日立造船は、かつて行っていた造船事業で培った「船体製造技術」「内部装置製造技術」「プラント技術」を生かし、「クリーンなエネルギー」「クリーンな水」「環境保全、災害に強く豊かな街づくり」を軸に幅広く事業を手掛けている。同社は2019年、一部製品にSecomeaのリモートアクセスソリューションを導入し、遠隔メンテナンスによるサービス体制強化と今後に向けたデータ収集・活用の取り組みに着手した。
導入前の課題 | 導入後の効果 |
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自社製品IoT化の取り組みは進んではいるが、稼働データを把握できていない製品においては、トラブルが発生した際に遠方の現場まで技術者が足を運ばねばならず、対応時間の長期化に加えて技術者のリソースやコストの問題もあった | Secomeaのソリューションにより現地の製品データを事務所から遠隔で見える化し、対応期間短縮と作業効率化、コスト削減を実現。今後のデータ活用による新たな付加価値提供にも道が開けた |
全社的なデジタル化推進と製品へのIoT導入に動き出す
日立造船では現在、IoTとAIを活用した事業のデジタル化を推進している。同社は工場や施設に関わる大規模プラントを製造・納品するビジネスが主体であるが、今後のビジネス拡大に向け、デジタル化による製品納入後のアフターサービスを拡大させる施策を追求している。
この流れのなかで、製品の遠隔監視や運転支援を徐々にスタートさせていた。その動きを一気に加速させ、全社的に推進する目的で、2018年にICT活用拠点となるHitz先端情報技術センターを運用開始。各事業部との連携によりIoTやAI、ビッグデータ活用の取り組みを進めている段階だ。
「当社は製品数が多く、事業部によってその製品の形態や収集できるデータの種類も異なっています。これまでは事業部が個別にIoT導入を進めていましたが、今後の全社規模でのIoT伸長のため、全社共通でデータ収集・活用するための共通基盤、IoTセキュアプラットフォーム(仮称)を構築しようとしています」
製品のICT化・デジタル化を進めるIoT推進本部 ICT事業推進部 IoTシステムグループ長の山田浩章氏は、そのように語る。
リモートアクセスで対応時間短縮と作業効率化を図る
同社がリモートアクセスに取り組むようになった経緯について、同グループの利田陽平氏はこう指摘する。
「各事業部に共通する課題として、製品のトラブル対応やメンテナンスがあります。製品が納入されている施設によっては、施設自体の交通が不便で、場合によっては携帯電話も通じない遠隔地にあることが多く、対応する技術者が現地に向かうだけでも大変な時間と移動費がかかります。しかもユーザーから電話などで対応要請を受けても、トラブルの状況は現地に着くまで把握できず、必然的に問題解決までの時間も長くなっていました」
現場で同社製品にトラブルが発生すると作業がストップし、工場の場合は生産ライン停止で損失に直結しかねない。その期間が長期化すれば、同社の信頼低下にもつながってしまう。遠隔メンテナンスを実現すれば、海外も含めどれほど離れた土地であっても技術者の移動時間や移動費をゼロにできるほか、修理期間の短期化で顧客満足度を高め、日立造船の信頼度アップとファンづくりにも役立つ。仮に現地に赴くとしても、あらかじめ機械の状況をデータで把握したうえで準備ができるので、これも時間短縮と作業効率化につながる。
Secomeaとの出会いから3カ月でユーザーへの導入を実現
同社は2019年5月、商社の紹介によってSecomeaのソリューションと出合う。同グループの横田順氏は当時の状況を振り返る。
「まずは貸出機を提供してもらい、6月から7月にかけ当社工場でテストした結果、遠隔メンテナンスに使えるとの話になりました。ちょうどそのタイミングでユーザー企業のゼネコン様から、シールド掘進機の稼働データをサーバーに上げて可視化し、現場にある制御装置のタッチパネル画面を当社と共有して、トラブル時の対処方法を検討したいとの要望を受けたのです」
同グループでは、SecomeaのIoTゲートウェイ「SiteManager」をトンネル掘削工事に利用されているシールド掘進機に装着して稼働データをクラウドに送信・蓄積し、一方で日立造船の事業所にもSecomea製品を導入することで、ユーザーの要望を一挙に満たせると考えた。
そして8月、同社のお客様であるゼネコンの国内現場において使用されているシールド掘進機にSecomeaを初めて採用することとなる。5月の紹介からわずか3カ月での実践導入となった。結果、シールド掘進機のデータを可視化して事業所から遠隔で確認できるようになり、トラブルの際に原因を迅速に調査できるようになった。また、同社技術者が現地へ行く時間や手間をなくし、対応の効率化も実現している。
短期間であるにもかかわらず、Secomeaの採用をスピーディーに決断した理由はどこにあったのだろうか。利田氏は次のように語る。
「やはり最も重視したのはセキュリティです。インターネット接続によるリスクを回避できますし、Secomea製品はグローバルな安全性認証を取得している点も安心できました。また、当社はITに詳しい技術者がそれほど多いわけではないので、設定と運用が簡単な点も評価しました」
この事例については、ユーザーのもう一つの要望であるタッチパネル画面でのデータ共有も実現に向け進行中。今後は蓄積した稼働データを分析し、機械の故障予知に活用することも考えているという。
さらに2カ月後、国内の遠隔地に工場を持つ飲料水メーカーから稼働データ可視化と遠隔監視の要望があった。同グループとしてはシールド掘進機案件に取り組んだ直後であったことから、この案件についてもSecomeaのソリューション導入を提案した。
こちらはペットボトルに水を詰める飲料充填包装ラインシステムに「SiteManager」を取り付け、やはり日立造船の事業所とつないで、リモートで稼働状況を把握している。そのデータから機械に異常があった際の状況を逐一監視できるほか、機器の稼働状況を監視して定期メンテナンスにも活用。技術者が遠方まで赴かなくて済むようになり、対応時間短縮を実現している。また、定期メンテナンスにも新たな方法論を検討中だ。
「従来の定期点検は部品の使用時間をもとに交換時期を想定するもの。Secomeaを導入することで、将来的には機器の稼働データから部品の状態を把握し、早めの交換の提案が可能となり、それが長い目で見ればユーザーにとっての付加価値にもなると考えています」と横田氏は話す。
リモートアクセスを活用したアフターサービスの充実を目指す
今後について山田氏は、同様の案件が増えてくることで、アフターサービスの一層の充実を視野に入れる。
「データ活用による機器メンテナンス提案などに役立てられるのではと期待しています。当社のさまざまな製品の事業部が同様の課題を持っているので、リモートアクセスを導入したいとの話を聞いたら、グループ会社も含めてSecomeaのソリューションを推奨しています。そうした取り組みを進めることで、IoTセキュアプラットフォームのメニューにSecomea製品を取り込み、グループ全体で統一したドメインのもとデータを管理する仕組みをつくっていきたいですね」
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