まとめ

もともとOpenGL ESの規格策定と普及促進のために発足したKhronosグループだが、「組み込み機器向けAPI」という当初の枠組みを超えて、PC、ワークステーション、ゲーム機までをもターゲットに据えた、最大級のオープンプラットフォームAPI規格策定団体となってきた感がある。

Windowsから縁遠い電子機器業界としては、マイクロソフトDirectX的なマルチメディアコンポーネントスイートのAPIの登場を待ち望んでいただけに、特に「OpenKODE」の台頭はかなり期待されているようだ。今後はOpenGL系だけでなく、OpenKODEの動向にも注目していく必要があるだろう。

また、OpenKODE CoreやWindowingシステムをうまく駆使していけば、基本的なOS的なものも構築していけそうであり、うまくエコシステムを回していけば、OpenKODEを中核にしたアプリケーション・プラットフォームも構築できるようになるかもしれない。

これとは裏腹に、残念な部分もある。

それは、今年、DirectX 10/SM4.0と対等なOpenGL(Mount Evans)を登場させられなかった点だ。

DirectX 10/SM4.0は現時点では、Windows Vista専用のサブシステムであり、Windows XPからは利用できない。さらにいえばマイクロソフトはWindows XP環境以前へのDirectX 10/SM4.0提供を予定していない。

現在、NVIDIAもATIもDirectX 10/SM4.0世代のGPUを提供しているものの、これをフルスペックで活用できるのはWindows Vistaユーザーだけなのだ。未だ多くのユーザーがWindows XP環境に踏みとどまっており、新OpenGL(Mount Evans)はこうしたユーザーにDirectX 10/SM4.0フィーチャーを活用出来るようにするための救世主として期待されていたのだ。新OpenGL(Mount Evans)の登場は来年以降となり、もちろんその間にWindows Vistaの普及は進むことになる。そうすれば、新OpenGL(Mount Evans)の価値は今よりも下がってくると言わざるを得ない。それだけにやはり今年のタイミングで登場してきて欲しかったように思う。

とはいえ、非Windows系ワークステーションやMacユーザーにとっては、来年以降になっても期待の星であり続けることは間違いない。とにかく早期の登場を期待したいところだ。

(トライゼット西川善司)