以前、大きく話題となったiPhone 4の「アンテナゲート(Antennagate)」問題を記憶しているだろうか? 裸状態の本体を特定のポジションで強く握り込むとアンテナ受信感度が極端に悪化し、通信ができなくなる「デスグリップ(Death Grip)」と呼ばれる現象を引き起こす。Appleではこの問題の存在を認め、問題を修正したバージョンの開発や既存ユーザーへのカバー(バンパー)無料配布を発表している。だがこのたび発表された最新のある調査報告によれば、こうしたアンテナ問題はiPhone 4に限らず、潜在的に多くのスマートフォン型デバイスが抱え込んでいるものだという。

この調査結果を発表したのは英ブリストール大学(University of Bristol) Centre for Communications Research (CCR)教授であるMark Beach氏だ。この調査報告「The Effects of User Grip on Smartphone Antenna Performance and Signal Quality」(閲覧は要登録)は2005年から収集したデータをベースにしており、MIMOなどのマルチアンテナシステムでスマートフォン型デバイスを利用した際のユーザー操作とアンテナ感度の相関関係をまとめたものとなる。それによれば、デバイスを操作あるいは抱え込むユーザーの指が一種の"影"(Phantom)を生み出し、そのポジションしだいでは最大でアンテナ感度を100分の1程度まで悪化させることがあるという。こうした現象を防ぐために、アンテナと指のポジションの位置関係を考慮しつつ、どのように最適化することでアンテナ感度が極端に悪化する現象を防ぐのかを研究したのが今回の論文の主旨となる。

ここで注意するのは、Beach氏の指摘するPhantom現象はiPhone 4で問題となった「指がアンテナと直に接触することで発生する短絡」ではなく、指が特定のポジションをとったときにアンテナの通信を妨害する現象のことだ。アンテナと指の距離はこの場合問題ではなく、いわゆる「本体へのケース装着で指とアンテナと絶縁する」ことは意味を成さないという。MSNBCのインタビューで同氏は「iPhone 4は調査対象ではない」と念押ししつつ、異なる種類の問題であることを強調している。具体的にどういった指のポジションが問題となるかだが、原文では「Thumb(親指)」というキーワードとともにハードウェアキー付きのBlackBerryがイメージ画像として掲載されており、本体を他の指で包み込みつつ、キーを押す親指が一定のポーズを作ったときに同種の現象が発生するのではないかとみられる。スマートフォンというデバイスの性質上、こうしたアンテナ問題は避けがたいというのが調査の示すデータのようだ。