これまでお伝えしたように、インターステラテクノロジズ(IST)が開発した観測ロケット「MOMO2号機」は、打ち上げ直後にエンジンが停止し、落下後に炎上。残念ながら、日本の民間ロケットとして初の宇宙空間到達は次の機会に持ち越しになってしまった。MOMO2レポートの最後となる本稿では、今後の見通しなどについて、改めてまとめてみたい。
失敗の原因は何だったのか
あの衝撃的な打ち上げ失敗から2週間が経過。気になるのは、原因究明の進捗状況であるが、まだ検証作業は続いており、同社の稲川貴大代表取締役社長によれば、現在、メインエンジンやホットガスサイドジェットスラスタを中心に調査しているとのこと。
MOMO初号機は、高度10kmあたりで問題が発生したため、機体は海上に落下し、回収することができなかった。原因は搭載カメラの映像やテレメトリデータから推測するしかなく、結局、1つに特定できないまま、可能性がある各所に対して対策が施された。
しかし2号機は、打ち上げ直後のトラブルだったため、機体はほぼ残っている。ハイスピードカメラを含め、さまざまな角度から撮影された映像も取得されている。これは原因の究明には、非常に有利な条件と言え、初号機よりは早く、原因を特定することができるのではないだろうか。
稲川社長によると、1カ月程度で結論を出した上で、再現試験に取り組む予定だという。そこで現象が再現され、原因を特定できれば、より確実な対策が可能となる。同社としては、なるべく早く3号機を打ち上げ、成功させたいところだろうが、その時期が見えてくるのは、改良を進め、対策のめどが立ってからになるだろう。
2号機の最初の打ち上げ予定日は、初号機の打ち上げの9カ月後だった。3号機がどうなるかは、対策の内容次第になるだろうが、2号機の例を参考にすると、来春あたりが1つの目安になるかもしれない。
3号機の開発を急ぎたい事情
2回連続の失敗とはなったものの、現場のエンジニアの士気は高く、すでに前を向いて行動を開始しているという。技術者として最も面白いフェーズだろうから、筆者もモチベーションについては何の心配もしていないが、ただ、辛い立場なのは資金調達を担当する同社創業者の堀江貴文取締役だろう。
MOMOの打ち上げでは、1号機のDMM.com、2号機のレオス・キャピタルワークスのようにスポンサーが付いているほか、クラウドファンディングによる資金調達も行われているが、ロケットの開発には巨額の費用が必要だ。
堀江氏は打ち上げ後の記者会見で、「ベンチャー企業が立ち上がり、事業を軌道に乗せるまでにはデスバレー(死の谷)がある。ソフトウェアの場合のデスバレーはそれほど深くないが、ロケット開発では明確なデスバレーがあって、幾多の先人が散っていった」と述べている。この深い谷を越えられるかは、資金調達の勝負でもある。
特に、小型ロケットの競争は激化しており、事業環境は厳しくなりつつある。小型衛星の打ち上げで競合となる米Rocket Labは、すでに「Electron」で軌道投入に成功。日本でも、キヤノン電子らのスペースワンが2021年度に、九州工業大学の有翼機技術がベースのスペースウォーカーが2022年に、事業の開始を計画している。
ISTは社名が表すように(インターステラ=恒星間)、彼らにとって小型ロケットは最終目標ではないものの、次に繋げていくためには、成長が期待される小型衛星打ち上げビジネスでシェアを確保し、利益を上げることが欠かせない。そのためには、なるべく早くサービスインする必要があり、3号機はなんとしても成功させたいところだろう。
「三度目の正直」となるか、それとも「二度あることは三度ある」となるか。3号機が成功するかどうかはまだ何とも言えないが、少なくとも、挑戦しないことには成功を得ることはできない。ISTの3回目の挑戦がどうなるか、今後も注目していきたい。
現地は今回も盛り上がった!
今回は直前のアナウンスとなったため、現地の見学者はかなり少ないかと思ったのだが、筆者が取材していた有料会場「SKY HILLS」には、思ったより多くの人が訪れていた。最後に、打ち上げが行われた北海道・大樹町の雰囲気について、フォトレポートの形でお伝えしておこう。次回の現地見学の参考にしてもらえれば幸いだ。