自動車のEV化の波が押し寄せ、昨今の自動車の内部構造は大きく変わりつつある。たとえば最近はウィンドウ開閉やドアミラーの調整が手動になっている自動車はほとんど見なくなるなど、自動車の高機能化が進んでいる。その結果として、現在の自動車には多数のモータが内蔵されるようになってきている。そして多数のモータが必要ということは、これを制御するための回路もまた必要になり、システムの複雑化や製造原価の上昇といった事態を招くことになる。とはいえ、モータを減らすわけにもいかないため、いかにモータ制御をスマートに行うかということが重要になる。

こうしたスマートなモータ制御実現に向けてInfineonは4種類の半導体ソリューションを提供する。この4種類のソリューションについて、インフィニオン テクノロジーズ ジャパン株式会社の鰕名孝行氏にお話を伺った。

  • [写真]インタビューに応じる鰕名孝行氏

    インフィニオン テクノロジーズ ジャパン株式会社
    オートモーティブ事業本部 ヴィークルUX&E/Eアーキテクチャ システムアプリケーションエンジニアリング
    プリンシパルエンジニア 鰕名孝行氏

ボディエレクトニクスモータ制御に求められる4つのニーズ

モータと一言で言っても、その用途は多岐にわたる。EV向けのパワートレインや、操縦を補助する電動パワーステアリング用モータなどは出力も大きいことや安全性の担保に配慮が必要だ。そのほか現在の車両で使われているモータの用途は概ね図1の通りだ。

  • 図1

まずドアコントロールシステムとして、ドアロックやミラー制御(角度調整と開閉)、ウィンドウ制御、ドア解放時の照明などがあり、クロージャーシステムではテールゲートの電動開閉やサンルーフの開閉、一部スライドドアを搭載した車種ではこのスライドドアの開閉などにもモータが使われるようになってきた。また、ハイグレードな車種ではシートコンフォフォートシステムが搭載されており、シートポジションの調整や記憶、ベンチレーション(冷暖房機能)、さらにマッサージ機能が内蔵されていたりする。

このあたりまでは従来の内燃機関型車両でも搭載されているが、EVの場合はこれにサーマルマネジメントシステムが加わる。内燃機関の場合はクランクの回転を取り出して、冷却ファンや水冷ポンプ/オイルポンプを駆動できるうえ、冷房と暖房はエンジンの排熱に利用することが出来る。ところがBEVではエンジンがないため、必然的に熱管理専用のモータを用意する必要がある。

E/Eアーキテクチャの進化に対応した4種類のソリューション

これらのニーズに対し、InfineonはMOTIX™シリーズとして4種類のソリューションを提供している(図2)。

  • 図2

まずは単体のゲートドライバである「MOTIX™ Driver」、MOSFETまで統合したのが「MOTIX™ Bridge」だ。「MOTIX™ SBC」はゲートドライバにCAN/LINのI/Fと電源まで統合した製品で、これに加えてMCUまで統合したのが「MOTIX™ MCU」ということになる。基本はゲートドライバとしての機能を備え、用途やモータの種類などに応じて必要な周辺回路を統合する形でラインナップが構成されている。

昨今の自動車向けシステムはドメインアーキテクチャ(用途別に機能を整理・統合する)から、ゾーンアーキテクチャ(場所にあわせて機能を整理・統合する)を経て、最終的には統合ECUを利用したセントラルゾーンアーキテクチャに向けて舵を切っている(図3)。

たとえばドアミラーはかつて開閉とミラー角度制御で3つのモータを3つのMCUで制御していたのを、ゾーン化によりミラーあたり1つに集約され、ドメイン化では両方のミラーをまとめて一つのMCUで制御するというように、次第にニーズが変化している。こうしたニーズの変化に対応できるように、MOTIX™シリーズは多彩なラインナップを用意しているわけだ。

  • 図3

MOTIX™ Driver (外部MOSFET駆動)/MOTIX™ Bridge (MOSFET内蔵)

MOTIX™シリーズの中で、比較的シンプルなのがMOTIX™ Driver(図4)とMOTIX™ Bridge(図5)である。まずMOTIX™ Driverは、駆動電流の多い大出力モータ向けである。こうした用途ではまだMOSFETを外付けで使うことも多く、一つのドライバで複数のモータを制御することもある。そこで、最大4つないし8つのハーフブリッジの制御を可能にしたのがMOTIX™ Driverの「TLE92104/08」である。最大3つのPWM入力やブレーキモード、電流センサアンプなどを搭載し、既存のデザインなどにも簡単に利用できるのが特長である。

  • 図4

MOTIX™ Driverに、最大75A(過電流検出)のMOSFETを組み合わせてワンパッケージ化したのがMOTIX™ Bridgeで、シングル ハーフブリッジの「BTN9960/70/90」、「BTN7030」の4製品と、最大12個のハーフブリッジ出力が可能な「TLE94103/04/08/10/12」の2つのラインナップが用意されている。シングル ハーフブリッジはシート制御や燃料ポンプ、スライドドアやテールゲート、さらにエアコンなどの大出力のモータに向いており、マルチ ハーフブリッジは駆動電流が0.9A(過電流検出)以下など出力が小さい代わりに個数が多いもの、たとえばドアミラー制御やエアコンの風向制御などの用途に適している。

  • 図5

MOTIX™ SBC/MOTIX™ MCU(マイコン、電源、CAN/LINなどを内蔵 )

MOTIX™ Driver/MOTIX™ Bridgeからより集積度を高めたのがMOTIX™ SBC(System Basis Chip)である(図6)。MOSFETそのものは外付けになっているので、比較的パワーのある(=電流の大きな)モータでも問題なく制御できる。既存のデザインをゾーンアーキテクチャに置き換えるといったケースでも非常に便利な製品であり、すでに利用しているMCUを生かしながら全体の性能の向上や高機能化が可能だ。MOTIX™ Driver/MOTIX™ Bridgeにも共通する特長だが、MCU側とのI/Fはデジタル化されているので、統合も容易となっている。目的に応じてCANとLINの両方が利用可能で、ゾーンアーキテクチャへの移行の助けとなる。

  • 図6

そこからさらに機能を高集積化したのがMOTIX™ MCUである(図7)。MOSFET以外の全てのコンポーネントが搭載されているので、それこそリレーを利用して構築されていたような旧来の設計を完全に置き換えるといったケースで効果的である。モータの種類に合わせて複数の製品が用意されており、また複数のメモリ容量を持つ製品ランナップを用意するなど、幅広いニーズに応えられるように工夫が凝らされている。MOTIX™ MCUは2014年に発売を開始しており、以降ラインナップが増え続け、今後もさらにラインナップを拡充する予定である。

  • 図7

幅広い製品ラインナップでカーボンニュートラル時代に臨む

今回は12V系ゲートドライバを中心にInfineonの製品ラインナップを紹介したが、そもそもInfineonはパワー半導体全般に強みを持つ会社なので、MOSFETにおいては豊富なラインナップをそろえている。ほかにも、MOTIX™ SBCは外部のMCUを組み合わせる前提であるが、これに対してInfineonは「TRAVEO™ T2G」という自動車向けMCUをラインナップしている。

また図2では、上部6つのHexのうち一つ"(Optional)Sensor"が4ソリューションともグレーアウトされている。これはアプリケーション要件としてセンサーに対応できるということを意味するが、そうしたセンサー群についても「XENSIV™」というブランドで製品展開しており、車載向けのグレードに対応したものも当然ラインナップされている。

カーボンニュートラルが強く求められるようになっている昨今において、自動車のエネルギー効率向上のニーズは非常に強いものがある。これを実現するためには、より自動車内部のエネルギー効率を高めていくしかない。たとえば現在では、特に価格面が主な理由となってブラシDCモータが大量に使われているが、今後は次第により効率の良いBLDCモータに移行が進んでいくだろう。その際にはより複雑なモータ制御が必要になる。自動車のモータの数がさらに増えていくことは避けられず、単純にブラシDCモータをBLDCモータに置き換えるだけでは省電力化の効果は薄い。いかにBLDCモータを効率的に稼働させるかがポイントであり、そのためには優れた半導体とそれを生かすアルゴリズムが求められる。

さらにエネルギー効率を高める方法として、車内の48V化が有望視されている。ただこれは現在の電装システムの総入れ替えに繋がりかねないので、対応は長期に渡ることになるだろう。Infineonはこうしたトレンドにも対応していく。効率の良いゲートドライバやMOSFETを提供することで、ブラシDCモータを使う場合でもより省エネルギー化を実現し、BLDCモータの効率的な制御に必要な高い処理性能を持つMCUも提供している。また、すでに48Vに対応した製品ラインナップも提供開始している。新規設計だけでなく、既存のシステムの改修や刷新といった要件であっても、一度Infineonの提供する半導体ソリューションを当たってみることをおすすめしたい。

  • [写真]鰕名孝行氏

関連リンク

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