Mega Wave Marineの特徴
Mega Wave Marineの最大の特徴は、最大3Mbpsのブロードバンド環境に加え、定額制であるという点だ。月額料金は58,000円。定額制であるため通信料や通信時間を気にすることなく使うことができ、常時接続なのでダイヤルアップの手間もない。ウイルス対策ソフトやOSのアップデートなども問題なく行えてPC環境の安全性も向上するほか、業務に必要なデータの受信などもスムーズに行え、業務効率が向上する。
2つ目の特徴は、船舶の利用形態に応じた2つのプランを用意している点。帯域を共用する「インターネット接続タイプ」と、専用線を使う「イントラネット接続タイプ」の2種類のプランで、ユーザー側は必要に応じて選択することができる。
送受信料金を1/5に抑えたケースも
インターネット接続タイプは、料金にプロバイダ契約も含まれており、必要な機器を船舶に設置すればすぐに利用が可能になる。有料オプションながらメールアドレスの取得も可能で、現在はほとんどのユーザーがこちらを利用しているそうだ。
船舶からの上り回線には既存のDoPaやインマルサットを使い、JSATの送信局を通じてインターネットに接続する。従来はそれに対する下りのデータもDoPa/インマルサットを通じて送られていたが、その代わりにJSATの通信衛星を使うという仕組みになっている。
上り回線に従来の低速・高額な通信網を使うのだが、システム構築をしたNTTワールドエンジニアリングマリン(NTT-WEマリン)電力&海洋BB事業部事業推進担当部長 船舶ITソリューション担当部長の上出靖昭氏によれば、船舶での通信は、上り(送信)2に対して下り(受信)は8という利用比率だったそうで、利用量が増えてもほとんどフラットな利用料金になるという。たとえばDoPaのみの利用とMega Wave Marine+DoPaの利用で比較すると、120MBのデータの送受信では前者は50万円強、後者は10万円強ということで、5分の1程度に減少した。実際に、月の電話代が20~30万円だった会社が10万円以下になった例もあるそうで、確実に通信料を削減できるようだ。
社内LANも組み込めるイントラネット接続タイプ
イントラネット接続タイプでは、上り回線は同様に既存のDoPa/インマルサットを使うが、JSATの送信局からユーザー側が用意した専用回線を通じてインターネットに接続、下りはJSATの通信衛星を使う、というもの。このときの通信速度は1Mbpsのベストエフォートになる。
ユーザーの専用線を使うことで、社内LANに船舶を組み込むことができる、というのが最大のメリットだ。船上にいながらイントラネット環境にシームレスに、しかも高速に接続できるため、社内のファイルを共有化できるとともに、船上からグループウェアなどの社内のアプリケーションも利用できるようになる。たとえば船内に社内通知用のディスプレイを設置、そこに社内からデータを送信して表示する、といったこともできる。
昨今は、船舶に対してもISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)が導入されてきているそうで、これまでは紙ベースの書類を船に持ち込んでいたが、会社のサーバに保存しておけば、必要なものを必要な時だけアクセスして利用することが可能になる。
災害発生時は基地局としても
3つ目の特徴としては上出氏は「耐災害性」を上げる。Mega Wave Marineでは専用線と通信衛星を組み合わせたサービスのため、通常の陸上の通信よりも「災害に強い」(上出氏)。地震で固定電話網や携帯電話網が通信規制の対象となっても衛星通信は規制の対象にならないため、災害発生時でもスムーズに回線が確保できるのだという。このことから、上出氏は「地方自治体が所有する船に搭載すれば、災害時の基地としても使えるのではないか」としている。
4つ目の特徴は、機器の構造が簡単で小型軽量であり、電源があればどこでも使用可能という汎用性だ。船舶への設置も簡単だが、さらに陸上でも車両に搭載して使うことも可能だという。
高速・定額制の通信環境の導入により、船上ではこれまでFAXなどに頼っていた情報収集をネット経由で行えるようになる。たとえば水路通報や気象情報、天気図、補正図、海上保安庁による灯台の気象情報などが簡単に得られる。FAXとは異なり、リアルタイムでより細かい情報を、しかもカラーで得られるようになるわけだ。