~2012年度 2015年度 2018年度
効率 30lm/W 100lm/W 130lm/W
輝度 3,000cd/m2 5,000cd/m2
寿命 10,000時間 20,000時間 40,000時間
サイズ 97×90mm 300×300mm 600×600mm
特徴 高演色 大型化 フレキシブル・透明

2015年度にLEDと同程度の効率を実現し、2018年度には、現時点での懸念材料となっている寿命も、LEDに追い付くことになる。同社ではこの辺りで、有機EL照明の本格的な普及がスタートすると見込んでいるという。ただし、前述のサンプル出荷価格のように、有機ELは、LEDに比べてコストの面ではまだ不利で、普及には1桁以上の低コスト化が必要としている。

有機ELパネルを使用した照明のサンプル

現状ではLEDも次世代照明

東芝ライテックのブースでは、現在同社が発売している「E-CORE」シリーズのLEDシーリングライト、LED電球、直管LEDなどの一般向け照明を展示すると同時に、青色レーザーダイオードを使ったロケライトや、産業用UVランプ、産業用ハロゲンヒーターなどを展示していた。

「E-CORE」シリーズのLEDシーリングライト、LED電球、直管LED

ロケライトや、産業用UVランプ、産業用ハロゲンヒーターは、照明器具のみを作っているメーカーだと思われがちな同社のイメージを払拭しようとの思いからの展示だという。

一方、展示されていない部分も気になる。東芝ライテックのブースには、有機EL照明に関する展示がいっさい存在しない。同社でも、有機EL照明に関する基礎研究や開発は行っているとのことだが、まだ展示を行う時期ではないという判断だそうだ。

アイリスオーヤマブースでは、施設向け照明のほかに、好調なLEDシーリングライトなど、家庭向け照明器具を展示している。ただし、2012年の年末に行われたエコプロダクツ2012の同社ブースが、LEDシーリングライトが中心の展示だったのに比べると、洋風・和風のLEDペンダントや、ブラケット、スポットライトなどLEDシーリングライト以外の比率が高くなっているのが特徴的だ。

数量ベースで国内シェアトップの、アイリスオーヤマのLEDシーリングライト

同社のLED照明は現在、LEDシーリングライト、LED電球、直管LEDの分野で、数量ベースでの国内シェアトップとなっている。それに伴い、LEDシーリングライト以外の横への広がりも重視したというのが、その理由だ。これらは従来、老舗の照明器具総合メーカーが得意とする分野だったが、こういった分野でも本格的に同社の攻勢が強まるのかもしれない。

洋風/和風のLEDペンダントや、ブラケットも展示

さて、冒頭で述べたようにライティングジャパンは、照明技術や製造機器などの比率が高い展示会だ。そのため、例えば照明器具の大手であるパナソニック本体はブースを出しておらず、もう一方の雄である東芝ライテックも、非常に小さいブースを出展しているに過ぎない。また、日立アプライアンスや三菱電機、NECライティング、シャープといった有力メーカーも出展していない。

有機EL照明はロードマップが示されているものの、あくまでも将来的な技術であり、それよりも、直近のLED照明のほうが力が入るのは当然のことだろう。2012年は、照明に関しては、LEDシーリングライトの年だった。2013年はどのような年になるのだろうか。3月に開催されるライティングフェアの内容が気になるところだ。