Omdiaのディスプレイ部材担当調査マネージャーの宇野匡氏は、大型ディスプレイ製造用部材の代表的半導体であるドライバICについて、「エンドマーケットではディスプレイ需要が減退しているが、大型ディスプレイ向けドライバICは長期間にわたり不足しているため、発注が落ちる傾向はみられない。ドライバICは、発注から配達まで最短で9か月必要となっている。ドライバICは他の部材と比較して在庫積み増しのため保管場所を必要としない。一時的に不足が解消することがあっても2022年の第3四半期以降で、またひっ迫する予測となっており、パネルメーカーは在庫を積み上げる傾向となっている」と述べた。

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    大型パネル向けドライバIC(主に200mmウェハで製造)の需給状況の過去の四半期ごとの推移と2022年の予測。供給不足(桃色)、需給ひっ迫(黄色)、需給均衡(空色)で色分け (出所:Omdia、以下すべて)

大型ディスプレイ用ドライバICの動向

大型ディスプレイ用ドライバICサプライヤ(ファブレス)各社の2021年市場シェアを見ると、台湾ファブレスのNovatekが25%でトップ、同じく台湾ファブレスHimaxが18%で2位、残りは10%未満である。大型ディスプレイ用ドライバICは主にファウンドリの200mmウェハラインで製造されている。この分野では、台Vanguardが最大ファウンドリで生産能力は月産8万~9万枚であるが、今後200mmウェハプロセスに投資する企業はなく、ドライバICを増産しようというファウンドリはほとんどいない状況となっている。ただし中Nexchipは、新たに建設した300mmウェハ対応のN2ファブでドライバICの増産を2021年第4四半期から始めており、今後、生産能力を伸ばすことが期待される。

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    大型ディスプレイ用ドライバICサプライヤの2021年第3四半期マーケットシェア

スマホ用ドライバICの動向

スマートフォン(スマホ)用ドライバICに関しては、液晶パネル向けドライバIC市場の3割をNovatekが抑えているのに対して、有機EL(AMOLED)パネルのドライバICの6割以上をSamsung Electronicsが握っている。

製造に関しては、スマホ用ドライバICのトップメーカーである台UMCはSamsungからの受託製造で28nmプロセスによるAMOLEDドライバICに焦点を合わせているのに対し、Nexchipは90nmプロセス液晶ドライバに焦点を合わせている。

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    スマホ向け液晶ドライバICサプライヤの2021年第3四半期マーケットシェア

UMCは、28nmプロセスの拡張計画により、AMOLEDドライバにおける最大ファウンドリを維持する見込みだが、多くの液晶ドライバが台湾からNexchipやSMICなどの中国のファウンドリメーカーに移行されつつある。

液晶ドライバの供給は需要が弱いためにバランスが取れて緩んでいるが、AMOLEDドライバの供給は、高電圧(HV)40nmおよび28nmプロセスを提供できるファウンドリが限られているため、より困難になると見られている。そのためトップブランドのファブレスメーカーによる受託製造が2022年の生産能力の大部分を占めることになり、AMOLEDドライバに参入しようとしている中国のパネルメーカーへの割り当てはわずかな量となる見通しだという。

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    スマホ向けAMOLEDドライバICの2021年第3四半期マーケットシェア

中国ドライバICサプライヤの課題は製造委託先の確保

すでに多くの中国のファブレスメーカーがドライバICの設計・販売で競合している。これらのファブレスにとって最大の課題は、製造委託先のファウンドリでの生産能力確保にある。

中国のファウンドリとしてはNexchipとSMICが大手であり、Nexchipは300mmウェハの投資を積極的に継続して行っており、この生産能力の拡大がなければ、2021年のドライバIC不足はより深刻な状況になるところであったとみられるという。

そうしたNexchipの生産能力拡大を受け、ESWINとChiponeがドライバICの出荷を増加させており、こうした中国ファウンドリメーカーの生産能力増強にあわせて、今後、中国の多くのドライバICメーカーがシェアを高めていくことが予測され、トップメーカーであるNovatekやHimaxは将来的にはそうした中国メーカーとの激しい競争に直面することになるとOmdiaは見ている。

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    中国の代表的ディスプレイドライバICサプライヤとドライバICの用途。多くの中国企業が高付加価値のAMOLEDドライバに参入しようとしている