「UCPSS 2025(The 17th Symposium on Ultra Clean Processing of Semiconductor Surfaces:第17回半導体表面の超クリーン化プロセスシンポジウム)」が、2025年9月、ベルギー・ルーベンの半導体研究機関imecに隣接した同機関の設立母体であるルーベン・カトリック大学(KU Leuven)工学部・理学部キャンパスで4日間にわたり開催された。世界中から過去最多となる350人余りの半導体技術者や研究者が参加し、日本からも60人以上が参加した。
同シンポジウムでは、チュートリアル4件、招待講演4件、一般講演52件(要旨講演付きポスター展示16件を含む)の合計60件の講演が行われた。発表者の所属する組織の所在国による国別発表件数は、以下の通り。
- 日本:16件 (招待講演2件、チュートリアル1件を含む)
- ベルギー:15件 (チュートリアル1件を含む)
- 韓国:12件 (招待講演1件、チュートリアル1件を含む)
- フランス:8件 (招待講演1件含む)
- ドイツ:5件 (SCREEN Germanyの4件を含む)
- 米国:3件 (チュートリアル1件含む)
- 中国:1件
日本から遠いベルギーでの開催にもかかわらず、日本からの発表が最多となった。また、ドイツからの発表のうち、4件はSCREENのドイツ子会社による発表(そのうち3件は日本人による発表)であり、これらを含めれば、日系企業・研究機関からの発表は20件に達する。発表者(筆頭著者)は日本人ではないものの共著者として日本人が入っている外国研究機関発表論文も6件あった。内訳としてはimecが3件、TEL Americaが1件、ほかにimec/セントラル硝子/SCREEN、imec/栗田工業/九州大学の6件である。
ISSCCやVLSI Symposiumなどの半導体国際会議の日本からの発表は長期にわたって減少傾向にあり欧米や近隣国(中国、韓国、台湾)から差をつけられて日本の存在感が低下するなか、日本には世界の洗浄装置市場でトップ争いをしている2大メーカーが存在し、中小洗浄装置メーカーや世界的な高純度薬液・純水メーカーも多数存在するなど、クリーン化・洗浄技術の分野については圧倒的な強さを持っていることもあり、この分野の日本の存在感は今もって際だっているといえる。
主な発表者が所属する組織別発表件数(2件以下省略)は、以下の通り。
- imec(ベルギー):13件
- SCREEN(日・独):9件
- 成均館大学(韓):4件
- 延世大学(韓):3件
- Samsung Electronics(韓):3件
- Grenoble Alps大学(仏):3件
- Technic France(仏):3件
会議の主催者はimecで、開催場所もimecの隣接地だったので、imecの発表件数がトップだったのは当然だとしても、日本の洗浄装置大手であるSCREENの活躍が目立つ。韓国勢は半導体メーカーと密接に共同研究する大学の活躍が注目される。
SCREENが半導体技術でimecなどと幅広く協業
SCREENグループからの発表は、以下のように多彩であり、うち3件がimecとの共著であり、imecに研究者(所属はSCREENドイツ法人)を派遣して先端ウエットエッチング・クリーニング開発の一端を担っていることがわかる。また、世界規模で大学や企業とも幅広く協業していることがわかる。
SCREENグループからの発表テーマと共同研究組織
- ナノ構造のパターン倒壊の流体・構造相互作用分析(大阪大学と共著)
- IPAナノスリット幅のIPA乾燥への影響:分子動力学分析(滋賀大学、統計数理研究所と共著)
- IPA乾燥時のSiウェハ上の金属汚染の推測モデル
- 電気化学インピーダンスを用いたウエットリンス工程のその場モニタリング
- 昇華乾燥法におけるナノ構造の安定性の強化(加トロント大学、加マックギル大学、京都工芸繊維大学と共著)
また以下の4件は、SCREENのドイツ法人であるSCREEN SPE Germanyから発表された。
- 高アスペクト比構造のダメージフリー枚葉昇華乾燥法(imec、SCREENと共著)
- 新規N型極性材料ZrOxおよびYOxのウェットプロセス(imec、SCREENと共著)
- スピン回転面洗浄時のエッジ濡れ性の流体モデリング(SCREENと共著)
- ナノ閉じ込め箇所の希H2O2を用いたTiNエッチングのpHの影響(SCREENと共著)
このほか、以下の1件はimecが発表したが共著者としてSCREENを含むものである。
- CFET集積の際のSiGe選択ウェットエッチ時に酸化膜表面機能化を用いたSiOx保護の強化法(imecが発表し、SCREENとセントラル硝子が共著者)
SCREENを除く日本からの発表は以下のとおりである。
- (チュートリアル)シリコンウェハ表面への汚染付着防止:ウルトラクリーンテクノロジー(ソニーOB)
- (招待)CMOSイメージセンサ製造プロセスにおける金属汚染制御(ソニー)
- ウエットエッチング後のIGZO表面形態の分析(ソニー)
- (招待)AI技術のウェットプロセスへの応用(キオクシア)
- 2流体スプレイ洗浄における飛散する水滴特性と酸化膜ウェハの表面電位の相関(愛知工大)
- エリア選択成長ALDのための自己組織化単分子膜(富士フイルム)
- PFASフリー表面改質および昇華乾燥による枚葉ウェハパターン倒壊緩和法(セントラル硝子、imecと共著)
- LA-GED-MSA-ICP-MSによるSiウェハ表面、エッジ、ベベルの金属汚染の分析(IAS)
- ロタゴニ乾燥中のメニスカスのマランゴニ対流のその場観察(荏原製作所、芝浦工大と共著)
- 3次元DRAM製造の為のSi層のSiエッチング液(三菱ケミカル、imecと共著)
- CMP洗浄液によるセリアパーティクルの溶解と除去(AGC)
日本からの発表は、エッチング・洗浄技術、洗浄・乾燥装置、薬液、デバイスと広範にわたるテーマを取り上げており、研究者の層も厚い。セントラル硝子と三菱ケミカルといった材料メーカーが先端デバイス製造用薬液をimecと共同開発(薬液メーカーが開発した新組成の薬液をimecが評価)していることがわかる。TELアメリカ法人からの発表は2件あったが、残念ながら東京エレクトロン(TEL)の日本法人からの発表はなかった。
なお、続く後編では、60件の発表から見るクリーン化・洗浄技術の最新動向を紹介したい。
(次回に続く)

