■事例先企業情報
企業:日本電気株式会社
所在地:東京都港区芝五丁目7番1号
急速な市場変化やニーズの多様化に柔軟に対応する上で、DXは避けて通ることができない課題である。2019年にDX Agendaを制定し、その推進に取り組む日本電気株式会社(NEC)は、以前のデータ統合での課題の表出を受け、DXの前提となる新たな全社規模のデータプラットフォームの構築を開始。利用状況に応じてクラウド上で柔軟に運用でき、ベンダーフリーで多様なツールとの連携に開かれたSnowflakeの特長は、ソリューションとしての外販も視野に入れて構築が進む、同社の次世代データプラットフォームに重要な役割を果たしている。
■ご利用のSnowflakeワークロード
・データウェアハウス
■ストーリーハイライト
ベンダーフリーなデータプラットフォームを構築
大きな初期投資を必要としない、柔軟な運用を実現
ソリューションとしての外販も視野にSnowflakeを採用
課題:費用対効果に見合うことが共通データプラットフォームの大きな課題
NECの事業領域はきわめて幅広く、「海底から宇宙まで」と説明されることも多い。海底ケーブルから宇宙開発まで手掛けることがその理由である。そして現在、NECは「2025中期経営計画」の達成とさらなる成長を目的として社内のデジタル・トランスフォーメーション(DX)に取り組み、その中核として、データに基づく経営のスピード・質の向上と、経営資源の全体最適での配分を目指し、データドリブン経営を推進している。
約12万人の従業員が世界50カ国以上で働く同社にとって、従来から全社共通のデータプラットフォームの実現は大きな課題であり続けてきた。
その取り組みの第一歩となったのが、2016年の「リアルタイム経営基盤」と名付けられた全社共通のプラットフォームの構築だった。その狙いは、よりスピーディーなデータ分析によるPDCAサイクル高速化、および、経営情報の一元的運用まで視野に入れた大量データの効率的運用の実現、である。
プラットフォームのポイントは大きく二つ挙げられる。第一のポイントは、大容量・ハイスペックなインメモリデータベースに格納された基幹系データを、もう一基のインメモリデータベースにコピーすることによる、リアルタイムのデータ分析の実現である。だがこの仕組みだけでは、過去のデータまで含めたデータ分析を行うには大きなコストが必要になる。同社はオンプレミスにデータレイク(DL)を確保し、常時利用するデータだけをインメモリのデータウェアハウス(DWH)に格納し、それ以外はDLに蓄積し必要に応じて参照するシステムを構築することになった。それが第二のポイントである。
並行して同社は、BIツールなどのビューアを経由することで、個別データベース(DB)の情報に一元的にアクセスできる環境を実現した。
この大規模なシステムの構築には3年を要した。非常にしっかりしたものであったが、データの情報収集に運用上の課題があり、全社的な経営情報の統合とその提供は想定通りとはならなかった。同社のDX推進を担当するコーポレート トランスフォーメーション部門 DX戦略統括オフィス 上席プロフェッショナル 兼 ディレクターの関 徳昭氏は、前回のシステム構築時の経験や課題をこう振り返る。
「当時の技術では限界だったことを考えると仕方がありませんが、システム構築に費やしたコストや時間と比しても想定したほどのデータが集まらず、結果、システムの活用が、残念ながら予定したほどには進んでいないという状況でした。こうした中でさまざまな課題を発見することができ、さらなる改善策の検討につながっていったのです」(関氏)
NECが、同社グループのICTの目指すべき姿としてDX Agendaを制定したのは2019年のことだ。それを受け、同社は過去のプロジェクトの経験を通じて発見した新たな課題にもとづき、データプラットフォームの再構築に取り組むことになった。
解決策:小さく始めて使った分だけコストを負担するSnowflakeを採用
NECの次世代データプラットフォームの大前提となったのは、社内1000超のシステムのデータを一元的に扱うことの実現だった。将来的に外販まで視野に入れる新しいプラットフォームのシステムアーキテクチャ採用では、大きく以下の5項目が基本理念として掲げられた。
- Global Standard…グローバルスタンダードなソリューションを中核にする
- Cloud Native…SaaS、PaaSを優先採用する
- Best of Breed…業務/機能領域ごとに最適なソリューションを選定し組み合わせる
- Fit to Standard…経営の要請や環境変化に柔軟に対応するため、作り込みを最小化、共通サービス利用を徹底する
- データ一元化…すべての業務/機能をデジタルに捉え、共通認識とする
「Global Standardは外販を考える上で不可欠な項目でした。CloudNativeについては、小さく始められることと共に、OSサポートの問題が生じるIaaSのような仕組みは避けたいと考えました。Best of Breedは、別の言い方をすれば、ベンダーロックインされない仕組みの実現です。Fit toStandard、データ一元化については皆様がご存じのとおりです」(関氏)
さらに実現機能・コンセプトとして設定されたLean Data/Pay per Use(小さく始めて使った分だけコスト負担)など、すべての機能を満たすデータプラットフォームとして採用されたのがSnowflakeだった。その理由を、Snowflakeの性能評価を担当したコーポレート トランスフォーメーション部門 DX戦略統括オフィス プロフェッショナル アーキテクチャ担当の巽 啓樹氏はこう説明する。
「注目したのは、特定クラウドベンダーに縛られることなく運用できるSnowflakeの特長でした。またクラウド製品は多様な機能を備える一方、運用チューニングに手間取ることが珍しくありませんが、Snowflakeは機能が絞り込まれ、簡単に使える点を高く評価しました。それと関連しますが、BIなど、Snowflakeが持たない機能については主要ツールとのコネクタが用意されていることも評価したポイントの一つです。さらにデータ共有にも注目しました。販売、経理、生産管理など、多様なシステムのデータを物理的に集約することは容易ではありません。しかしSnowflakeであれば、これまで同じように各部署が個別にDBを管理しながらも、データを仮想的に共有することが可能になります」(巽氏)
結果:出来るところから移行を進める導入工数の最小化もSnowflakeのメリットの一つ
現在、次世代データプラットフォームへの移行を希望する事業領域から順次導入が進む。
「できるところから一つずつ移行を進めるという考え方で構築しています。最初はマーケティング部門、次に基幹系という流れで進んでいますが、小さなDWHをSnowflakeで作っていくことで仮想的なデータ統合が可能になるため、とても効率的な運用が実現できています」(関氏)
製品やサービスの構造を明らかにし、理解していったことも同社のSnowflake導入の特長の一つである。NECはSnowflakeによる今回の仕組みを、ゆくゆくは外販することも視野にいれており、これは、お客様に提供するコア製品・サービスをNECが責任をもってサポートするためにも、構造を最大限に理解する必要がある、という考え方に基づくものである。
「Snowflakeは2021年1月に契約し、翌月からはプレ利用をスタートしていますが、それと並行し、3カ月掛かりで徹底してサービスの動きを解析し、スキーマを整理した100ページ超の資料を作成しています。中身が分からないものは売らないという我々のポリシーがあってのことですが、おかげでトラブルのない運用が実現できています」(巽氏)
さらにコスト面でも一定の効果が得られていると巽氏は言う。
「オンプレミスと比較するとコストは1/3程度に低減しています。また、競合するクラウド製品との比較では、チューニングの手間が大幅に軽減されることで構築工数が約2割削減できています。また定性的な観点では、高度なチューニング技術を持つ人材を確保する必要がない点も大きなポイントだと思います」(巽氏)
- データプラットフォーム整備のコストが1/3に
- 構築の工数を大幅に短縮(20%↓)
将来:顔認証に基づく消費行動分析など新サービス提供の基盤としても注目
各システムのデータをSnowflakeにほぼリアルタイムでアップロードし、そのデータを最新のBIツールで可視化するというのがNECの次世代データプラットフォームの基本的な考え方になる。また並行して運用する大容量・ハイスペックなインメモリデータベースなどについては、データカタログツールを経由することでデータ統合を実現。NEC本社に限ってもすでに3万人以上がBIツールなどを介して、Snowflakeにアクセスしているという。同社が今後の展望としてあげるのは、データシェアリング機能を利用したデータ商品化の実現である。
「現在特に注目しているのが、当社の技術的アドバンテージの一つである顔認証技術との連携です。今後は、顔認証に基づく消費者の行動情報についてプライバシーを担保した上で広くサービスとして提供することも考えています」(関氏) またNECの次世代データプラットフォームでは、同社のAI活用の基盤としての役割も担っている。
「当社は、dotDataをはじめとする多様なAI製品を提供していますが、その社内における活用の基盤としてもNECの次世代データプラットフォームは機能しています。特に注目しているのが働き方に関する分析で、Webミーティングの実施状況や業務の遂行状況など多様なデータにもとづき、より生産性が高い働き方を模索する取り組みもスタートしています。すでにいくつかの興味深い分析結果が得られていますが、これについても、多様な働き方をSnowflakeでシェアできると分析の精度はさらに高まるはずです。将来的には、NECの新たなサービス実現にSnowflakeを積極的に活用していきたいですね」(関氏)
Snowflakeについて
Snowflakeは、Snowflakeのデータクラウドを用い、あらゆる組織が自らのデータを活用できるようにします。お客様には、データクラウドを利用してサイロ化されたデータを統合し、データを発見してセキュアに共有し、多様な分析ワークロードを実行していただけます。データやユーザーがどこに存在するかに関係なく、Snowflakeは複数のクラウドと地域にまたがり単一のデータ体験を提供します。多くの業界から何千ものお客様(2021年7月31日時点で、2021年Fortune 500社のうちの212社を含む)が、Snowflakeデータクラウドを自社のビジネスの向上のために活用しています。詳しくはsnowflake.comをご覧ください。
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※本記事はSnowflakeから提供を受けております。
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