トヨタ自動車のクルマに定額料金で乗ることができる注目のサブスクリプションサービス「KINTO」。そのエンジニア組織として設立されたKINTOテクノロジーズ株式会社は、新たなブランドであるKINTOの認知・理解向上と売上拡大・利用継続というビジネスゴールを実現するため、マーケティング部門と一体となって行動できるデータ分析部門の整備を目指していた。Tealiumのソリューションを導入することで、その取り組みがいかに動き出し、高度化に向けて進み始めたのか、キーパーソンの言葉を交えながら見ていこう。

  • 【写真】KINTOテクノロジーズ株式会社の西口浩司氏と朝長英樹氏

トヨタグループの新サービスを支えるエンジニア集団

KINTOテクノロジーズ株式会社は、トヨタグループにおいてBtoC及びユーザーに直接クルマを売っていくD(Direct)toC領域のサービスに特化した内製開発組織だ。会社設立以前の2019年から2021年3月までは、株式会社KINTOにエンジニアが所属していたが、2021年4月に開発部門を分社化。現在では東京の2拠点に加えて名古屋、大阪の4拠点を展開し、約300人のエンジニアを抱えるまでに成長した。国内ではKINTOのサービス開発を主要業務とするほか、グループ全体の“toC”の開発に関する支援や、世界約40カ国におけるトヨタ車販売ビジネスの現地開発支援も担っている。外国籍社員が25%ほどを占め、多様な人材が活躍する会社でもある。

トヨタは自動車メーカーであり、従来、販売は販売店(ディーラー)に任せるのがビジネスモデルだった。しかしクルマ自体が所有から利用という流れに変わりゆく中で、トヨタもモビリティカンパニーとして生まれ変わることを力強く宣言。ユーザーに対してクルマを直接、しかもWebから購入できる形で提供するという新たなチャレンジに乗り出した。その一つの形として、月々定額のサブスクリプションでトヨタの新車に3年間乗れる「KINTO ONE」のサービスを2019年にスタート。現在は3年だけでなく、5年・7年という期間の選択や解約金がフリーになるサービスも増え、さらに中古車版の「KINTO ONE」や、「KINTO Unlimited」「KINTO FACTORY」といった新サービスもリリースしている。こうしたサービスを世の中にアジャイルに出し、かつ会社のビジネスゴール達成を後押ししていくことが、技術者集団であるKINTOテクノロジーズの役割といえる。

カスタマーデータを活かせるデータ分析基盤の整備に向けて

株式会社KINTO時代から今に至るまで、サービスの急成長に比例するように、同社のカスタマーマーケティングも目まぐるしい変遷を遂げてきた。

同社では、まずは新たなサービスであるKINTOを世の中に周知し、理解してもらうことを目指し、マーケティング部門と一体で動けるデータ分析部門の設立を考えていた。設立当初の事情について、データ分析部分析グループでマネージャーを務める西口浩司氏が説明する。

【写真】KINTOテクノロジーズ株式会社 西口浩司氏

KINTOテクノロジーズ株式会社 西口浩司氏

「新サービスですから、設立当初は当然ながら顧客に関するデータはありませんでした。その段階から分析メンバーを集め、社内にデータ分析部門を設立し、それと並行して、顧客のデータを蓄積する仕組みも必要になりました。クルマは、一般的には人生で数えるほどしかない大きな買い物といわれます。しかも顧客との接点も検討から購入までのわずかな期間に限られてしまいます。その中で、まずはサービス自体を理解してもらい、そしていかにクルマの買い方の選択肢のひとつとして考えてもらえるようにしていくかが課題となりました」

カスタマーデータを基に、Webの仕組みを活かして顧客接点を継続的に保ちながらユーザーコミュニケーションを強化することで、KINTOの売上拡大と利用継続という会社のビジネスゴールにつなげていくことが、データ分析部門に与えられたミッションとなった。

こうして、事業活動の中で得られる顧客のファーストパーティデータを蓄積・分析することに加えて、そのデータをさまざまなツールとつなぐことで多彩な接点の顧客情報を連携させ、マーケティング部門が存分に活用できるようにするためのソリューション探しがスタートした。その結果として選定したのが、Tealiumのソリューションだ。

データを“つなげる”中立的なハブとしての機能に着目

Tealiumに注目した理由について西口氏はこう語る。

「当時はコロナ禍の前でしたので、リアルな場での展示会にいくつか赴き、情報収集をしていきました。その頃CDPが注目され始め、いくつかのソリューションも出ていましたが、その中でTealiumはCDH(Customer Data Hub)という打ち出し方をしていました。つまり、単にデータをためるというより、Tealium自体が中立的な立場で、さまざまなツールと連携してデータをつなげるハブになるということです。当時、この“つなぐ”という言葉が強く響いたことを覚えています」

そのTealiumの特色について、西口氏と同じ分析グループでアシスタントマネージャーを務める朝長英樹氏が解説する。

【写真】KINTOテクノロジーズ株式会社 朝長英樹氏

KINTOテクノロジーズ株式会社 朝長英樹氏

「TealiumはCDHとして、他のツールとつなぐハブの機能をメインに活用しています。それは多種多様なツールと高い親和性を実現しているからこそできることで、そこが強みに感じましたし、中立的なのでベンダーロックインの懸念もありませんでした。また、Tealiumで情報を設定しておけば連携する各ツールにもその情報が行き渡っていくデータオーケストレーション機能を持っているので、ツールのメンテナンスの面で手間とコストを削減できるところも印象に残りました」

加えて西口氏は、Tealium がKINTOテクノロジーズが最重要視する施策を実現できる唯一のツールだったと評価する。それは4R、すなわち適切な相手に・適切なタイミングで・適切なコンテンツを・適切なチャンネルで提供するという点だ。「それができるのはTealiumしかなく、もう競合はなかったといってもいい状況でした」と振り返る。

Cookie規制への対応に苦慮しながらも安定稼働がスタート

Tealium iQ Tag Management/Audience Stream/Event Streamを導入した同社。KINTOのサービス自体がまだまだ走り始めたステージであり、データ分析基盤の整備にあたってデータの蓄積も並行して進めなければならなかったため、「Tealiumのソリューションの活用も当社にとって一つのチャレンジだった」(西口氏)という。

2020年3月、導入プロジェクトはキックオフを迎えた。まずはWebのデータ蓄積に関してTealiumとディスカッションを重ねながら、4カ月ほどで初期設定が完了。併せてTealiumで取得したログデータをWebログとして活用するため分析基盤にため込む作業も実施した。実際に分析基盤へ蓄積できるようになったのは同年9月頃のこと。総じて、初期の構築は半年ほどで終了した。この辺りの作業についてはとくに技術的な苦労もなく、スムーズに進んだと朝長氏。稼働開始後、データの蓄積と活用に着手したが、予期せぬトラブルにも直面する。

「Webサイトへの訪問者はiPhoneのユーザーが多いのですが、アップルがITPをアップデートした関係でCookieが消えてしまう問題が発生しました。同じ人が同じデバイスでアクセスしたのに、Cookieが消えた関係で別人と認識され、要するに再訪問のデータが取れなくなったのです」(朝長氏)

Tealiumには、異なるデバイスでアクセスしたユーザーも同一と認識する機能がある。そのためこうした事象が発生するのは想定外だった。「本来クルマは検討を重ねてから購入されるものなのに、なぜ初回訪問でKINTOに申し込む人がこんなに多いのかと不思議に思っていました」と朝長氏は回顧する。

Cookieが消失している可能性に気づいてからは、Tealiumと対策について密に相談し、最終的にITPに対応できるCookie保持の仕組みを生み出し問題を解決。一人の顧客がPC、スマートフォン等のデバイスやブラウザからアクセスした場合も、同じ人物として見なすことが可能となり、ビジネスゴールの実現に向け効果的なコミュニケーションを取れる安定的な基盤が出来上がった。

準備のステージを経て高度な本格活用に踏み出す

現在の主な活用方法について、分析グループの渡辺誠氏が説明してくれた。

「Tealium iQ Tag Managementの機能を使ってWebサイトに埋めた広告タグの計測を実施しているほか、TealiumのCDPに蓄積したデータをリアルタイムで呼び出し、A/Bテストツールと連携してユーザーごとのページ出し分けも行っています。そのほか、FacebookのコンバージョンAPI(CAPI)でTealiumのCDPと広告側のサーバーを直接つなぎ、広告の精度向上にも取り組んでいます。また、Webサイトの特定の機能を使ったユーザーの申込率が高いことがデータから判明したため、そのユーザーに広告を表示してサイト再訪と申し込みを促す施策も実施しました。幅広い用途でTealiumを活用しています」

さらに、こうしたさまざまな施策を組み合わせ、広告ごとにユーザーのニーズに対し仮説を立ててレコメンドを行う取り組みにも着手。Tealiumのソリューションを導入したことで、追加コストを抑えながらこうした施策を進められることを同社では高く評価する。ほかにもLINEとの連携など、多様なチャレンジが進んでいる状況だ。

前述したような、顧客を獲得する「攻め」の施策だけでなく、広告費のコストを削減する「守り」の施策にも、Tealiumが大きく貢献しているという。たとえば、何度もアクセスしているユーザーにKINTOの広告を出さないようにするデリートターゲティングを実施。広告出稿を効果的に抑制し、結果としてその分のコスト削減を実現した。「デリートターゲティングの結果、削減によってコンバージョン率が変化しなかったことから、効果も確認できました」と朝長氏は語る。

こうしたさまざまな検証がなされた今、全体の投資効果を見ていくのはこれからだという。西口氏は今後の期待をこう語る。

「Tealiumのソリューションによって、データを他のツールと連携させ、より高度な広告表示やリアルタイムのデジタルマーケティングといった本格活用につなげられるプラットフォームが、いま整った段階です。目に見える効果も少しずつ生まれていますが、今後はよりわかりやすい数字として出していきたいと考えています。施策でのA/Bテストの差だけではなく、たとえば新たな施策実施のために必要な他ツールとの連携の容易さなど、”目に見えない効果”もどれだけ見えるようにしていけるかが、Tealiumを導入した本当の価値につながるところでしょう」

今後さらにTealiumのソリューションを活かし、データとマーケティングが一体となった取り組みの高度化を目指すKINTOテクノロジーズ。より多くの顧客とつながりを持ち、KINTOを選んだユーザーと末永くつながり続ける――。そんなビジネスゴールの達成に、力強く向かっていく。

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[PR]提供:Tealium Japan