金融機関の窓販チャネルを利用したビジネスで高い実績を持つニッセイ・ウェルス生命保険株式会社(以下、ニッセイ・ウェルス生命)では、中期経営計画における IT 領域の取り組みとして「持続的・安定的な発展のための IT 環境整備」に着手。既存システムが内包する課題の解決と事業戦略を支える最適化された新たなインフラ基盤の構築を目指し、クラウド移行プロジェクトを立ち上げます。将来的なクラウドへのリフト&シフトを見据えた足がかりとして同社のシステム管理部門が選択したソリューションは「Azure VMware Solution(AVS)」でした。

ソリューション

サーバリソースのひっ迫や、保守・運用コストの増加といった既存システムの課題を解決するための施策として、クラウド移行による IT コストの更なる効率化を検討。コストメリットが高く、稼働中のアプリケーションに影響を与えることなく移行できる「Azure VMware Solution」を、クラウド化の第一歩として採用している。

導入前の課題

  • サーバ数の増加に伴うリソースのひっ迫
  • レガシー OS の EOS / EOL 対応(セキュリティの担保)
  • ハードウェア・ソフトウェアの保守・運用コストの増大

導入効果

  • Azure VMware Solution(AVS)の導入により、拡張性や運用性の改善が実現
  • AVSでは Windows Server 2008 の延長サポートが受けられるため、セキュリティの課題も解決
  • ハードウェアの保守作業が不要になり、VMware 製品の更新もマイクロソフト側で実施

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IT戦略の一環としてクラウド移行プロジェクトが始動。VMware製品をクラウドサービスとして利用できるAzure VMware Solutionが採用された

主にシニア富裕層向けの商品・サービスを展開し、日本生命グループの窓販ビジネスの拡大に寄与しているニッセイ・ウェルス生命は、中期経営計画における IT 戦略として「IT コストの更なる効率化」を掲げています。同社のシステム管理部門では、増加を続ける IT コストを抑制する手段としてのクラウド活用に着目。オンプレミス環境に構築した既存システムが抱える課題の解決に向けて、2020 年 4 月からオンプレミス上の仮想マシン(サーバ群)のクラウド移行について検討を開始します。ニッセイ・ウェルス生命 システム管理部 部長の山本 和重氏はこう語ります。

  • ニッセイ・ウェルス生命保険株式会社 システム管理部 部長 山本 和重 氏

    ニッセイ・ウェルス生命保険株式会社
    システム管理部 部長
    山本 和重 氏

「保険業界に限らず、現代のビジネスは IT の活用なくしては成り立ちません。ビジネスの持続的な成長を支える、高品質で安定した IT サービスを提供し続けることはシステム管理部における重要なミッションの 1 つです。その一方で、IT システムの複雑化によるインフラ運用コストの増大が大きな課題となっており、IT コストの最適化も進めていく必要があります。こうした課題を解決する効果的な手段の 1 つとして、クラウド移行の検討を開始しました」(山本氏)

クラウド移行の検討を開始した当時、オンプレミス環境の既存システムには「サーバ数の増加に伴うリソースのひっ迫」「レガシー OS の EOS / EOL 対応(セキュリティの担保)」「ハードウェア・ソフトウェアの保守・運用コストの増大」といった課題が顕在化しており、同社の中長期計画で掲げられた「持続的・安定的な発展のための IT 環境整備」は、まさに急務といえました。こうした状況を踏まえて、さまざまなクラウド移行のアプローチが検討され、最終的に選択されたのは Microsoft Azure 上に構築した VMware 製品による仮想化環境を利用できるマイクロソフトのフルマネージドサービス「Azure VMware Solution」(以下、AVS)でした。今回の取り組みでプロジェクトマネージャーを務めたニッセイ・ウェルス生命 システム管理部 専門課長 上級インフラアーキテクト 兼 システム企画部 IT 戦略企画チームの高田 恭雅 氏は、AVS を採用した経緯を振り返ります。

  • ニッセイ・ウェルス生命保険株式会社 IT 本部 システム管理部 専門課長 上級インフラアーキテクト 兼 システム企画部  IT 戦略企画チーム 高田 恭雅 氏

    ニッセイ・ウェルス生命保険株式会社 IT 本部
    システム管理部 専門課長
    上級インフラアーキテクト 兼 システム企画部 IT 戦略企画チーム
    高田 恭雅 氏

「当社では年間を通して複数の保険商品の開発プロジェクトが動いており、既存システムのすべてを一度にクラウド移行することは現実的ではありませんでした。そこで既存のアプリケーションに変更を加えることなくシステムをクラウド移行する手段を模索し、オンプレミス環境で利用している使い慣れた VMware 製品をサービスとして利用できる AVS に注目。ほかのマイクロソフト製品と親和性が高く、他社製のクラウドと比較してコストメリットが高い点を評価し採用を決定しました」(高田氏)

3 段階でオンプレミスのシステムを AVS に移行。L2 延伸技術で既存アプリケーションへの影響はなし

Azure 上の VMware 製品による仮想化環境をサービスとして提供する AVS には、Windows Server 2008 の延長サポートが受けられるというメリットもあり、レガシーOSのサポート終了によりセキュリティ対策に課題を抱えていたニッセイ・ウェルス生命にとって有効な選択肢となりました。また技術面では L2 延伸を活用できることが採用の決め手になったと高田氏。「AVS と L2 延伸を組み合わせると、オンプレミス環境にあるサーバのIPアドレスを変更せずにクラウドへ移行することが可能になり、既存のアプリケーションに影響を与えることなくシステム移行が実施できます」と力を込めます。

2020 年 4 ~ 6 月にかけてクラウド化のロードマップ策定、コスト効果算定といった検討が行われ、 AVS の採用が決定。同年 11 月から本格的な移行プロジェクトが始動し、基盤の構築が進められました。その後の移行フェーズは、3 段階で実施したと高田氏は話します。

「まずはシステム管理部門で運用しているサーバを中心に、 2021 年の 2 ~ 3 月にかけてトライアルと移行を実施しました。そこで大きな問題がないことが確認でき、4 ~ 8 月にかけて業務系の開発・検証サーバ、9 ~ 10 月にかけて本番の業務系サーバの移行を行いました」(高田氏)

導入にあたって考慮したポイントはネットワーク周り、L2 延伸でオンプレミス環境からクラウドに接続するためのネットワークをどうするかでした。当初は既存のネットワークを拡張する手段を検討していましたが、検討段階から参画している導入ベンダーである TIS 株式会社の提案を受け、専用の回線を敷設してリスクを回避。その結果、ネットワーク遅延などのトラブルは一切発生していないといいます。

さらに、スモールスタートで導入して容易に拡張できることや、VMware 製品のバージョンアップやパッチ適用といった作業が不要となったこともポイントと高田氏。「最初の導入時には 3 台の ESXi ホストで開始し、途中で 2 台のホストを追加(拡張)しましたが、30 分程度でシステムに影響を与えることなく行えました。また、オンプレミス環境で行っていた VMware 製品の更新作業もマイクロソフト側で実施してくれるため、運用管理の負荷を大幅に改善することができました」と導入メリットを語ります。

  • 図版

約 100 台の仮想マシンが AVS 上で稼働中。将来的にはクラウドネイティブ環境へのリフト&シフトを推進していく予定

段階的なクラウド移行を進め、2021 年 11 月までに約 100 台の仮想マシンを AVS 上に移行したことで、本プロジェクトは1つの区切りを迎えました。すでに各業務システムを構成するサーバ群が AVS 上で稼働していますが、大きなトラブルは皆無。移行後は運用管理者・ユーザーともにクラウドに移行したことを意識することなくシステムを利用しているといいます。検討時に目的としたリソースのひっ迫やセキュリティ対策、コストの最適化といった課題を解決できたと、高田氏は本プロジェクトの成果を実感しています。

とはいえ、本プロジェクトでニッセイ・ウェルス生命のクラウド移行が完了したわけではなく、今後も継続して既存システムのクラウド移行を推進するといいます。AVS の導入と併行して Azure のネイティブクラウド環境構築も進め一部の業務システムを Azure の IaaS 上で稼働させていると高田氏は語ります。

「今後も環境の変化などに対して俊敏に対応するため、積極的なクラウド活用を推進することで、事業戦略を支える最適化されたシステム基盤の構築により、事業拡大に貢献していきたいと考えています。AVS を導入することで、Azure サービスの活用、アプリケーションのモダナイズの加速を実現したいです」(高田氏)

システム管理部門を統括する山本氏も、クラウド化の推進を今後の IT 戦略における重要なアプローチの 1 つと捉えており、AVS を単に運用コストを抑制するだけでなく、IT サービスを維持する保守性や将来に向けた拡張性の担保にも効果を発揮するソリューションと高く評価します。

「現在の IT システムは、複数メーカーの製品を組み合わせて構成されており複雑化が進んでいます。今後は IT 環境の全体最適化に取り組み、複数の IT サービスを連携させてコストの最適化を図ることが重要と考えています。その意味でも、ヴイエムウェアとマイクロソフトが連携し、両者の製品名を冠したサービスとして提供されている AVS は、ユーザー企業のニーズを取り込んだ製品といえます。オンプレミス環境の VMware 製品と同様に使えるため安心感もあり、段階的なクラウド移行を検討している企業に対して極めて有効なソリューションになると考えています」(山本氏)

スモールスタートでクラウド移行を推進し、将来的にはクラウドネイティブな環境の構築を目指したい企業にとって、ニッセイ・ウェルス生命の取り組むクラウド化の施策から得られるものは多いはずです。

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●業界
LIFE INSURANCE

●カスタマープロフィール
2018 年 5 月に日本生命保険相互会社と経営統合し、日本生命グループの一員として金融機関の窓販領域に特化したビジネスを展開している、ニッセイ・ウェルス生命。主にシニア富裕層をターゲットとして、外貨建ての一時払定額年金を中心とした商品・サービスを提供している。

●ユーザーコメント
「オンプレミス環境で構築した仮想マシンを、既存のアプリケーションに影響を与えることなくクラウド環境に移行できました。 AVS の導入は、将来的なクラウドネイティブ環境へのシフトを見据えた第一歩として重要な意味を持つと考えています」
――ニッセイ・ウェルス生命保険株式会社 システム管理部 部長 山本 和重氏

●導入製品・サービス
・Azure VMware Solution(AVS)

[PR]提供:ヴイエムウェア