主としてソ連~ロシアにおいて、地対空ミサイルを艦対空ミサイルに転用した事例がいくつかある。逆に、米陸軍のMRC(Mid-Range Capability)では、SM-6艦対空ミサイルやトマホーク巡航ミサイルといった艦載ミサイルを陸上に転用する。このように、ミサイルの分野では陸海の行き来があるが、電測兵装の分野では事例が少ない。→連載「軍事とIT」のこれまでの回はこちらを参照

艦載レーダーに独特の難しさ

実のところ、陸上設置のレーダーをそのまま艦載化するのは難しい。地震は別として、地べたは安定したプラットフォームだが、フネは揺れる。また、動揺だけでなく振動も発生する。そうした運用環境に合わせた設計のレーダーでなければ使えない。

フネが揺れれば当然、そこに搭載しているレーダーのアンテナも揺れる。測距に関する影響は少なそうだが、アンテナが常に水平を保っているわけではなく、左右あるいは上下方向に傾くわけだから、方位については影響が出るし、対空三次元レーダーなら測高にも影響が及ぶ。

よって、艦載レーダーでは動揺による影響を補正する仕組みが不可欠となる。昔ならアンテナを機械的に安定させる工夫をしたものだが、今ならシグナル処理に工夫をして、動揺に起因する補正データを加味して出力する方が実現しやすく、かつ信頼性が高いものができそうだ。

こんな事情があるため、艦載レーダーは専用のものを開発・製造することがほとんどとなる。ところが、条件が緩い側から厳しい側に転用するのは難しくても、逆なら話は違ってくる。レアケースではあるが、艦載レーダーの性能が買われて、それを陸上に転用した事例がいくつかある。

AN/SPS-48の陸上転用

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