Ubisoftのアウトドアスポーツ・ゲーム「Riders Republic(ライダーズリパブリック)」で、今後数カ月のうちに山火事が発生する。「Phoenix」と呼ばれるこのライブイベントは、制御できなくなった火の怖さをプレイヤーが実感するようにデザインされている。だから、2022年中に実施される予定だが、開催日時の事前発表はない。実際の山火事が突然発生するように、「Phoenix」も突然始まる。

ログインすると、普段プレイしている自然コースに山火事が発生、火災現場から離れた場所であっても煙の影響で大気に靄がかかり、空がオレンジ色に染まる。防塵マスクがデフォルトの装備になり、山火事が起こっている場所とその周辺は呼吸できない立ち入り禁止エリアになる。

そしてゲーム全体が「警戒」モードにかわり、短期間のライブイベントが始まる。プレイヤーはセコイア国立公園で、フォトモードを使って過去の山火事の規模を調べ、将来の山火事予測、「脆弱性」レベルなどを参考に公園内で火災が広がりやすいエリアを特定。そして林道や伐採地を移動できるように整理したり、幹にアルミニウム製の耐火シートを貼って木を保護する。消失を防ぐのが目的であり、プレイヤーの協力がイベント成功のカギになる。

2020年に米西海岸全域に広がった大規模山火事は、実際にそんな感じだった。快晴のはずなのに朝から空がどんよりとしていて、警戒地域が近づいてくるにつれてオレンジ色に変わっていき、それから停電対策や避難の準備、防火に奔走させられた。ゲームの中でも空がオレンジ色に染まっているのを見たら、あの時のいやな臭いや息苦しさを思い出しそうだ。

今年カリフォルニアは史上最悪の干ばつに見舞われている。2000年頃から気温の上昇とともに貯水が減少する傾向が続いていたところに、今年は雨季(2021年12月〜2022年3月)のうち1〜2月にほとんど雨が降らなかった。深刻な水不足はこれで3年連続だ。山火事は火の不始末や落雷だけではなく、これほど乾燥した状態だと枯れ葉の摩擦でも起こりうる。米国ではそうした山火事発生の恐れがある地域が年々拡大しており、ニュース報道だけではリーチしづらい層への山火事対策の周知が必要になっている。

「Phoenix」は、ゲームを通じた環境保護の取り組みのためにゲームメーカーと国連環境計画 (UNEP) が2019年に結成した「Playing for the Planet」アライアンスのプロジェクトの1つだ。毎年異なるテーマを競うコンペティション「Green Game Jam」(2022年のテーマは「食料、森林、私達の未来」)で、「Phoenix」はメディアが選出する"Media's Choice"賞を獲得した。

今年の「Green Game Jam」の参加ゲームを見ると、たとえばバンダイナムコエンターテインメントは「PAC-MAN」に森林をテーマにしたアドベンチャーモードのステージを用意、SIEの「Horizon Forbidden West」やWoogaの「June's Journey」はゲーム内のアクティビティを現実の植林に結びつけている。横暴な企業や失政による環境破壊から文明社会を守って健全なコロニーを構築を目指す「Imagine Earth」(Serious Bros.)のような例外はあるが、基本的に「Green Game Jam」は政策や人々の暮らし方の問題の指摘を避け、環境や気候変動の問題にフォーカスする教育的なプログラムである。UENP賞を獲ったSupercellの「Hay Day」も、農薬や合成肥料の使用を避けた再生農業についてプレイヤーに教えることに重点を置いている。

オンラインゲームやクラウドゲーミングを将来の成長分野とするゲーム産業では近年、企業の大小を問わず、環境問題への取り組みが活発だ。EAやActivision Blizzardは気候変動をビジネス上の大きなリスクとして挙げており、UbisoftはCO2排出量を大幅に削減する方法をまだ完全には特定できていないものの、定期的に排出量を報告している。脱炭素を目指すのは当たり前。仮想と現実が融合する時代を迎え、環境対策を前進させるコンテンツ作りが欠かせないものになっている。