総務省の「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」が今年6月に公表した「情報通信法(仮称)」の中間取りまとめ案に対するパブリックコメント(意見募集)の結果が10日、発表された。コンテンツ規制やメディアの分類法などについて、事業者・団体から54件、個人から222件の計276件にも上る意見が寄せられ、同法に対する関心の高さをうかがわせた。また、主要関係事業者・団体などからの第1回公開ヒアリングも行われ、日本経済団体連合会と日本新聞協会が自らの立場を明らかにした。

レイヤー型法体系で、放送・通信両事業者の意見分かれる

パブリックコメントは、中間取りまとめ案公表翌日の6月20日から7月20日までの1カ月間、募集された。意見を寄せたのは、通信事業者・団体11件、放送関係事業者・団体29件、新聞関係事業者3件、その他の事業者・団体11件、個人222件の計276件。今回開かれた「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」の第13回会合では、これらの意見について、レイヤー(層)型法体系への転換の是非などの現状認識、コンテンツに関する法体系のあり方、プラットフォームに関する法体系のあり方といった項目別に集約し、事業者・団体については意見提出者の名称を明記、個人については匿名で公表した。

現在縦割りとなっている放送・通信に関する法律群を、「コンテンツ」「プラットフォーム」「伝送インフラ」に組み替えるレイヤー型法体系への転換の是非については、イーアクセスやKDDI、ジュピターテレコム、スカイパーフェクト・コミュニケーションズなどが賛成した。

一方、テレビ朝日、日本テレビ放送網、フジテレビジョンなどの基幹放送事業者は、「現状ではレイヤー型の法体系の必要性が認められない、またはレイヤー型の法体系に反対」と反対意見を寄せた。

この結果、レイヤー型法体系への転換については、「通信関連事業者と放送関連事業者で立場が大きく異なる」(総務省情報通信政策局 通信・放送法制企画室の内藤茂雄室長)ことが明らかになった。ただ、賛成意見を示したイーアクセスやKDDIも「法体系の見直しの検討は、原則として規制を緩和し、必要最小限の規制とするべき」との意見も寄せ、あくまで規制緩和が前提との立場をとっている。

日本経団連などはコンテンツ規制に反対

さらに大きな論争の的となったのが、「コンテンツに関する法体系のあり方」に関する部分。中間取りまとめ案では、現在の地上波放送をほぼそのまま残す「特別メディアサービス」、それに類するCS放送やケーブルテレビなどの「一般メディアサービス」、ホームページなど公然性を有するその他の通信コンテンツである「公然通信」に分けるとしており、特別・一般メディアサービスと公然通信の境目については、「"同時同報性"と"公共性"を基準として判断する」(内藤室長)としている。

こうしたコンテンツに関する新しい法体系についてパブリックコメントでは、「コンテンツ規律に関する法体系の統合・再構成に基本的に賛成」(KDDI)、「社会的機能および社会的影響力に重点を置いて、技術中立的にコンテンツ規律体系を一元的に再構築することに賛成」(スカイパーフェクト・コミュニケーションズ)など、基本的な考え方については一定の賛成意見が示された。

これに対し、日本経済団体連合会(日本経団連)やテレビ朝日、フジテレビジョン、日本放送協会(NHK)、日本新聞協会などは「コンテンツは原則自由であるべきであり、自主的な取り組みによる対応を基本とすべき」と反対の姿勢を明確にしている。

メディアサービス規律の再構成については、「特別メディアサービスと一般メディアサービスを区分する社会的機能と影響力の定義を明確にする必要があり、視聴者数や自主コンテンツ制作能力を基準とするなど今後とも詳細な検討が必要」(伊藤忠商事)とするなど、そのあいまいさを指摘する声が多く見られた。

また、公然通信については、基本的な考え方の部分において、日本経団連や宇宙通信が、「公然通信の対象範囲を明確にすべき」との意見を述べ、そのあいまいさを指摘。ヤフーも「公然通信の対象に、限られた範囲内で行われる情報通信まで含まれるのか否か、含まれるとしたらその範囲はどこまでなのか、を明確にすべき」との意見を寄せている。さらに、コンテンツ規律に関する法体系の再構成自体については賛意を表したKDDIも、「インターネットコンテンツ全体に規制をかけることは不適切。言論・表現の自由が脅かされる」とし、日本経団連や日本民間放送連盟などと同様に、コンテンツ全体への規制に関して「ノー」の意思を表示している。