東芝三菱電機産業システム(TMEIC)は、製鉄・製紙・化学・食品をはじめとするさまざまな産業界の製造基盤を支える製品とエンジニアリングサービスを提供している会社だ。品質制御技術も強みとしており、日本に限らず世界のものづくり現場を力強く支えている。TMEICでは、設備が最高のパフォーマンスを発揮するため、エンジニアによる現地調整業務やアフターサポートの手段として、リモートによるサービス提供を必須と考えていた。この課題の解決に向けて導入したのが、Secomeaの産業用IoTゲートウェイ「SiteManager」とそのオプション機能「LogTunnel」である。
導入前の課題 | 導入後の効果 |
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工場でベテランの設備担当者が不足し顧客のみでの設備メンテナンスが難しいケースが増えているなか、新型コロナウイルスの影響で海外の工場を訪れることが難しくなり、TMEICのエンジニアが現地設備のメンテナンスに行くことができない。 | TMEICのエンジニアが顧客と情報共有しながら画面やログからデータを解析できるので、遠隔でも自由度の高いメンテナンスが行えるようになった。これにより、設備担当者に高度な知識やスキルがなくても設備を管理・運用しやすくなった。 |
拠点からの遠隔サービスで顧客サポートを強化する
製造業向けに、システム・電機品の販売・導入・サービスと、監視制御システム・パワーエレクトロニクス機器・モータ・ドライブ(可変速駆動装置)の開発・製造を行うTMEIC。同社の事業は消費者が直接目にするものではないが、私たちの暮らしを形作る多様なものづくり産業の製造設備・システムを日夜支えている。
TMEICでは国内外の顧客に対し、製品納入現場のフォローおよびアフターサポートの手段として、リモートアクセスによる保守サービスを展開している。そもそもリモートのサービスをスタートした背景について、産業第二システム事業部 プロセス制御研究開発センター プロセス制御研究課の神戸秀穂氏は次のように語る。
「近年はお客様の工場においてもベテランの設備担当者が減っており、お客様だけではトラブル対応が難しいケースが増えています。電話や電子メールでのやり取りではお客様に操作していただくことになり、慣れない方の場合は不安もあるでしょうし、万が一の操作ミスが発生する可能性もあります。そこで当社のエンジニアが訪問する必要があるわけですが、迅速性には限界があり、とりわけ定期メンテナンスが集中する時期などは派遣できるエンジニアがどうしても不足しがちでした。そこで、スキルの高いエキスパートが当社の拠点にいながら現地の状況を把握し、サポートを行うため、リモートアクセスが必要になったのです」
海外向けにリモートアクセスソリューションを模索
TMEICは2018年3月、拠点となるGRSC(Global Remote Service Center)を開設し、リモートサービスを開始した。新型コロナウイルスの発生する2年前のことであった。GRSCを核としてエキスパートがリモートでサポートし、トラブルの場合は障害状況の把握から復旧までの時間短縮を実現。そのほか、システムカスタマイズや業務改善に関するコンサルテーションなども提供する。
当初は国内顧客が主な対象となっていたが、その後、海外顧客にもサービス展開をはじめ、現在適用が増えている。同事業部 企画部 サービス企画グループの神本裕士氏は「コロナ禍により、国内でも海外でも、お客様に密着したメンテナンスやトラブル対応を行うことはやはり難しくなりました。とりわけ海外のお客様については、工場を訪れること自体が極端に難しくなったことから、アジア地域を中心にリモートサービスの適用が急速に拡大しています」と2020年の現状を振り返る。
TMEICのリモートサービスは、国内向けと海外向けとで2段階の仕組みが導入されている。まずベースとなるのがセキュリティの高いIP-VPNの閉域網で、これが国内をカバーする。一方、海外については、GRSCから現地法人拠点までは同じ閉域網を使用し、その先、実際に顧客の工場と接続するところは通信回線やコストなどさまざまな制約があるため、別途リモートアクセスソリューションの導入が必要となった。
「お客様設備においてはセキュリティに対する要求が高いことが多く、単純にインターネットで接続すればいいというわけではありません。ソリューション選定に当たっては、何よりセキュリティの高さを重視し、そのうえで導入・運用の手間やコストが少ないものを探していました」と神戸氏。さらに神本氏も「お客様側の設備担当者はもちろん、当社でリモートサービスを担当するエンジニアも、IT機器に精通しているとは言えない場合が考えられます。そこで、ネットワークの高度な知識・スキルがなくても扱えるシンプルなものを探していました」と語る。
セキュリティと導入・運用の容易さが選択のポイント
選定に際しては複数のソリューションを比較検討した。あるソリューションは制御システム内のクライアントPCをインターネットに直接接続する必要があり、セキュリティ上の懸念があった。また、一般的なSSL-VPNの適用も模索したが、サーバーのセキュリティ対策や運用・保守には知識とスキルが必要であり、アクセス管理の面でやはりセキュリティ確保が難しいことから、よりニーズに適したソリューションを求めた。
そうした検討の結果、TMEICが選んだのが、顧客設備とリモート接続用ネットワークとを結ぶSecomeaの「SiteManager」(ハードウェア版)と、顧客設備のクライアントPCを介してリモートメンテナンスを可能とするオプション機能「LogTunnel」だ。
「SiteManager」はあらかじめ登録した機器のみをリモート接続対象とする産業用IoTゲートウェイ。顧客工場およびTMEIC拠点の双方に適用することで、ソリューション全体でインターネットに直接接続するのはこの「SiteManager」のみとなり、顧客設備のリモート調整・保守用クライアントPCや工場の制御システム、およびTMEIC拠点のリモートアクセスPCはインターネットから隔離され、外部に接続できない仕様だ。このため、極めてセキュアな環境を実現できる。TMEICは国内の代理店から紹介を受け、自社で試験導入したうえで採用に踏み切った。
「クライアントPCと制御システムには特別なソフトの導入が不要ですし、GateManagerを介した接続許可設定もわかりやすいGUIになっているので、高度な知識やスキルがなくても管理・運用できる点を評価しました。SiteManagerは小型で持ち運べるため、モバイル環境でのリモートアクセスにも適します。また、お客様の工場にはさまざまな種類の設備やツールがあり、状況に応じてメンテナンス内容も異なります。こうしたメンテナンスを汎用的に行えるようにするためにも、LogTunnel機能が必要でした」と神戸氏は話す。
明確な効果を実感。加速するニーズへの対応も進める
Secomeaソリューションを導入した結果、顧客のクライアントPCや制御システム、およびTMEIC拠点のリモートアクセスPCをインターネットに直接つなげることなくリモートアクセスを実現し、顧客と遠隔で情報共有しながら自由度の高いメンテナンスが可能になった。とくに、画面やログをベースにTMEICのエンジニアが効率的にデータを解析し、状況によっては対策までを一貫して行えるようになったことで、顧客設備のダウンタイム低下と稼働率向上を達成している。それだけでなく、サーバーはSecomeaにより運用・保守されているため、顧客はサイバー攻撃への対応やシステムアップデートなどの作業が不要となっている。
「お客様からは、装置の仕様や詳細がわからなくてもマニュアルの手順通りに進めれば、簡単に導入・運用できるという声をいただいています。当社側としても、脆弱性の悪用による不正アクセスのニュースなどを見るにつけ、コストを抑えながら高い堅牢性と使いやすさを実現するSecomeaのソリューションに満足しています。特に海外などのIP-VPN閉域網メインエリア外でのリモートアクセス手段として、セキュリティレベルが非常に高くベストソリューションだと考えています。以前なら出張しなければならなかった対応をリモートで行うことができ、迅速性が高まったほか、お客様のコスト節減にもつながっています」と神本氏は評価した。
一方、神戸氏は、コロナ禍でリモートサービスの利用が加速した現状を踏まえ、今後の展望を語る。
「既に導入した設備は計画のなかの一部に過ぎず、まだ適用を拡大中ですが、明確な効果を感じていますし、ニーズも確実に増えています。何かが起きたときスピーディーに対応できる環境を整えるため、リモートサービスをさらに広げていきたいと考えています」
[PR]提供:Secomea