乗客向けのネット接続サービス
このような特徴を備えたMega Wave Marineは、船舶のIT化の強い味方となるようだ。同サービスを最初に導入したのは商船三井。従来、船舶内で乗客へインターネット接続サービスを提供するためには、通信速度とコストが最大の問題だったが、Mega Wave Marineを導入したことでこれが解決できるようになった。
![]() |
![]() |
操舵室に設置されたPC。右側のノートPCは比較用に上下ともDoPaを使ったもの。左のPCが普段利用しているPCで、Mega Wave Marineを利用したもの |
同じページを開いたところ。左側の方は読み込み終了しているが、ノートPCはまだ読み込んでいる |
また、これまでは船ごと、PCごとのパケット課金ができず、誰がどれだけ通信を利用したのか分からなかったのだが、ここの船、PCごとにパケット量を測定できる機器を開発したことで、この問題も解消した。
![]() |
操舵室の奥に設置されたMega Wave Marine用の機器。「アンテナコントロールユニット」と「SAT1/Lite」だけでサービスは利用できる。下段にある青い機器はPCのパケット通信料を管理する装置 |
この結果、商船三井では船舶内に乗客が利用できるPCを設置、インターネット接続サービスを提供できるようになった。
たとえば、さんふらわあ ふらのではエントランスに3台のPCを設置。100円玉を投入することで規定パケット量・規定時間内であれば自由にWebサイトを閲覧できるようにした。商船三井では、データの送信量だけに課金する仕組みで、トラブルが発生した場合にはPCを再起動するだけで復旧するようにしたほか、持ち込みPCをネットワークに接続できないようにするなど、乗組員の負担を極力減らした。なお、さんふらわあ ふらの内は、船内の内線電話を利用したVDSLを利用しているそうだ。また、船内の業務用回線と乗客用の回線は分離させているという。
船上ブロードバンドを体験してみる
実際の利用では、最初に基本利用料として500円(100円×5枚)を投入し、3,000パケットまたは25分間利用でき、その後100円ごとに600パケットか5分間が加算される。
定額の受信ではなく従量課金の送信側だけに課金する仕組みのため、思ったよりも長い間利用できる、というのが使ってみての感想。ただ、陸上のブロードバンド環境と同じ意識で利用するとちょっと厳しいと感じるかもしれない。
まだMega Wave Marineを利用している船舶が少ないため、実行速度は2.6~2.7Mbpsは出ているというのだが、リンククリックなどのリクエストに対する反応は機敏とはいえず、「待たされ感」はある。取材中は3台のPCで同時にアクセスしようとしたせいもあったかもしれないが、いずれにしてもYouTubeのような動画の視聴は難しそうだ。
ただし、1台のPCだけで利用した場合は比較的反応も良く、サイトによってはサクサクと閲覧できた。陸上と同じ気分で利用すると不満を感じるかもしれないが、大洗・苫小牧間の20時間の船旅の間、ネットが使えれば現地の気候や目的地の最新情報、Webメールのチェックなどができて、暇つぶしと情報収集ができるのは便利。写真の投稿は難しいが、ブログやmixiの更新だってできる。
実際、若い乗客がよく使っているようで、時間つぶしや旅行情報の収集に使っている例が多いそうだ。
乗組員向けには、船長室、事務室、フロント、機関室にPCを設置。商船三井では北海道航路の4隻全隻に乗客向けも含めてPCが導入している。なお、客室ではスイートルームにのみ回線だけは導入済みで、PCさえ設置すればネット環境が構築できるという。PCの導入は今後検討していくそうだ。