隔年でベルギーにて開催されてきた半導体表面超清浄化処理/洗浄技術の国際会議(主催はimec、運営はルーベンカトリック大学(KUL))「International Symposium on Ultraclean Processing of Semiconductor Surfaces(UCPSS)」は、もともと2020年9月に現地にてリアルな会議として開催される予定であったが、新型コロナウイルスの感染拡大により、2021年4月に延期されていた。しかし、それでもパンデミックの終息はかなわず、結局、4月から5月にかけてオンライン/オンデマンド形式の「UCPSS2021」として開催となった。
UCPS2021では、世界10か国・地域から全部で51件が発表された。国・地域別では、日本が最多の15件、次いで韓国の12件、米国およびベルギーが7件、フランスが3件、オランダおよびドイツが各2件、イタリア、台湾、および中国が各1件ずつとなっている。半導体プロセス技術の中で洗浄技術は、日本勢がベルギーimecとともに世界をリードしている数少ない分野であり、国別発表件数も最多となっている。なお、すべての統計は、筆頭著者の所属機関および国で分類した。
ちなみに、半導体洗浄装置市場における日本勢のシェアは約70%(2020年、シェアトップはSCREEN、2位が東京エレクトロン)で、コーター・デベロッパの95%(主に東京エレクトロン)、酸化拡散炉の85%(東京エレクトロン、KOKUSAI ELECTRICが2強)に次ぐ日本の半導体製造装置メーカーの強い数少ない分野の1つである。
発表機関別の発表件数は、主催者でもあるベルギーimecが7件、次いで日本のSCREENが6件、韓国Hanyang(漢陽)大学が5件、慶應義塾大学が4件、韓国Yonsei(延世)大学、韓国Sungkyunkwan(成均館)大学、およびSTMicroelectronicsがそれぞれ3件と続く。このうち、SCREENは、imecに研究者を派遣するだけでなく、装置も持ち込んで共同研究を行っており、同社の6件の発表のうち2件がimecとの共著となっている。慶応義塾大学は今回、4件の超音波洗浄に関する発表を行ったが、その内2件が荏原製作所との協業によるものであった。荏原製作所は静岡大学とも長年にわたって協業していることでも知られている。
日本からの15件の発表テーマおよび研究協業機関は表1のとおり。なお、発表者の講演タイトルはもともとは英語であるため、著者が独自に意訳したものを掲載している。
それを見てもらえればわかるが、ソニーが非Si(III-V族化合物)基板材料のエッチングや洗浄に力を入れているのが目を引く。InGaAsは、一般にはMOSデバイスの次世代高キャリア移動度チャネル材料であると考えられているのと同時に、ソニーではSWIR(Short Wavelength Infra-Red:短波長赤外線)イメージセンサのフォトダイオード材料として使用されている。
またSCREENは、シリコン基板上に塗布したポリフィルムを剥離することによりBEOL(多層配線工程)のlow-k(高比誘電率)層間絶縁膜のドライエッチング後の残渣を除去する手法をimecともに発表したほか、3次元積層ゲートオールアラウンド(GAA)トランジスタ構造を形成するためには多段SiGe/Si層のSiGe選択エッチングが必要であるが、三菱化学は独自のエッチング液をimecに提供する形でその評価結果を共同で発表している。