世界気象機関(WMO)のOSCAR(Observing Systems Capability Analysis)と呼ばれる地球観測を目的とした人工衛星の統計情報によると、2020年時点で機能している地球観測用の人工衛星は100種類以上あり、その打ち上げ数は年々増加している。

近年、人工衛星の開発・打ち上げ・運用は、政府や研究機関が主導するだけではなく、民間企業が参入しつつある。この流れも地球観測を目的とした人工衛星増加の一因である。今や人工衛星に関連する開発や技術は、政府、研究機関のものだけでなく、誰の手にも届くような技術になってきており、こういった技術やデータを活用したビジネスが多くの注目を集めている。

私はOrbital Insightにおいて、人工衛星画像の解析やサービス開発に従事し、ビジネスでの活用を支援している。この経験から、主要な人工衛星データの種類と特徴、ビジネス活用事例、関連する地理空間データの紹介、そして、人工衛星データとその他のデータの掛け合わせで生まれる活用事例などを紹介する。

人工衛星画像データから何がわかるのか?

人工衛星画像データは、大きく分けると光学センサとマイクロ波センサで観測した画像の2つに分類できる。光学センサは太陽光の反射を観測するセンサで、われわれの目で認知できる可視光や熱などを観測する遠赤外センサが含まれる。

一方、マイクロ波センサはマイクロ波を自ら発し、その反射を捉えるセンサで、後述する合成開口レーダー(SAR)衛星などが代表例だ。ここではまず、光学センサの中でも人間の目で確認できる可視光の光学人工衛星画像の種類、その分析手法と活用事例について紹介する。

可視光の光学衛星画像について

可視光の光学衛星画像は、われわれが普段イメージする衛星写真と同じで、白黒またはカラー写真で地球の地表を撮影した画像データである。

光学衛星画像を活用する上で、重要な特徴が大きく2つある。どれだけ細かく地表を観測できるか(解像度)の「画像分解能」と、どれだけ頻繁に同じ場所を観測できるかの「時間分解能」だ。

経験上、衛星画像をビジネス利用するうえで、この2つの特徴とバランスは重要なポイントだ。多くの場合、それぞれ相反する関係にあるので、それぞれの特徴と解決したい課題をよく理解した上で、何ができるかできないかを判断する必要がある。

まず、画像分解能で高解像度といわれている衛星画像は、主にサブメーター級と言われ、画像中の1色を表す1ピクセルが1メートルから0.5メートルほどの分解能を指すことが多い。

1ピクセルが1メートル以下の解像度であれば、地表にある乗用車の半分の大きさのものが十分に可視判断できる細かさで、0.5メートル前後の解像度であれば、人間の群衆の影なども見える細かさである。

  • 衛星データの解析が生み出す新しいビジネスチャンス 第1回

    Orbital Insightが提供するプラットフォーム「Orbital Insight GO」では、衛星画像から車やトラックの交通量を数値化が可能(出典:Orbital Insight、衛星画像提供:Airbus)

高解像度といわれる代表な人工衛星画像は、AirbusのPleiadesシリーズやハイパースペクトルカメラを搭載したSatellogicなどがある。高解像度画像は、地上の車の車種や船舶の種類を特定できるほど、精密な画像を取得できる。

高解像度人工衛星は機体自体も大きく、高解像度であるため、写真一枚で補足できる広さも大きくない。加えて、衛星自体打ち上がっている数が少ない。それに伴い「時間分解能」が以降に紹介する中解像度の衛星に比べて低く、同じ場所の衛星画像データがそれほど頻繁に取得できない。現在アーカイブされている高解像度の人工衛星画像は、平均して都市部なら1週間に1~2回、郊外では1カ月に1~3回、撮影できている頻度である。

一方、厳密な定義はないが、弊社では中解像度と分類している光学衛星画像の画像分解能は1ピクセルあたり3メートル以上を指すケースが多い。代表例は、Planet LabのDoveシリーズや、AirbusのSPOTがある。高解像度の衛星画像で可能な車両の判断までは難しいが、中解像度の衛星画像は、森林や河川の有無、人工建造物の大きな変化が把握できる解像度である。

  • 衛星データの解析が生み出す新しいビジネスチャンス 第1回

    中解像度衛星画像を利用した土地利用アルゴリズムによる解析結果の一例。森林と人工建造物が混在する地域における「道路」をAIで検知(出典:Orbital Insight、衛星画像提供:Planet Lab)

中解像度の衛星画像の最大のメリットは「時間分解能」が高いことである。Planet LabのDoveシリーズはワイングラスほどの大きさの人工衛星で多くの台数が打ち上がっており、理論上、ほぼ毎日地表の同じ場所を観測できる。

より解像度の低い衛星画像を撮像する人工衛星もある。低解像度の衛星は政府や研究機関が運用していることが多く、例えばアメリカ地質調査所(USGS)とアメリカ航空宇宙局(NASA)が運用するLandsatシリーズは、ピクセルあたりの解像度が30mほどで、相当大きな人工建造物を特定できる解像度だ。

関東平野をすっぽりと一枚で覆うことができるほどの広範囲を捕捉でき、時間分解能も高い。1970年代に最初に打ち上げられたLandsatは、地表の植生、地質、森林の観測を目的としており、現在もその特徴を引き継いでいる。

後編となる次回は、AI・コンピュータビジョンを用いた光学衛星画像の分析手法や光学衛星画像を分析したビジネス活用事例、可視光衛星画像以外のそのほかの衛星画像データについて紹介する。