UCPSS2021は、以下に記すような8セッション構成であったが、それを見ると半導体洗浄技術に関してどのような分野の研究が行われているかをお分かりいただけるであろう。

  • パーティクル除去(5件)
  • 金属・有機汚染および汚染除去(7件)
  • 狭スペースのウェットプロセスとパターン倒壊(6件)
  • メガソニック洗浄の基礎的検討(5件)
  • FEOL(表面化学)およびIV族半導体(Si、SiGe)エッチング(5件)
  • FEOL(表面化学)およびIII-V族半導体(GaN、InGaAsなど)エッチング(4件)
  • FEOL(絶縁膜エッチング、マスク薄膜除去)(6件)
  • BEOL洗浄(7件)
  • CMP後洗浄(6件)

最多の7件の発表を行ったimec

UCPSS2021の主催者であり、ロジックデバイスのプロセス微細化で世界をリードするベルギーimecは今回7件の発表を行ったが、いずれも先進的なテーマに関する発表だった。ここでもimecに転職した日本人技術者の活躍が目立っていた。

imecは、シリコンに代わるキャリア移動度の高いMOSトランジスタのチャネル材料であるGeやSiGeのエッチングやパッシベーションに関する発表を2件、FinFETトランジスタの次の構造と言われるゲートオールアラウンド(GAA)プロセスの発表を1件と、いずれも次世代および次々世代デバイスのプロセスとして取り上げている技術。このほか、微細パターンの乾燥時の倒壊状況を調べるためのTEG(テストツール)、RuやMoなどの配線材料のエッチング、深溝構造内壁の濡れ性の分析手法などの発表も行っていた。

ちなみにデバイスが微細化が進めば進むほど深溝洗浄は困難になるが、STI(Shallow Trench Isolation)やコンタクトホールなどの洗浄に関して、STMicroelectronics、韓Hanyang大学、SCREENが報告を行った。

  • UCPSS2021

    表 UCPSS2021でベルギーimecが筆頭著者となっている7件の発表 (著者作成)

そのほかに注目を集めたテーマも以下に記す。

  • ドライエッチングなどのプロセス中に300mmウェハに付着した化学汚染物質がFOUPに保管されている間に、あるいはプロセスチャンバからの気流でFOUP内壁は汚染され、その後、そのFOUPに保管したウェハが化学汚染されることでパワーデバイスに欠陥が発生し、歩留まりが低下することをInfineon Technologiesのドレスデン工場が報告した。その化学汚染を分析し、全自動300mmパワーデバイス量産ラインでモニタする手法を独Fraunhofer Instituteが報告した。
  • アルカリ溶液TMAH中でのポリシリコンのエッチングについて韓Yonsei大学が考察し、水と溶存ガスがエッチング特性に影響を与えることを見出した、
  • SiNの選択エッチに従来から使われているリン酸に代わってホットDHFを用いることができればプロセスコストを節約できるが、水溶液中の酸素濃度を極限まで減少させないとシリコン腐食を発生することをSTMicroelectronicsが報告した。

優秀学生論文賞は韓国勢が独占

優れた発表を行った学生に送るBest Student Paper賞は韓国延世大学大学院学生のC.Son氏の「薬品を添加した過熱水中でのシリコン窒化膜の選択エッチング速度の制御」が選ばれた。また、Best Student Paperに順ずるOutstanding Student Contribution賞には、韓国漢陽大学のS. Sahir氏の「CMP後の洗浄におけるセリアパーティクル除去のためのPVAブラシ加重のメカニズム」と、韓国延世大学のJ. Na氏の「酸性水溶液中のInGaAsのマテリアルロスに対する表面酸化の影響」が選ばれるなど、韓国勢の活躍が目立つ結果となった。

なお、今回のシンポジウムで発表された51件の論文は、「Ultra Clean Processing of Semiconductor Surfaces XV」という書名の専門書にすべて収録され、スイスを本拠とする出版社から入手可能である(UCPSS事務局では扱っていないことに注意が必要)。

  • UCPSS2021

コロナ禍の中、次回の洗浄国際会議はいつ開催されるのか?

UCPSSは1992年以来、偶数年に開催されてきたが、今回の開催を踏まえ、次回以降は奇数年の開催に変更される予定。そのため、次回は2023年秋の開催が予定されている。ただし、その前に、姉妹会議である電気化学会(ECS)主催のInternational Symposium on Semiconductor Cleaning Science and Technology(SCST) が、2022年春にカナダ・バンクーバーで開催される予定であり、そちらの講演申し込み締め切りは2021年12月3日とされている。こちらも実際のところ、2021年秋開催予定であったものが半年先送りされたものとなっており、将来の洗浄国際会議での発表希望者は、開催時期の変更に注意が必要となっている。