――柴田監督は電通テックでCM監督をなされていたわけですが、最初から「いつかは映画監督になりたい」と考えていたのですか?

柴田「小学生の頃から映画監督になりたいと思っていて、それから今までずっとその考えは変わりませんでした。ですが、自分はいわゆる映像関係の学校に行くというタイプの人間ではなかったので、普通に進学して、大学生の頃に"広告"というものを知り、『なにやらCMには監督がいて、CM監督は映画も撮ってるぞ!』ということを知りまして。CMならすぐに日本全国の人に自分の作品を見てもらえて、面白い、面白くないの判断がつくから、まずはCM監督になって自分の実力をつけるのがいいんじゃないかと思ったんです。その後、映画監督になろうと考えました」

――映画監督になりたいと思った当初から、今回のようなコメディ作品を撮りたかったと。

柴田「そうですね、人を笑わせたいという想いがありましたね。でも、僕は映像の勉強をしたことがないんです。ただ、面白いことや、人がこういう風にしたら面白くなるとか、そういうことは分かるので、なんとか誤魔化しながらCMを制作していたら監督然としてきた(笑)。結局"監督"というのは映像に詳しいわけではないんです。いわゆる演出なんです」

――なるほど。そんな柴田監督が憧れている監督、もしくは目標としている監督はいますか?

柴田「スティーヴン・スピルバーグ監督ですね。凄い監督は数多くいますけど、スピルバーグ監督はずっと売れ続けているという凄さがありますよね。5年に1作品とか、10年に1作品、映画を撮る監督を凄いというのも簡単ですが、やはり売れ続けている凄さという面では、ほかの監督から逸脱していますよね。僕同様、CM監督あがりという意味で考えるとデヴィッド・フィンチャー監督などですかね。日本人のCM監督なら中島哲也さんでしょうか。中島さんはもともと"スーパーCM監督"だったので、今の活躍も納得できます。流行に走らず、映画然とした作品を撮り続けていますから。でもやっぱり一番はスピルバーグ監督ですかね(笑)」

――それでは、最後にこれから映画監督やCM監督になりたい若きクリエイターたちに何かアドバイスをお願いします。

柴田「よくある話かもしれませんが、若いときの取り柄って"若さ"しかないと思うんです。他人から求められて明らかに有利な点は若さ。しかし、その若さの利点に気付くのは歳をとってからだと思うんです。だからこそ、今、僕から言わせていただくと、とにかく歳をとってからでは出来ないことにどんどんチャレンジしてほしいです。僕に関していえば、留学して1年2カ月間アメリカで暮らしたことは、本当にその後の人生を大きく左右する出来事でした。それは若さがあったから実現できたことで、今やりたいと思ってももうやれないんですよ。皆さんそれぞれ自分のなかに何か"今やりたい"と思うことがあるでしょうから、とにかくそれにチャレンジしてみてください。その後のことなんてどうとでもなりますから。逆にそれをやっていればその後の大きな糧になるんじゃないかなと思います」

映画『さらば愛しの大統領』は11月6日より、新宿バルト9ほか全国ロードショー。

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