2社から提供されるもの

Nios IIに対するLinuxサポートの概要は、主にAltera側がハードウェアを、Wind River側がソフトウェアをそれぞれ提供する形となっている。

AlteraとWind Riverの提供内容

具体的には、Alteraからは、Cyclone III FPGA開発キットとして同シリーズで最大のロジックエレメント数(約12万)を持つ「EP3C120」を搭載した「DK-DEV-3C120」の提供および、FPGAのコンフィギュレーションデータ(デザインファイル)などを含んだLinuxハードウェア・レファレンス・デザイン(Quartus IIのプロジェクトファイルなどを含む)が提供される。

Cyclone III FPGA 開発キットの概要

実際の開発キットの画像

なお、このレファレンス・デザインでは、3C120を用いた場合のNIOS IIの動作速度は125MHzで、パフォーマンスはFPGAにより異なるが、おおむね150~300DMIPS程度(Cyclone IIIで190DMIPS程度)となっており、「市販されているほかのプロセッサに比べても幅広いアプリケーションで使えるものと期待している」(同)とする。

一方のWind Riverからは、「Wind River Linuxディストリビューション」(カーネルは2.6.21を搭載)のほか、同社の統合開発環境「Wind River Workbench」のNios II対応版「Wind River Workbench for Nios II」、開発ボードのフラッシュメモリに入れるためのハードウェア/ソフトウェアのデータなどが提供される。

特にWind River Workbench for Nios IIは、GNUツールチェーンやボード・サポート・パッケージ(BSP)の基本部分を搭載しており、アプリケーション開発者にとっての使いやすさと安定性の両立が図られているという。

なお、これらの内、ハードウェア・レファレンス・デザインやLinuxディストリビューションなどは夏ごろをめどに、Nios IIのコミュニティやまとめサイトといった関連サイトでもフリーでダウンロードができるようにしていく予定とのことである。

Nios II+Linuxのメリット

このようなAlteraとWind Riverのパートナーシップについて、堀内氏は「組み込みLinuxでトップクラスのシェアを持つWind Riverと組むことで、カスタマからのフレキシブルなハードウェア上でLinuxを使いたいという要望に対応できるようになった」としており、「強者と強者のパートナーシップ」(同)と表現する。

では、Nios IIと組み込みLinuxの組み合わせで、ユーザー側はどのようなメリットを享受できるのか。Linuxを用いることで、オープンソースの活用やコミュニティで作られたドライバなどの利用といった表面的な利点もあるが、「最大のポイントはFPGAの中にすでにプロセッサが入っているので、Linuxを動作させるのに必要なCPUを外部に用意する必要がなく、基板サイズの縮小やBOM (Bill-Of-Material)のトータルコストを低減することが可能になること」(同)にあるという。

Nios IIとLinuxを組み合わせることで生まれるメリット

また、ソフトコアプロセッサのため、「ユーザーはAlteraの"フル・スペクトラム"なFPGAとHardCopy ASICソリューションポートフォリオが使用できるほか、ハードウェアの修正も可能」(同)であり、かつ「プロセッサ部品の供給中止によるソフトウェア資産が使用不能になるという問題も回避することが可能となる」(同)ことがTime-to-Marketの短縮や開発コストの低減につながるとしている。