「2020 Symposium on Technology and Circuits(VLSIシンポジウム2020)」におけるメモリ分野では、日本、台湾、韓国から注目するべき発表として5件の最先端研究が披露された。
RRAMアレイの3次元集積化に東大が成功
東京大学(東大)の研究者らは、IGZOチャネルのアクセストランジスタを用いることで抵抗変化型メモリ(RRAM)セルアレーをモノリシックに3次元積層し、3次元ニューラルネットワークの実現に向けたインメモリコンピューティングの動作実証にはじめて成功したことを披露した。
3次元積層構造の各層での均一な1T1Rセルのメモリ特性を示し、バイナリニューラルネットワークの基本演算であるXNOR演算を実験的に示したほか、RRAMセルのビットエラー率がニューラルネットワークの認識率に与える影響も調査したという。
同技術によって高い面積効率、低消費電力、低レイテンシーを実現するハードウェアニューラルネットワークの実現が期待される。
半円筒形状の微細3D NANDをMacronixが開発
台Macronix Internationalは、大きなメモリウインドウを実現する半円筒形状の微細3D NAND素子の発表を行った。
半円筒型3D NAND素子は通常のGAA型3D NAND素子と比較して32%程度のセル面積となり、10Vより大きなメモリウインドウと10万回の書き換え耐性を有するという。
素子サイズの影響を調査したところ、大きな(高い)素子では端面のリークによる書き込み飽和が起こる可能性が示されたため、強い消去パルスでゲート側から電子を注入する「wake up効果」を活用することで、端面のリークを抑え、大きなメモリウインドウが実現できることもわかったという。一方、小さな素子ではwake upなしでも大きなメモリウインドウが実現できるとしている。
また、書き込み消去サイクル後の保持特性やランダムテレグラフノイズ性能も良好だったとしている。
16TビットのNAND技術をSamsungが報告
韓Samsung Electronicsは、PCIe Gen 4ホストインタフーェスに対応するため、NANDチップスタックとホストコントローラを高スループットで接続するインタフェース技術を発表した。
第3世代目となる同チップはピンあたり1.8Gb/sのスループットを実現している。前世代比で35%の高速化を実現するとのことで、サンプルタイミングや読み出し時に問題となるクロックのデューティ比の誤差を補正するセルフテスト回路技術の開発により、さまざまな問題の解決を図ったとしている。
4重界面垂直磁気トンネル接合(MTJ)を東北大が実現
東北大学の研究者らは、300mmウェハを用いた独自のPVD技術、エッチング技術および、ダメージ制御されたインテグレーション技術によって33nmまで縮小した4重界面垂直磁気トンネル接合(MTJ)の作製に関する報告を行った。
開発された33nmの4重界面磁気トンネル接合は、より高い書き込み効率と低ダメージプロセスインテグレーション技術により、1011以上という優れたエンデュランス特性を実現したという。
研究グループでは、この4重界面磁気トンネル接合技術が、1X nmノードまでの優れたスケーラビリティを備えた、低パワー、高速、高信頼性を実現するSTT-MRAMの有望な製造手法であると位置づけている。
急冷法で大きな分極を実現した強誘電薄膜を漢陽大学が報告
韓国の漢陽大学校の研究者らは、大きな残留分極(Pr)と抗電界(Ec)を有するアルミニウムをドープしたHfO2(Al:HfO2)強誘電薄膜の作製に成功し、2Pr=100 μC/cm2および2Ec=~9.5 MV/cmの値が得られたとする研究成果を報告した。
この優れた強誘電特性は純水中で急冷することによって達成されたとのことで、特性改善はAl:HfO2薄膜内で発生した大きな応力/歪みによる直方晶の安定化に起因しているとする。書込/消去回数が106回以上、保持時間が10年以上の特性が得られ、フラッシュメモリ応用に期待されるとしている。
インメモリコンピューティングに適したメモリはどのタイプ?
なお、メモリに関するライブセッションも実施され、視聴者に対し、「インメモリコンピューティングに適したメモリは何か?」という問いが投げかけられた。その投票結果は以下のようのなものととなった。
- FeFET:27.3%
- RRAM:22.7%
- PCRAM:18.2%
- SRAM:18.2%
- MRAM:13.6%