人口減少とデジタル化の進展は、対面サービスに新たな課題を投げかけている。
千葉興業銀行は、長年「コンサルティング・バンク」として、お客さまひとりひとりの課題解決に寄り添ってきた。
しかし近年は、人口減少に伴う店舗の集約により『対面による丁寧な相談』が提供しにくいエリアが出てきたり、インターネット専業銀行の隆盛によって、若い世代が地方銀行を利用しなくなったりという状況が生じていたという。
同行はこうした時代の流れを受けて、非対面チャネルでも親身な接客を実現すべく、さまざまな顧客データを統合・集約・分析するためのプラットフォームを導入した。
銀行本位ではない「顧客本位」のデジタルマーケティングは、どれほど収益率を向上させるのだろうか。同行の成功事例を紹介する。
非対面でも丁寧な接客をするためのソリューションとは?
より地域に根ざした新銀行設立の機運が一気に高まった戦後復興期、「県内中小企業者の親切なる相談相手たらんことを期する」を創業の精神として、1952年に設立された千葉興業銀行。現在は県内72店、都内2店、出張所6か所を持ち、「コンサルティング・バンク」として、お客さまひとりひとりの課題解決に寄り添っている。
しかし近年は、時代の流れに合わせた「顧客に対するより良い提案」が十分とは言い切れなかったと、同行の非対面チャネルの企画推進を担当する田中 啓亮氏は振り返る。 「東京に近い千葉県はまだ恵まれているほうですが、それでもほかの地域同様、ここ数年で人口減少のトレンドに入っています。それに伴う店舗の集約によって、『対面による丁寧な相談』が提供しにくいエリアが出てきました。また、インターネット専業銀行の隆盛によって、若い世代が地方銀行を利用しなくなっているという状況も生まれています」(田中氏)
こうした地方銀行特有の課題に対し、同行では「来店情報や通帳情報だけでなく、デジタル情報を駆使することによって、"非対面の繋がり"をもっと強化することができるのではないか」と頭を悩ませていた。デジタルマーケティングを担当する山本 裕真氏は、2018年当時の試行錯誤をこう振り返る。
「たとえばネットショッピングを利用すると、一度見たページに関連する商品のメールが送られてくることがあります。私自身、そのメールを読んで改めて商品を買うこともありました。こうした仕組みを銀行でも導入できないかと思ったのです。マイカーローンや消費者ローンのページを見た方は、当然、その商品に興味を持たれていますから、たとえWebサイト上でお申し込みがなかったとしても、その後ご連絡が取れれば、より良い提案ができるのではないかと考えました」(山本氏)
地方銀行として、顧客ひとりひとりのニーズに合わせた提案をする「One to Oneマーケティング」を、非対面でも実現するためには、どのようなソリューションが最適だろうか? Webサイトやアプリといったデジタルチャネル上の行動にあわせて、メール配信などの施策を実行できるしくみとしては、マーケティングオートメーション(MA)ツールがよく知られている。
しかし、千葉興業銀行が出した答えは、より応用範囲の広いTealiumのCDPの採用だった。
運用の現実性を重視し、TealiumのCDPを採用
CDPは、企業が持っているさまざまな顧客データを統合・集約・分析するためのプラットフォームである。TealiumのCDPはとくにリアルタイム性が高く、個々のユーザーを精密に識別できるという特徴を持つ。
比較検討をした結果、他社のMAツールは「メールを使うハードルが高かった」と、山本氏は言う。
「検討当時の当行はメール配信をしていなかったために、メールアドレスありきというMAツールは導入のハードルが高かったのです。その点、TealiumのCDPならば、SMSを起点に『電話をかける』といったリアル施策に使えるリストを作ることもできます。デジタルとリアルを融合できる応用範囲の広さが魅力的でした」(山本氏)
また、検討の際は、TealiumのCDPを先行導入していた地方銀行の視察を実施し、運用の現実性を確かめたと、山本氏は続ける。
「千葉興業銀行では、これまでにさまざまなデジタルツールを導入してきましたが、実運用がうまくいかず、頓挫するようなケースもしばしば起きていました。運用に高い技術的専門性が要求されるのではないかと心配だったのですが、『Tealiumの管理画面を毎日見ずとも施策が実行され、収益を上げることができている』ということが分かり、安心して導入を決めることができました」(山本氏)
実際に、導入段階においても技術的専門性が要求されることはなかったと、田中氏は言う。
「当時の私は担当になってまだ半年で、Webマーケティングの知識も乏しかったのですが、それでも適切な設定作業ができたのはTealiumのサポートのおかげです。実際の導入にあたっては、『申し込みページを見た人に電話をかけたい』『cookie利用に関する情報ポップアップを将来的に掲示したい』という目的を明確にしたあとは、ほとんどTealiumさんに動いていただきました。私が手を動かしたのは、Webサイトへのタグの埋め込みくらいです。」(田中氏)
cookie情報など個人情報の取り扱い方を明確にした上で、千葉興業銀行は2020年から施策をスタートした。
「これまでは預金残高や年齢といった属性情報でセグメントをかけたリストを作り、こちらが決めたタイミングでアプローチしていました。しかしTealiumのCDPを導入したことで、顧客一人ひとりの関心に応じて、”Aさんは投資信託に興味がある”、”Bさんは国内株式投資とマイカーローンに関心がある”というようにバッジを付与してプロファイルすることができるようになりました。顧客の興味に沿ったアプローチができるようになったのです」(田中氏)
「顧客獲得率4倍」を実現したTealiumリスト
現在、千葉興業銀行のコンタクトセンターには、「Tealiumリスト」と呼ばれる架電リストがある。「SMSやアプリからローン申し込みページへ訪れたものの、離脱してしまったユーザー」を、TealiumのCDPによって検知し、顧客データと照合することによって作成されたリストだ。フリーローンとカードローン、車・リフォーム・教育のローンにおいて、施策を実施している。
「Tealiumリストで電話が繋がったお客さまの獲得率は、約3割にもなります。これは、既存のリストと比べて4倍以上の数値です」(山本氏)
もともとはSMS配信だけで顧客を紐付けていたが、cookie保持の制限などもあり、得られるリストの数が少なかったため、効果は限定的だった。そこでTealiumのサポートと相談し、アプリの広告バナーからの流入も検知できるようにしたところ、母数が一気に増えたという。
「効果が目に見えるようになったことで、『申し込みページからの離脱者だけでなく、商品ページを数回見た人のリストはどうか?』など、コンタクトセンター側から提案が来るようになりました。より興味が浅いリストにはなりますが、それでも既存のものと比べて効果があるのでは、と期待されています」(山本氏)
架電リストはチャネル企画室のメンバーが作成している。当初は一ヶ月に一度コンタクトセンターに渡していたが、2023年からは一週間に一度となった。
「申し込みページからの離脱に対し、できるだけ早くリアクションしたほうが、反応が良いようです。『鮮度が大事』ということですね。リストはチャネル企画室のメンバーがTealiumの管理画面から抽出していますが、この作業は簡単で、誰でもすぐにできるようになると思います」(田中氏)
さらなる「顧客本位」の実現に向けて
Tealiumリストへの電話は、顧客の反応がまったく違うと山本氏は言う。
「お客さまに喜ばれる施策だと感じています。『申し込もうと思ったんだけど返済とか金利が不安で』『口座番号が分かんなくてやめちゃった』といったお客さまに対して、電話をすることによって、疑問を解決できるようになりました」(山本氏)
こうした効果は、千葉興業銀行内のみならず、他の地方銀行からも関心を寄せられている。
「今は活用の幅をさらに広げています。2024年2月からは、Web広告配信数の最適化による広告費削減を始めました。他部署と連携しながら、アプローチする商品やチャネルを増やすことも進めています。また、最近では金融業界限定のTealiumユーザー会に参加し、同業のマーケター同士で顧客データ活用において直面している課題を話し合い、難問を解消することができました。CDPの導入をきっかけに、こうした新たな繋がりが生まれています」(山本氏)
千葉興業銀行は、MAツールありきではなく、TealiumのCDPを導入し、配信チャネルを段階的に拡大することによって、『非対面でも丁寧な相談』を実現している。
「今では、お客さまの悩みやお困りごとに対してタイムリーにリアクションできるようになっています。銀行本位ではなく、顧客本位のアプローチの実現です。お客さまの気持ちを深く知れば、心地よい顧客体験がデジタルの世界でも果たせるんです。今後も、『お客さまに寄り添っていく』という、千葉興業銀行としての最大の想いを大切に、デジタルでも親身な接客を続けていきます」(山本氏)
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[PR]提供:Tealium Japan