Webサイトへのアクセスの際に「クッキー同意」を求められるケースが増えてきた。クッキー同意は、Webサイトを閲覧したユーザーのクッキー(Cookie)情報を、サイト運営者がどう利用するかについて、アクセスする者に同意を求めるものだ。

ただ、クッキー同意がなぜ必要なのか、そこにどんなリスクが潜んでいるのか――。それらを知らずに対策を講じていない企業も少なくなく、それは上場企業が集中する都市部よりも、地方の中小企業ではより顕著な傾向がみられる。

12月3日、一般社団法人長野県経営者協会(以下、長野県経営者協会)傘下の会員企業・団体を対象としたインターネットイニシアティブ(以下、IIJ)のセミナーが開催され、企業として把握しておくべきクッキー規制の概要や具体的な対策の講じ方などを解説した。その内容と、地方の中小企業がクッキー対策を講じるべきその理由について、本セミナーを企画した長野県経営者協会教育研修部次長 磯貝勇悟氏のインタビューから紐解いていく。

クッキー同意管理は企業の誠実さと信頼性の水準を示す「経営品質」

セミナーの講師は、IIJのビジネスリスクコンサルティング部長 中西康介氏が務め、『ブランドを守る経営判断 Webサイトの「経営品質」としてのクッキー同意管理』と題して、Webの仕組みやクッキーの役割、ターゲティング広告の基盤となるサードパーティクッキーの仕組み、日本企業の現状と、クッキー対応が不十分なことによって信頼を失うリスクなどを解説した。

欧州(EU)のGDPR(一般データ保護規則)や米国のCCPA(カルフォルニア州消費者プライバシー法)などでは、ユーザーの不利益につながらないようにサイト運営者に対してクッキーの厳格な取り扱いを求めている。日本企業が欧州や米国でビジネスを展開する際には、これらへの対応が必要だ。

また、国内でも、電気通信事業法や個人情報保護法においてクッキー規制への対応が求められている。今後は、欧米と同水準の規制が適用される可能性もあり、グローバルスタンダードな法規制へ対応する重要性はますます高まっている。こうした事実を踏まえ、中西氏は次のように語った。

「Webサイトを見たユーザーは、サイトを通して『この会社は信頼できるかどうか』を見ています。その意味では、クッキー同意管理は、企業の誠実さと信頼性の水準を示す『経営品質』だと言えます。日本では海外のように厳格な『同意』までは求めていませんが、法規制の有無に関わらず、顧客から信頼されるための最低水準と考えるのがよいでしょう。曖昧な実装や形だけのバナーは、ブランドの信頼を損なうリスクにつながりますが、「嫌なら止められる」という安心感は、企業のブランド信頼を高めることにつながります」(中西氏)

また、経営者が下すべき「2つの決断」として、リスクの総点検と可視化、誠実なUIへの刷新と投資判断を挙げた。

「リスクの総点検と可視化では、チェックシートでサイト全体を診断したり、ダークパターンの洗い出しを行います。また結果を画面や機能ごとに一覧化し、社内で共有することも重要です。経営者は、現状のリスクと課題を確認するための調査を指示します。また、誠実なUIへ刷新するためには、まずはダークパターンに陥らない誠実なUIへ改める方針を決定します。また機能していないバナーを実装する『なんちゃって実装』に頼らず、適切なクッキーバナーツールの導入を前提にし、是正のための予算・体制・日程を確保することが重要です」(中西氏)

  • (スライド)経営者が下すべき2つの決断

IIJでは、クッキー同意管理ツール「STRIGHT(ストライト)」を提供しており、セミナーではSTRIGHTの概要や機能解説も行われた。セミナーに参加した経営層からは熱心な質問も飛んでおり、関心の高さを伺わせた。

長野県経営者協会に聞く、セミナー企画の狙いと地域経営者のニーズ

今回の長野県経営者協会によるセミナー開催は、地方の商工団体ではさきがけの事業と言えるだろう。本セミナーを企画した長野県経営者協会教育研修部次長の磯貝勇悟氏に、企画の狙いやセミナーへの反響などを聞いた。

─長野県経営者協会とはどのような団体なのでしょうか。

(写真)長野県経営者協会 教育研修部 次長 磯貝勇悟氏

長野県経営者協会 教育研修部 次長 磯貝勇悟氏

長野県経営者協会は、県下企業・団体を中心に構成される、一般社団法人日本経済団体連合会(以下、経団連)傘下の総合経済団体です。

─今回のセミナー実施の背景を教えてください。

経営者協会に所属する県内企業でも、上場企業ではWebサイトのクッキー対策は進んでいるように感じていますが、中小企業では、クッキーそのものを知らないため、きちんと対策を講じている企業は少ないようです。 近年は長野県でも訪日観光客にサービスを提供している企業も増えており、会員企業のみならず公的機関のWebサイトにアクセスしても依然として対策が進んでいないことなどから、啓発事業の一環として、IIJさんの協力を得て、今回のセミナーを企画しました。

─地元企業からクッキーバナーに関する相談などはありますか。

まったくありません。と言うのも、長野県経営者協会は総合経済団体ではあるものの、情報系の専門団体ではないと言うこともあるかと思います。ただし、ITリスク対策は、現代経営の根幹に関わる生命線です。長野県経営者協会では、早くから個人情報保護法をテーマとしたセミナーを都内の著名な弁護士、大学教授等を招聘したり、JIPIDEC(一般財団法人日本情報経済社会推進協会)にも協力いただいたりしながら実施してきましたし、マイナンバーの普及啓発事業については全県下で実施してきました。グローバルな事業展開を図る県内企業もあることから、EU GDPRへの対応セミナーも実施してきました。そのような中で、私個人としても、個人情報保護士、上級個人情報管理士の資格を取得し、事業企画に役立てています。今回のセミナーは、中小企業への啓発事業として、この分野でよく知られているIIJさんにお声がけし、企画したものです。

クッキー規制に対応する必要性やメリットを肌で感じてもらいたい

─本セミナーのねらいとは。

対応の必要性やメリットを肌で感じてもらうことです。GDPRのセミナーのときは、違反した際の制裁金が全世界年間売上高の4%と高額だったこともあり、大きな話題になっていました。ただ、長野県を見ると、海外取引を行う一部の上場企業が迅速な対応する一方、中小中堅企業は、法の動きを知らない、関心がない傾向がみられる、というギャップがありました。

こうしたギャップはクッキー同意でも同様に見られるのですが、クッキー同意の場合は、直接的なメリットにつながります。たとえば、サイト運営者が適切に対応することで、ユーザーが面倒だと感じることを解消できますし、それによってブランドの信頼性を高めたり、サイトアクセス数を増やしたりできます。

─セミナーの企画にあたってIIJにリクエストしたことはありますか。

「クッキーって何?」等の基本的な知識を丁寧に説明していただくということに加え、クッキーの重要性やクッキーバナーの必要性を把握していただきたいと思いました。また、消費者の目線で見ると、同意のバナーが頻繁に出てきて、設定を行うのが面倒だと感じるケースが増えています。サイト運営者には、自社サイトを訪れる消費者に対してそうした負担を強いていることをわかるようなセミナーにしてほしいとお願いしました。

─長野県では、クッキー同意管理に取り組んでいる企業は増えているのでしょうか。

まだ少ないと思います。これから対応の必要性を感じる企業が増えてくると思います。その際に、ダークパターンのような誤った対応をしてしまうケースが増え、企業の信頼性を損なっていくリスクを招くことは避けたいですし、会員企業を守るためにも適切な情報提供は必要です。消費者への対応という点では、行政にも積極的に取り組んでほしいテーマです。

  • (写真)長野県経営者協会 社屋

    長野県経営者協会

インバウンド需要の高まる地方企業こそ、理解を深めてほしい

─セミナーの反響について教えてください。

事務局が予想する以上に関心をもっていただきましたし、参加された方のなかには熱心に質問されている方もいらっしゃいました。

実際に参加された方のほとんどが、クッキーバナーについてまだなんの取り組みをしていないということだったのですが、「今まで知らなかった重要なことを学べた」「クッキーについての基礎理解とバナーツールの設定背景がしっかり理解できた」「Google Analyticsがクッキー規制を受けることを知れて良かった」など、基本を理解できたという声を多くいただきました。印象に残った内容としては、ダークパターンの説明を上げる方が多かったですね。

やはり若い世代の社員の方々を中心にクッキーにも関心を持たれる方が増えているように感じています。こうした方々が自社の経営層に対して適宜報告されることで、経営層の理解も進んで、対策につながっていくのではないか期待しています。

─今後の展開を教えてください。

Webサイトを通して、グローバルな事業展開を視野にいれた事業活動を展開したいと考えるなら、進出先各国の法体制を事前に調査のうえ対応しないと大きなリスクにつながりかねないと思います。長野県はインバウンド観光客も増えていることから、特に観光業はじめサービス業に関わる企業・団体が、デジタルマーケティングにおける消費者のプライバシー保護について意識高く対応を進めるべきではないかと考えています。リスク対策と言う点においては、行政機関主催の定期セミナーによる啓発などの地道なサポートがもっとあってよいのではと考えており、今後に期待しているところです。また取引先への要請などサプライチェーンのなかで、取り組みが進めばよいと考えています。そうした取り組みに向けて、長野県経営者協会では今後も経営に役立つ情報の提供に努めていきます。

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