既報のように、インターステラテクノロジズ(IST)は6月30日5時30分、観測ロケット「MOMO2号機」の打ち上げを実施したものの、離床後すぐにエンジンの燃焼が止まり、落下。地面に激突した機体は炎上し、打ち上げは失敗した。ISTは同日10時より記者会見を開催し、現在分かっていることを説明した。
この日、心配されていた天候は朝までに回復。打ち上げ時はほぼ無風で、降雨の心配も無いという、良好なコンディションだった。機体の準備作業も順調に進んでおり、5時の打ち上げを目指していたが、海上監視区域内に船舶の進入が確認されたため、30分延期し、5時30分に打ち上げが実施された。
打ち上げ後に何が起きたのか?
点火後、無事に離床したように見えたMOMO2号機だったが、数秒後にエンジンの燃焼が停止、そのまま射点に自由落下した。炎上したのは警戒区域内であり、人的被害はなかったものの、機体には高圧ガスなども搭載されているので、安全のため、射点に近い指令所のスタッフを待避させる措置が執られたという。
記者会見の時点では、まだ射点に近づくことができておらず、詳細な状況については不明だったものの、落下するまでロケットからのテレメトリは受信できていたという。このデータから、打ち上げの4秒後に推力を失い、落下したことが分かっている。
MOMO2号機は、打ち上げのカウントゼロ(T-0秒)で燃料のバルブをオープン。通常であれば、T+0.5秒あたりでメインエンジンの推力が急速に立ち上がり、燃焼圧が1MPaに到達し、その定常状態を維持するはずだった。
しかし今回の打ち上げでは、一旦1MPaまで上昇したあと、急に0.7MPaまで低下。それから1秒ほどかけて1MPaまで戻り、T+4秒にゼロに落ちるという、不思議な現象が起きていた。同社の稲川貴大・代表取締役社長によれば、これは「過去の燃焼実験では起きていなかった現象」だったという。
メインエンジンで一体何が起きたのか。現時点でその原因について特定することは難しいが、今回はハイスピードカメラでの撮影も行っていたそうで、同社はそうした各種データや、回収した機体を調べるなどして、原因の究明を進める考え。推力はかなり特徴的な動きをしていたので、それが大きなヒントになるかもしれない。
なお2号機では、初号機でロール回転した問題に対応するため、ロール制御の方式をホットガスジェットに変更していたが、今のところ、その改良点の影響を示すようなデータは見つかっていないとのこと。
今後の調査は、同社のエンジニアが中心となって行うが、外部の有識者から助言をもらうことも考えているという。また同社は初号機の失敗のあとも、テレメトリなどの情報を開示していたが、今回のデータについても、「開かれたロケット開発」として、積極的に公開していく考えだ。
今後のロケット開発への影響は?
稲川社長は、「ロケット開発は総合工学。1つでも不合格があればうまくいかないし、ハッキリ分かりやすい形で結果が出てしまう」と難しさを指摘。「初号機で多くの不合格が出て、膿を出し切ったと思っていたが、まだ出し切っていなかったのかな」と、コメントした。
MOMO2号機のあとは、3号機を開発して再度宇宙を目指すことになると思われるが、現時点で、時期については未定。気になるのは、2020年に開発する予定の超小型衛星用ロケット「ZERO」(コードネーム)への影響だ。2号機の原因究明にもリソースが割かれることもあり、「打ち上げ時期は1回アタマを空にして考えたい」と、見直す可能性を示唆した。
一方、同社創業者の堀江貴文・取締役は、「次の3号機のためにどう改善するかが課題になってくる」と指摘。「そこに全力投球できるよう、バックアップ態勢を強化しようと思う」と述べた。
また、この記者会見には、2号機にスポンサーとして参加したレオス・キャピタルワークスの藤野英人・代表取締役社長も出席した。今回の失敗については、「残念ではあるが、何らかのデータを残して、次に繋がる材料ができた。一定の役割を果たせたのではないかと考えている」とコメント。
さらに、「次の3号機のスポンサーになるかどうかは未定だが、宇宙開発をここで止めるわけにはいかないので、今後も、さまざまな形でISTを応援していく。特に我々の知見のあるファイナンス分野などで、堀江氏と協力しながら支えたい」と、これからも支援していく意向を示した。