ベクターグラフィックス向けAPI「OpenVG」は1.1の規格策定が進行中

業界初のベクターグラフィックス向けのAPIとして、2005年に発表された「OpenVG 1.0」は、現在、製品への活用にむけて各メーカーが奮闘しているという状況だ。

OpenVGはOpenGLほどは有名ではないので、念のためにもうちょっと詳しく説明しておこう。まず、ベクターグラフィックスとは、2Dグラフィックスの一種だが、ピクセルではなく、画像を線分の向きや色の塗り方などのパラメータで記録した形式のグラフィックスになる。例を挙げるとすれば、SVG(Scalable Vector Graphics)やAdobeのFLASHなどがベクターグラフィックスの代表格になる。曲線などをベジェ曲線などのような関数に従って描くので、拡大しようが縮小しようが最適な解像度で描画結果が得られるという特徴がある。また、情報が圧縮しやすくコンパクトに記録しやすいというメリットもある。

OpenVGは業界初のベクターグラフィックスのアクセラレーションをにらんだAPI

OpenVGのレンダリングパイプライン。ベクトルデータを展開してそれをピクセルに分解し、後から色を付けるという流れは3Dグラフィックスのパイプラインによく似ている

携帯電話、PDA、カーナビのような組み込み機器では、文字や図形などの情報をベクターグラフィックスで高品位に描きたいという要求があり、Khronosでは、このAPIの標準規格整備を行ったというのが経緯になる。なお、OpenVGのVGはVector Graphicsの意味がある。

誤解されがちなのであえて説明しておくと、OpenVGはベクターグラフィックスを実現するためのAPIなので、SVGやFLASHと競合するものではなく、むしろ逆で「SVGやFLASHを携帯機器で実現するためにOpenVGを活用する」というイメージだ。

現在、Khronosでは「OpenVG 1.1」の最終仕様を2007年内に策定完了する予定で、順調にいけば2008年夏には「OpenVG 1.1」が発表されるはずだ。1.1では新機能が追加されるというよりも、より効果的にアクセラレーションを引き出せるようなAPIの充実化が図られるようだ。OpenVG 1.0の実用化が始まったばかりなので、Khronosとしてはあまり積極的にバージョンアップを行っていこうという意志はあまりないように思われる。

ベクターグラフィックスは文字、図形の表示には重要

OpenVGのロードマップ。来年、順調に行けばOpenVG 1.1が発表される予定