近年、世界各国で個人情報やプライバシー保護に関する法規制が強化されている。ユーザーの行動データ取得やターゲティング広告に不可欠なクッキー(Cookie)の取り扱いは、GDPRやCCPA、電気通信事業法改正などにより規制強化されてきた。その結果、企業はWebサイト上でクッキー取扱いについて、情報提供、ユーザーの同意、オプトアウト権を付与する機会を設けることが求められ、クッキーバナーの表示や同意管理プラットフォーム(CMP:Consent Management Platform)の導入が一般化しつつある。
一方で、マーケティングデータの分析を行う現場では行動データへの依存度が高く、「取得しなければ、正しくターゲティングできない」という事情が存在する。このため企業は「法規制に対応すること」と「ビジネス成長のためのデータ確保」という要請の板ばさみになっている。こうした背景を踏まえ、インターネットイニシアティブ(以下、IIJ)が1月21日に開催したウェビナーでは、日々マーケティング支援に従事しているパネリストを招き、CMP導入の必要性や現場課題、法規制に対応しつつ、マーケティング効果を取得する方法について紹介した。本記事では、本ウェビナーの模様をレポートする。
-

(左から)株式会社インターネットイニシアティブ ビジネスリスクコンサルティング本部 加藤 博一氏、アユダンテ株式会社 シニアカスタマーサクセスコンサルタント 高田 和資氏、Yuwai株式会社 代表取締役 田中 広樹氏
サイトの信頼性に影響?─CMPがなぜ必要なのか
セミナーの最初のテーマとなったのが、「なぜ今クッキーバナーとCMPなのか」である。
STRIGHTの運用責任者を務めるIIJ ビジネスコンサルティング本部の加藤 博一氏は、クッキーバナーの必要性について、法規制対応と企業の社会的責任の2つの視点があると述べた。そして法規制対応では、クッキーが日本以外の国では個人データとして扱われている現状を説明した。
具体的には「欧州では、アナリティクスやターゲティング等のクッキーを取得する前の同意が原則必要となっています。米国では取得は許されますが、オプトアウト権(拒否権)の付与が必要になります」と述べた。
-

株式会社インターネットイニシアティブ ビジネスリスクコンサルティング本部 加藤 博一氏
日本ではクッキーが個人情報に該当するケースは限定的だが、2023年6月施行の電気通信事業法改正では外部送信項目の説明義務が強化され、送信先のサービスの名称、利用目的、送信される利用者情報の内容を明示する必要が生まれた。
加藤氏は、法規制が地域や国ごとに異なる形で存在し、適切な同意管理を行うためにはCMPの導入が必須になっている点を指摘。「日本でもインバウンド関連で海外からお客様をお迎えすることがあり、その中にはプライバシーにセンシティブなお客様がいると思いますので、そういった意識のマーケティング施策を考えた方が良いと思います」と述べた。
同氏は、「企業の社会的責任」という視点では、Webサイトの透明性の確保と本人関与機会の提供(嫌な人はクッキーを拒否できる機会を提供すること)が大事だと述べた。法対応以前に、義務がない国でも最低限のマナーとして実施しておくべきだと強調した。
「これはWebサイト訪問者から信頼を獲得するためのスタンダードになっていると考えています」(加藤氏)
グローバル視点で見たデジタルマーケティングの「最低条件」
続くパートでは、Googleアナリティクス(GA)の有償版導入の支援を行っているアユダンテシニアカスタマーサクセスコンサルタント高田 和資氏、EC領域を得意とする運用型広告コンサルタントでYuwai 代表取締役の田中 広樹氏の2名をゲストパネリストに迎え、現場の意見としてのクッキーバナーおよびCMPの必要性の高さについて紹介した。
高田氏はGA導入支援の立場から、EUにサービスを展開しているところではクッキーバナーが必須なことに加え、データを記録し分析する部分でも、しっかりとした対応が求められている印象があると述べた。
「クッキーバナーは世界的にも必須の機能になってきています。今後デジタルマーケティングを継続するためには、クッキーバナーは最低条件だと考えています」(高田氏)
-

アユダンテ株式会社 シニアカスタマーサクセスコンサルタント 高田 和資氏
一方、田中氏は広告運用支援の視点から、自社サイトにSTRIGHTを導入した経緯を紹介した。
「情報発信としてブログを活用しており、それが電気通信事業法上の情報提供サイトに当たる可能性があることから、Webを開設した当初から導入しています」(田中氏)
-

Yuwai株式会社 代表取締役 田中 広樹氏
またYuwaiでは、国内向けに書いた記事を英語に翻訳し海外に提供する際に、国内法と海外法双方に対応する必要性を感じ、STRIGHTに乗り換えたという。
高田氏は、実際のCMP導入では、コンバージョン数が減ることを懸念するマーケティング部門と、しっかり法令を遵守したい法務部門で思惑が異なり、スムーズにCMP導入が進まないケースが多いと述べた。その上で、国ごとの法令要件の知識があり、それにしっかり対応できているベンダーのCMPツールを選択することがポイントだと指摘した。
加藤氏は、高田氏が指摘した点について「STRIGHTでは各国の法規制に対応したテンプレートを用意しています。2026年1月にCCPA規則が改正されましたが、このような規制のアップデートに随時対応し、テンプレートを更新しています。また、ご指摘のあった『CMP導入における部門横断的な調整の難しさ』については、多くの企業が共通して抱えている悩みだと感じています。STRIGHTには『スポットサポート』というオプションがあり、バナーの設定やWebサイトへの実装、運用上のトラブルに関する技術的な質問に加えて、法対応に関するご相談にも、IIJの専門技術要員およびプライバシーコンサルタントが対応いたします」と回答した。
クッキーバナーを「資産」に変える方法とは?
セミナー中盤では、企業がCMP導入で懸念する「データが取れなくなるのでは?」という点への解決策に焦点が当てられ、3つの方法が紹介された。
■クッキーバナーを初期表示しない
加藤氏は「STRIGHTの計測データをもとに分析すると、クッキーの拒否率を下げるには、日本国内では『初期表示しないバナー(出さないバナー)』を設定する事も選択肢の1つです」と語った。同氏はクッキーバナーを初期表示すると拒否率は7.4%であるのに対し、ホバーボタン(バナーを閉じたときなど、詳細機能を呼び出すボタン)での対応にした場合の拒否率は0.1%前後に抑えられていると説明する。
「拒否率を抑えたい場合には、バナーを初回表示せずフッターにプライバシー設定のメニューやホバーボタンを設けるなど、拒否(オプトアウト)行使のインターフェースを設ける設定も1つの選択肢と考えています」(加藤氏)
高田氏も「EUでは、実際にCMPツールを入れたときのユーザー同意率は20~30%と言われており、日本においては出さないバナーの方がデータの欠損が少なくなる印象があります」と述べ、加藤氏の意見に同意した。
■Google同意モードを利用する
また、高田氏はクッキーが拒否された場合に欠損データを補完する仕組みとして、Google同意モードを紹介した。
Google同意モードは、拒否したユーザー分について、過去の傾向やGoogleのシグナルを用いてGooogle広告やGoogle アナリティクスで欠損したデータをモデル化による補完を行う仕組みだ。高田氏は自身の支援経験上、拒否されたユーザーの10~30%程度のデータ補完が期待できると述べた。加藤氏は、STRIGHTはGoogle同意モードv2に対応していると紹介した。
■クッキーバナーを「信頼のタッチポイント」にする
解決策の3つ目として、クッキーバナーやプライバシー対応をブランディングの一部として捉えるケースが紹介された。
高田氏は「クッキーデータの取り扱いを明示するケースが増えており、『この会社はしっかりとデータを扱っている』という透明性の向上が、企業の信頼度につながります」と指摘した。
加藤氏は、「我々は各国でデータ保護法令のコンサルをしていますが、どの国の法令でも情報提供をしっかり行うことが基本になっており、安心感につながる指標だと思っています。Webサイトは『企業の顔』でもあるのです」と語った。
辞書拡充・法対応テンプレート・スポット支援─運用負荷を減らす工夫
セミナーの後半では、CMP導入後の実務課題が議論された。
高田氏は、CMP導入後に発生しやすい課題として「広告タグの分類と同意の紐づけ」を挙げた。
「これまでは法務やデータ管理部門を通さずにタグを設置するケースが多かったですが、CMPが入るとどうしても同意の振り分けや同意が動作しているかの検証フェーズが入ってきます。それが運用する人に浸透するまでが大変だという印象です」(高田氏)
一方田中氏は、「使っているタグ自体が外部のサーバーからプログラムをダウンロードしてアップデートすることがあり、気がつくと意図していない機能が検出されたり、想定していないクッキーが発行されたりすることがあります。『このクッキーはどこから来ているのか』の調査が発生しますが、それを除けばSTRIGHTの運用自体にはそれほど負担を感じていません」と語る。
加藤氏は「ご指摘いただいた不明なクッキーについては、なるべく検出されないよう、辞書拡充を含め日々サービスの改善に取り組んでいます。また、不明なクッキーの具体的な調査方法については、今後資料にまとめ、管理コンソールのFAQに公開する予定です。公開後はそちらも参考にしていただければ幸いです」と説明した。
意図せず違反になるケースも─ダークパターンとの境界線
セミナーの終盤では、ダークパターン問題が取り上げられた。ダークパターンとは、ユーザーの意思に反する行動へ誘導するUI設計を指す。具体例としては、「閲覧を続ける場合はクッキーの利用に同意したとみなす」「拒否ボタンがない」といったものがある。
「クッキーウォールといって、クッキーに同意しないとコンテンツすら閲覧できないものが典型的なダークパターンとして定義されています」(加藤氏)
高田氏は「同意してほしいという意図で作ったデザインや機能が、意図せずダークパターンに抵触して違反になるケースもあるので注意が必要です」と指摘した。
一方で田中氏は、国内の場合、CMPとして提供されるUIを用いればダークパターンになる危険性は低いと述べた。
そして最後に加藤氏は、ダークパターンは法的問題であると同時に倫理的問題でもあると位置づけ、「ウェブサイトにおける透明性の確保は、誠実なビジネス姿勢を示すものであり、長期的な信頼を形成する基盤」であると強調してセミナーを締めくくった。
世界各国では、個人情報やプライバシーの保護に関する法規制が強化されており、欧米ではクッキーバナーの表示が必須となっている。一方、日本国内では必ずしもクッキーバナーを表示する必要はなく、バナーを表示することでユーザーがデータ取得を拒否する割合が増え、結果としてデータ欠損が発生してしまう。データが十分に取得できなくなると、広告の最適化や広告費用対効果(ROAS)、LTV(Life Time Value)の分析精度にも悪影響を及ぼす可能性がある。こうした問題を避けるには、各国の規制に合わせて最適なバナー表示を行えるCMPを選ぶことが重要となる。STRIGHTは、まさにこれらの要件を満たすCMPだといえる。
クッキーをめぐる規制への対応は、企業にとって窮屈な制約ではなく、むしろ信頼に変えるチャンスとなりつつある。今回のセミナーは、この点を学ぶ良い機会になったといえるだろう。
[PR]提供:インターネットイニシアティブ






















